パイライト



心臓を取り返したマクロ一味は波に呑まれないように柱に掴まり、身動きできないでいるケイミーとパッパグに狙いを定めた。だがそれよりも早く、ルフィは船から飛び出ると2人を救出する。その姿にナマエは目を見開いた。あの人は何をしているんだ?

「よし!!取り返したぞ!!」

「ルフィちん!!」

「お前〜〜っ!!」

「ニ゛ュ〜〜!!麦わらァ〜〜〜!!ありがとう!!!お前って奴はァ〜!!恩にきるぞォ〜〜!!!」

「ゾロ!!タコッパチの檻とロープ斬れ!!!」

「おう!!!」

ナマエは急な出来事に目を丸くしていた。何なんだ、助けるつもりじゃなかったんだろ?助けられない理由があったんだろう?それを責めはしないし、当たり前だと思う。なのに、どうして。

「ナマエ!!おれと約束したろっ!」

「・・・・・・」

「一緒に!あのトビウオに乗るって!!」

「!!?」

ナマエは驚いた。そんな口約束なんて、何の意味もないのに。それでもナマエは心がジワりと暖かく広がるような感覚を覚えた。この人は本当に馬鹿だなぁと。

「ナマエー!!あんた1回殴らせなさいっ!!」

その理不尽な申し付けに思わず笑ってしまった。ナミの顔は晴れやかで、とても素敵だった。ナマエはその眩しさに目を細めて、溜め息をついた。なんでこんなに、馬鹿な人が多いんだろう。そう思うも不思議と嫌じゃなかった。1回くらい殴られてもいいかな、なんて。

「野郎共!!!戦闘だァ〜〜〜!!!」

その声から数秒、海からトビウオ達が飛び出てきた。その勢いは素早いが、どうってことない。

「ナマエ〜!!!」

「ルフィさんっ!大丈夫です!」

ルフィの意図することが分かったので、ナマエは近くを通ったトビウオに飛び乗った。そしてそのトビウオに触れて、呟く。

「Steal…&Influence」

触れた手とは逆の手を同じようなトビウオに翳すと、翳した先にいたトビウオと触れていたトビウオに乗っていた人達はその瞬間、追い出されるような感覚に陥り、いつの間にか海に落ちていた。

ナマエはそのままトビウオに乗り込むと、残りのトビウオを引き連れてルフィに近づいた。

「どうぞ?」

「すっげ〜〜!!!ナマエあんがとなっ!」

ルフィは嬉々とトビウオに飛び乗った。その顔にナマエもほっこりと嬉しさが広がった。何機か残っていたので、サニー号にも近づいた。

「どなたか・・・乗りますか?」

少し気まずそうに視線を逸らすと、そんなの気にしてないとでも言うようにチョッパーやブルックが手を挙げた。
2人はトビウオに乗り込み、ナマエはそのまま船に降り立った。するとナミがつかつかと歩み寄ってきてガツンと頭に拳を受けた。中々の威力だ。

「・・・痛いですナミさん」

「当たり前でしょ!痛くしてんのよっ」

なんだか少し泣きそうなナミにナマエは言葉が詰まった。そんな様子にロビンはくすくすと笑みをこぼした。

「皆、心配していたのよ?」

「え?」

「あなたは昔の私や、ナミに、似ているんだわきっと」

そう、ずっと1人で戦ってきたであろうその姿に昔の自分を思い出した。あの時、あのエニエスロビーで助けてもらわなければ、私はどうなっていただろうか。ロビンはそんな不幸な結末にならなくて、あの時この一味を信じて、頼って良かったと心底感じていた。
ナマエを見ているとそんな自分を見ているようで、とても悲しくなるのだ。


「ロビンさん・・・」

「ふふっ、今度ゆっくり話しましょう?」

まだ無理かもしれない。この子の受けた傷は相当なものなのだろう。ロビンはそう言ってナマエの頭を撫で付けた。






そこからの展開は実に早いものだった。麦わら一味の圧倒的な実力にトビウオ達は次々と倒されていく。まぁ途中、ルフィ達が乗ったトビウオが海底に潜ってしまい、ナミとフランキーが慌てて救出したりもしていたが。
するとアジトの方から破壊音が響き渡った。どうやらルフィが一足先に行っていたようだ。そこから出てきたのは牛のような大きな生物に、それに似合うように乗っているこれまた身体の大きな人だった。

船にいるから何を言っているか分からないが、ただならぬ様子でこちらを見ていた。どうしたのだろうか。

「海賊'黒足のサンジ'!!!」

その言葉だけハッキリと聞こえた。周りは一気にざわめいた。

「おれ・・・!?おれを殺してェって!?あの野郎・・・!!」

口々にサンジを問いただすも中々思い出せない様子。それに痺れを切らした人物はサニー号に向けて銛を放ってきた。慌てて避けるもそれには毒々しいものが纏っていた。
ごく最近の話らしいが、こんなところで船がめちゃくちゃになったりしたら大変だ。

次々と放たれる銛にナマエもちょっとイラッときた。あまり戦闘慣れしていなさそうなその武器の使い方に眉を寄せる。素人がそんな武器を使うんじゃない。ナマエは毒が仕込まれていない銛の柄に触れると、先程と同じように呟いた。

「Steal & Influence」

放たれた銛はナマエが翳したことにより失速し、向きを変え、相手へと狙いを定めた。近くにいたサンジはそれにギョッとする。

「ナマエ!おま、その技は・・・」

「Stealは武器などを盗むことのできる技です。まぁ所有権を奪うと言った方がいいですかね・・・あんな素人、すぐに片付けますよ」

ナマエが反撃しようとしたら、ルフィが飛び出てきて、その人物の鉄仮面を吹っ飛ばした。その仮面の下には――

サンジの'手配書'にそっくりな顔が存在していた。









steal⇒武器やお金などの物を盗む
influence⇒影響を与える