サードオニキス
「おい!ナマエ、って言ったか!?」
「なんじゃ・・・知り合いなのか!?」
「最近まで一緒にいたやつも、ナマエって名前なんだ!」
ルフィとハンコックはそれぞれ興奮したようにお互いを問いただす。どちらも気になるのだ。ハンコックは気にかけていた'少女'のことを、ルフィは離れ離れになってしまった'仲間'のことを。
「ん?でもちょっと待てよ・・・?ナマエは'男'だし・・・・・・おめー、'女'って言ってたよな?」
「あぁ。ナマエは'女子'じゃったぞ。」
「じゃあ・・・ちげー奴かッ」
ルフィは考えるのを放棄したかのように、あっけらかんと笑ってみせた。ハンコックはその様子に何か腑に落ちない様子だったが、もし、'ナマエ'がかの'少女'であるのであれば、生きていて良かったと思うと同時に、ルフィの行動を見たのであれば――
「もし、そなたのいう'ナマエ'が、わらわ達の知る者であるならば・・・天竜人の一件で・・・きっと、'救われた'はずじゃ。」
「??おれはあいつらが嫌いなだけだッ!」
何も恐れず、正直に自分の気持ちを告げる者にハンコックは心が暖かい気持ちになった。あぁ、確かにこの者ならば、'あの覇気'を有するのも頷ける。自分達よりも更に負の感情を根強く持っていたナマエも、心穏やかになれただろうか。
「そなた・・・もし、ナマエに会ったら伝えておいてくれぬか?わらわ達は元気にしている、と。」
「ちげーやつかもしれねぇけど・・・分かった!!」
ルフィは、その夜、自分の兄であるエースの'公開処刑'を知ることになる。
そして――インペルダウンへ行くことを決意した。
――モビーディック号船内
ナマエは自分の左腕を見つめるマルコに震えながら事の次第を話していた。
「・・・っ、私は、奴隷解放後、何とか辿り着いた島で餓死しそうになりました。・・・その時に食べたのが、この――'ロブロブの実'。悪魔の実だとは知らずに食べ、溺れていた時に助けてもらったのが・・・'タイヨウの海賊団'。」
タイヨウの海賊団――それは魚人街出身の猛者達が集う魚人だけの海賊団。そこに、子供が一人、いたというのか。マルコはナマエの壮絶なる人生に息を呑んだ。
これが、'原因'だったのか。'受け入れる'という姿勢、'相手の気持ちを察するのが上手い'ということ。それは上手いとかではなく、'諦め'に近い感情だったのだ。自分の気持ちを押し殺して押し殺して――なんと、危うい奴だろうか。
マルコは悔しげにぐっと拳を握り締めた。こんなことが罷り通る世界なのか。
「その後は、'少しだけ'タイヨウの海賊団にお世話になりまして・・・ご存知だとは思いますが、その時に白ひげさんと縁が出来たんです」
それは、何となく分かる。親父は魚人島をナワバリにしているし、感謝されているのも知っている。こいつの命の恩人の恩人――ナマエは意外と人との繋がりを誰よりも大事にしていて、誰よりも臆病なのかもしれない。
「・・・もう、いいよぃ・・・・・・無理に話させて、悪かった」
「いえ・・・・・・大丈夫ですよ・・・とりあえず、この腕、お願いしてもいいですか?」
ナマエはそう言うとへらりと苦笑いしていた。マルコは黙って頷くと治療に取り掛かる。この'タイヨウ'のマークの上のバツ印は、なんだろうか。タイヨウだけなら、晒していてもナマエにとっては感謝の印といっても過言ではない・・・だが、隠したがるのは奴隷ということと、このバツ印が原因なのか。
聞きたい気もするが、これ以上は踏め込めないだろう。
「・・・腕は終了だ。あと怪我してるところあるか診るから、服脱げ」
ボロボロな血塗れの服なんぞ、怪我に良くないし、治療にも邪魔だから、ただそう言い放っただけなのに、ナマエは少し目を見開いたかと思うと、苦笑いしていた。
「・・・えー、と・・・あの〜・・・非常に脱ぎづらいと言いますか・・・・・・」
「あ?まだ何かあるのかよぃ」
「私、'女'なんですけど・・・」
ピシリ――という音が聞こえそうなくらいマルコは固まった。待て待て待て・・・えー、こいつ、女???
マルコはガタンと立ち上がった。え、嘘だろぃ!?焦ったような顔をするマルコにナマエはクスクスと笑っていた。その顔は作った笑い方や、苦い笑い方と違って、ごく自然に出たように見えた。その表情になんだか安心感を覚えた。こういう顔の方が、いいな。
「・・・・・・おれ、'男'かと・・・」
「ふふっ。よく間違われます!麦わら達と一緒にいた時も、恐らく男性陣には男だと思われてましたしね!」
確かに言われてみれば、程よく筋肉はついているものの、その線は細いように見える。顔立ちは一般的にいそうな顔だが、艶やかな表情と立ち振る舞いが、なんだか独特で・・・女とも男とも取れる雰囲気だ。
なんだか自分の船にも似たような奴がいるな、とマルコは胸の中でひっそりと思った。決してそれは口に出しては言えないけども。
「悪ぃ・・・そんな風に思われて、嫌だよな」
「え!?いやいや、全然!平気ですよ!そんな驚いた顔が見られるなら尚更!」
そしてニヤリと笑ったナマエは、服をばっと脱いだ。それにギョッとするも、ボロボロではあるが、下には短めのタンクトップを着ていた。そして悪戯が成功したかのように笑う。
「治療お願いします」
「・・・はぁ、分かったよぃ」
補足
夢主の過去が明らかになってきました。過去編は過去編できっちり書こうと思いますが、それはまたいずれ。
そして読者様が疑問に思っているであろう、主人公の年齢について。あまり指定はしたくないので、20歳は越えているということだけ頭に置いてください。