「・・・っ!感じの悪いやつだ!!」
ナマエはそう言うと掌から放たれる攻撃を避ける。先程から相手の攻撃を'読み取れない'のだ。まるで意志のないロボットの様なそれに、疑問を感じる。こいつ、人間、じゃない?
ピピッ――ズゥン!!
「人間じゃないなら・・・Steal!!」
動きはあまり速くないそれに一気に間合いを詰め、相手に触れる。そして奪われたのは相手の関節部分にあたる箇所だった。ナマエの手にはそいつの物と思われる'部品'が奪われていた。やはり、こいつ――
関節の部品を抜き取ることで、そいつは地面に膝をついた。だが顔だけこちらに向けて、攻撃を尚仕掛けてくる。ぐっと脚に力を入れ高く跳躍して避ける。あのビームのようなものを食らったらヤバい。その高さのまま脚に覇気を纏う。
「ぶっ壊れちまいな!!!」
先程部品を抜き取ったところに武装色を纏った脚を勢いよく落とした。ガシャーンという音と共にそこは壊れたが、中々に硬い装備を施されているようで、勢いだけじゃ全て砕けない。だが謎めいたことに'血が流れている'。ゾクリと寒気が走った。こいつは、何なんだ!!
それならばと、嵌めていた両の手袋を放り、もう一度触れる。
「Steal&Influence」
ナマエが翳したところには次々と部品が抜けていく。だがあまりに体積の大きいそれに流石に限界がきた。ナマエが一度に奪える数はそれ程多くもない。ぐっと手に痛みが迸るも、ところどころ抜き取った部品は遠くの彼方へと放った。
だが部品を結構抜き取られたというのに、顔は変わらずナマエに向けたまま口を開けていた。しまっ――
――キュイーン、ズゥン
速さこそ、ナマエの武器である為、直撃は避けたが、油断していた攻撃にナマエは左腕にダメージを負った。焼け焦げた服はボロボロで、ナマエの白い肌から流れる血は鮮明に見えた。左腕から流れ出るそこには赤い鮮血と共に、ある'紋章'が見え隠れしていた。
「ちっ・・・死に損ないが・・・」
ナマエは再び間合いを詰める。そして再び能力で相手の内部から奪っていく。臓器があるのかも分からない得体の知れないそれに、奪えるものには制限がかかる。だから確実に身体のバランスを崩せる関節をメインに。一瞬の隙も許さず、高い集中力でナマエは確実に相手の自由を奪っていった。
大きな音と共に崩れたそれに、トドメを刺すように武装色を纏った。
ピピッ――ガシャン
事切れたそれにナマエも一旦尻餅をつく。戦闘続きの末にあの攻撃を受け、更に武装色と能力を随時使っていたのだ。疲労がナマエを襲った。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・あー、・・・力ないなぁ・・・」
ナマエは元々そこまで腕力がある方ではない。それをカバーする為に'覇気'と'速さ'を追求していた。それに加えて、自分の能力が役に立たないロボットらしき相手だったのだ。意志がない奴ほど戦いづらいものもない。人と戦う時は必ずそいつの'臓器'があり、'神経'もあり、'感情'もある。だがこいつは、ロボットでもなく、かといって人間でもない。
ナマエは痛む左腕に目もくれず、脚に力を入れて立ち上がった。急がなければ。
太陽のような一味の笑顔がナマエの脳裏を掠めた。
お願いだから――
「無事でいてッ!」
麦わらの一味達もナマエと同じく、くまらしきものと交戦した後だった。その姿は酷く疲弊しきっていて、いつも元気な船長でさえも荒い呼吸を繰り返していた。
余裕のない一味達は呼吸を整える。だが嫌な予感を払拭しきれないサンジは倒したものに近付いた。
「(・・・・・・!!PX・・・4・・・・!!?)」
「・・・・・・ハァ・・・ちょっと・・・休もう。いきなり・・・こんな全力の戦闘になるとは・・・思わなかった・・・!!」
「・・・休みてェが・・・まずは身を隠した方がいいな・・・・・・今また見つかったら、おれら一網打尽だぞ・・・」
本当にサンジの言う通りだ。こんなだだっ広い場所で休憩していたら、誰に狙われるか分かったものではない。だが、それでも疲れた身体は動かない。
「ゼェ・・・ゼェ・・・それもそうだ・・・でもあとほんのちょっと待ってくれ・・・・・・」
「まったくてめェらやってくれるぜ!!!」
そんな大きな声とともに現れたのは、身体と同じくらい大きな鉞を持ったおカッパ頭の人物と、やっと今倒したばかりであるはずの、バーソロミュー・くまだった。一味に一気に緊張感が張り詰めた。
「オイオイ・・・何て不様な姿だ【PX-4】・・・!!てめェら【パシフィスタ】を1人造る為に軍艦一隻分の費用を投入してんだぜ!!」
そのただならぬ様子の者に一味は再び戦闘体勢に入る。だが、こちらは先の戦闘で疲弊しきっていて、残る体力はごく僅か。イラつきからか、フランキーが声を荒らげる。
「てめェは何者だ'鉞'ィ!!!」
「わいに質問しても無駄だ。お前達に教えることは何もねェよ!!わいは世界一ガードの固い男・・・!!したがって口も固いんだ」
「・・・・・・名前くらい名乗ったらどうだ」
得体の知れない恐怖からか、ウソップが続けると、それに続くようにその男は答えた。
「言った筈だ。わいは'世界一ガードの固い男'戦桃丸だ」
「せんとう丸だな・・・」
思わず言ってしまったような微妙な空気に、戦桃丸は切り替えるように指示を出す。
「始めるぞ【PX-1】!!」
その呼び名が麦わら達を酷く恐怖させた。数字で呼ばれているそれらは、そいつに、いや、誰かに管理されているような物言いで、必ず他にもいるはずで――ルフィの決断は早かった。
「ここは逃げよう!!!一緒じゃダメだ!!バラバラに逃げるぞ!!」
そして一味は三手に別れる。ルフィの頭にチラついたのは、仲間の疲れている顔と、ナマエの気の抜けた笑顔だった。こんな奴がいるのだ、ナマエのことも心配である。だが、そうも言っていられない現状にルフィは拳を握り締め駆け出した。
「みんな!!3日後にサニー号で!!」
くまらしきものはサンジのグループへと行ってしまい、ルフィはちらりと一瞥くれる。それでも敵の猛追は目前に迫りくる。
「人の心配してる場合じゃねェっ!!!」
そう言って立ち塞がるのは戦桃丸。ルフィは覚悟を決めた。逃げるだけじゃ、簡単には通してもらえない。
「'ゴムゴム'の〜〜〜!!!'
「ほいさ!!」
ルフィの渾身の技を意図も簡単に跳ね除けた。その事実は一味をぶるりと震わせた。
「なかなかいい攻撃力だが・・・!!わいのガードは世界一!!!
'
大きな音を立て瓦礫に突っ込むルフィにロビンとチョッパーに緊張が走る。ヤバい、ルフィは今本調子じゃない上に、何故か相手に攻撃が効かない。逆にゴムのはずのルフィに相手の攻撃が'効いている'。
「痛てェ〜〜〜〜っ!!!・・・何か変だあいつの技・・・・・・!!!」
「言っとくがわいは能力者じゃないぜ!?・・・これで終いだ!麦わらのルフィ!!'
再度、攻撃を仕掛けてきた戦桃丸にルフィが身構えた瞬間、凛とした声が響いた。
「・・・・Reject!!」
素早く入り込んできたそれは相手の攻撃を跳ね返した。戦桃丸はその衝撃でルフィと同じく瓦礫に突っ込んだ。服はボロボロでありつつもその腕は黒く光っており、腕からはその人物の赤い血が滴っていた。だが瞳は猛獣のようなそれで、異様なその雰囲気にルフィは息を呑んだ。
「・・・ナマエ、」
「あんた、この人に'何'しようとしたんだ」
いつも敬語で、ゆるりとした空気感はそこにはなく、ビリビリと肌を叩きつけるような殺気に口調の崩れたそれは本当に先程まで悲しそうに顔を歪めていた人物なのだろうか。
「・・・ぐっ、おめェ、'覇気'使いか・・・」
「ナマエ、おまっなんで!」
「・・・無事で良かったです、ルフィさん」
ルフィの声に気がつくと、ナマエは心の底から安心したような笑みを浮かべた。
reject→相手の技そのものに触れ、奪った瞬間に同じ技を返すカウンター攻撃。タイミングが重要な為、見聞色の覇気がないと上手くいかない。