サンジの手配書に似たその人物は'デュバル'というらしい。小さな島でしがないマフィアをやっていた時のこと。世間にその手配書が配られ、突如日常が一変したのだ。逃げ惑う人生。こうなったのは全て、本物の'サンジ'がいたからこそ。海軍もまさかこんな落書きみたいな人物のような人が実在するとは思うまい。ブルックが爆笑してる中、ルフィでさえも投げやりだ。
ナマエもぽかんとしていたが、次第に笑いが込み上げてきた。そんな馬鹿なことあるのか?と。
「くっ・・・くくっ・・・」
「ナマエ??」
「ぶっ!!っははははは!ひーっ!!あっははは!!」
腹が捩れるのかと思うくらいにツボに入ってしまった。一味はそんなナマエの姿に呆気にとられた。今まで胡散臭い笑顔や、何かを考えるような、作り笑いしかみたことなかったからか。こんなに声を上げて笑う姿が想像もつかなかったのだ。サンジも一瞬呆けるも、次第に血管の切れる音が聞こえた。
「こらぁ!クソ盗っ人野郎!!笑いすぎだ!ぶっ殺すぞッ!!!!」
「ふっ、ふふ・・・だ、だって・・・!!」
いつの間にかデュバルの近くへ行っていたサンジだが、ナマエの笑い声にちっと舌打ちをかますも、デュバルに向き合い脅しのような説得をする。だがそう簡単に行くはずもなく、トビウオ達がサンジを海へと引きずり込んだ。
その様子に一味に緊張が走る。今まで笑っていた雰囲気がガラッと変わるも、ナマエやルフィは能力者の為、海に入ることは出来ない。グッと口を噛み締めた。
だがその瞬間――
「大丈夫だよっ!!」
可愛らしい声と共に力強いその声に、ナマエはハッと気が付いた。
そうだ。トビウオよりも、魚人よりも、何よりも誰よりも速い、強い味方がいるじゃないか。ナマエはその姿にニヤリと笑みを浮かべた。
そしてそれと同時にパッパグは誇らしげに言い放った。
「この広い世界の海において、'人魚'の遊泳速度に敵う者はいねェ!!!」
また一悶着はあったが、無事(ケイミーに抱えられ鼻血は凄い量だったが)サンジは助かった。それを許さない者が約一名。デュバルは自身の乗っている大きな牛で攻撃を仕掛ける。
「人呼んで'心臓破りのツノ'!行けモトロバ〜〜!!!」
「ルフィ危ね〜〜!!!」
巨大な牛から放たれるそのツノを警戒していたが、モトロバのツノは大変短く、ただの体当たりだ。それをルフィは素手で止め、モトロバに睨みを効かせ、そして静かに言った。
「お前とは戦うだけムダだ」
――ゾクッ
モトロバはそんなルフィの様子に大量の汗をかき、震えていた。そしてルフィから離れたと思ったら泡を吹いて倒れてしまったのだ。
「?」
「何だ!!?」
「気を失った!?」
「何が起きたの?ルフィ何したの!?」
「・・・・・・?おれなんもしてねェぞ!?」
ナマエはその様子に目を見開いた。まさかとは思うが、この船長・・・少しだが感じ取れたその微量な'威圧感'。これは、もしかしたら――
ナマエは素早く船から飛び降りると、ルフィの元へと駆けつける。
「ちょ!ナマエ!!どうしたの!」
「なんかあいつ慌ててたぞ・・・」
「ルフィさん!」
「ん?どした、ナマエ?」
ナマエはルフィの元へと来ると、驚いたような、何かを思案してるような感じで、なんだか様子がおかしかった。目はゆらゆらと揺れていて、初めてのその表情にルフィは一瞬言葉に詰まった。そしてナマエはルフィの頬に手を当て、じっと瞳を見つめた。
「なっなんだよナマエ・・・」
「ルフィさん、今までも、こういうこと・・・ありましたか?」
「ん?い、や・・・ねぇと思うけど・・・」
「・・・そ、うですか」
ナマエは考えすぎか?と思い、ルフィから手を離すもその手をルフィに掴まれた。え?と思ったのもつかの間、ぐっとルフィの後ろへと移動させられる。
「おぬれェ麦わらの一味〜〜〜!!!」
後ろから覗き見ると恨みの籠った目でデュバルが睨みつけていた。もしかして、守ろうとしてくれている?いやいや、今までの戦闘もそうだけど、私守られるなんて柄じゃないし!と思うも、その細身だけど逞しい背中になんだか身を預けたくなるむず痒い気持ちがナマエの中に迸る。
「おいちょっと待てルフィ・・・」
「サンジ!!無事でよかった!!」
復活したサンジはゆらゆらと背後から近づいてきた。
「サンジさん、大丈夫ですか?」
「あ?あのくらい余裕だクソ野郎」
心配してるようなナマエの表情にサンジも気付いた。少しだが、些細な表情の変化。その変化になんだか嬉しい気持ちが心臓を駆け巡った。警戒心の強い猫が、やっと少し慣れてくれたような。
それに対してサンジはふっと笑うとナマエの頭をポンポンと叩いてやる。そしてデュバルを睨みつけた。
「この言いがかりバカの一件、おれが始末つけてやる・・・・・・!!!」
サンジの重い蹴りにより、その顔面は原型を留めることもなく――
「'