モルガナイト
「ナマエ・・・」
ナマエは何事もなかったようにその胡散臭い笑顔を向けた。そして輪から外れた位置にいたナマエはいつの間にか甲板へ降りてきていたゾロへと歩み寄る。ナミはその後ろ姿を見て、なんだか悲しくなった。
「ゾロさん、そう言えば返し損ねていたので、」
そう言ってナマエの手の中に収まっていた巻物をゾロの近くへ持っていく。するとフワリとまた相手の身体の中に溶け込んだ。ゾロはその奇妙な感覚に肌がぞわりと立った。
「どうにも気持ち悪ぃな、この感覚」
「慣れる奴なんてそうそういませんよ」
ゾロの発言に苦笑いで答える。ゾロはナマエへの警戒心が些か弱まりつつある。というのも強さは中々のものだが、この通常時のゆるりとした独特な雰囲気に毒気が抜かれそうになるのだ。それでもこの隙のない感じ。初めて会うタイプかもしれない。それ故に場を弁えているのも確かなのだ。下手に騒がないし、鼻にかけた感じもしないし、今のところ何も問題ないだろうと。
何かあったとしてもここにいる奴らは戦うすべを知っている。
「おめーは、なんで海賊船なんかに乗るんだ?他にも漁師の船とか、色々あんだろ」
「!!・・・特に意味はありません。敵襲が来た場合に漁船だと守ってあげないといけないのが面倒なだけです」
ゾロが意外にも話しかけてきたのに驚いた。質問が質問なだけに返しづらい。ナマエは理由はそれだけじゃないが、適当に誤魔化しておく。それに漁船だった場合――
「それと、私は言うても'賞金首'なので!」
ニヤリと笑ってみせると、ゾロはキョトンとした顔になるもすぐにナマエと同じく悪い笑みで笑ってみせた。
「それもそうだッ」
ブルックが奏でる陽気な音楽と共に、話していると意外にもゾロとウマが合うのに気づいた。話しやすいのだ。警戒を少しは緩めてくれたが、他の面子と比べると距離がある感じ。
私を受け入れないという絶対的安心感。
これがどうにもナマエにとっては心地よかった。
「じゃあ、技を盗めばその技も使えるんだな?」
「そうなんです。自分の力量が相手よりも下回ってしまえば。オリジナルより遥かに威力は落ちますけどね。」
「へぇ〜・・・」
「なんかゾロとナマエ、仲良いな」
「うん。おれも仲良くしてぇなー」
「ばっ!チョッパー!あいつは'盗人'なんだぞ!何されるか分からねぇじゃねぇか!」
「おれ、ナマエはそんなことするようなヤツじゃねぇと思う・・・」
「うっ・・・それは、そうかもしれねぇけどよ」
ゾロとナマエが話しているうちに船は魚が誘導してくれている方角へと向かっていた。ケイミーはどうやらお魚とお話ができるらしい。
「え?」
「どうしたケイミー」
「魚達が悪いけどここまでだって・・・」
「うわ来た!!'トビウオライダーズ'!!」
「どこに!?何も見えねぇぞ!!?」
「違うよ!!海じゃなくて!!空!!!」
どうやら敵襲のようだ。言葉通りに空に目をやるとその名の通り、トビウオのような乗り物に乗り、船へと迫り来る。すると船が爆発により大きく揺れた。さすがに有名な一味とあって、敵襲が多い。
「気をつけて!あのトビウオは海から飛び出て5分は飛行できるの!!」
周りも既に戦闘態勢に入っていた。何機やれるかな。そう思ったのもつかの間、なにやら急に撤退しだしたではないか。どうしたのやら。上からの撤退命令だろうか。まぁ無駄に体力を消費しなくて済むので、問題は無いが、少し残念だ。
「トビウオ・・・どっかいった」
「乗ってみてェなあのトビウオ!5分も飛ぶのか!!」
「・・・ルフィさん、私あれ盗めますよ」
「ほんとか!?」
そう言うとルフィは目をキラキラさせて、ナマエの肩をガシッと掴んだ。勢いありすぎて痛い。まぁそれよりナマエも先程盗もうとしてたのだ。理由はルフィと同じく――
「私も乗ろうとしてたので」
「さっすがナマエだな〜!!よし!あれ一緒に乗ろう!!」
子供のようにはしゃぐルフィはそのままナマエに抱きついた。近いんですけどおおお、ゼロ距離なんですけどおおお!ナマエは慣れないその感覚に身体を強ばらせた。
ルフィは全然離してくれる様子もなく、心臓がドクドクと早く脈打つ。
「ん?ナマエ、なんか暖かいな〜」
「!!!?」
そういってグリグリと頭を首に押し付けてくるルフィに、ナマエの体温は急上昇した。それに猛烈に恥ずかしさを覚えたナマエは思わず覇気を纏い、思いっきり足を踏んづけた。
「いっ!!!ってええええ!何すんだ!ナマエ!!」
「るッルフィさんが悪いです!!」
「おれなんも悪くねぇよ!・・・ってかなんで打撃が効いたんだ??」
きょとんと首を傾げるルフィにナマエは何も答えずに胡散臭い笑みを向けた。
未だにブーブーと文句が聞こえるが無視だ無視。ふぅと息をつき、心臓を落ち着かせる。相手のパーソナルスペースが狭すぎて、動揺してしまう。全く、自分が言うのもあれだが、もっと警戒心とかはないのだろうか。
と思っている内にどうやらアジトへと到着したようだ。
「着いたぞ!!アレだな'トビウオライダーズ'のアジト!!!」
「ナマエ!!絶対乗るからな!」
いつの間にか気持ちが切り替わっている船長に改めて自由な人だと思うも、ナマエも少しばかり気持ちが昂っている。
「仰せのままに船長」
そしてニヤリと笑みを浮かべた。