パライバトルマリン


「青雉さん、私の手配書・・・'誰が'変えたんですか」

疑問形ではなく、'確認'してるかのような口調に青雉はナマエの心の底にある怒りを感じ取った。ナマエがONLY ALIVEになったのは最近なのだ。それはきっとナマエが'あいつ'に'居場所'を認識されてしまったのが原因だろう。

「それ、おれが答える必要もないでしょ?」

「・・・・・・それもそうですね。」

青雉の技により船まで凍らされた白ひげ海賊団は、凍らされた海をも足場にし、士気を更に上げると船から次々へと降り立つ。

「おれ達の力を見せてやれ!!!」

「隊長達も出てきたぞ!!!砲撃を休めるなァ!!!!!」

それを迎え撃つ海軍。
ナマエは鳴り止まぬ攻撃音に白ひげを見上げた。白ひげはナマエを見つめると一つ頷いた。それを合図にナマエも船から飛び降りる。
周りはもう戦争だ。鷹の目の突然の攻撃はジョズが止め、黄猿の相手はマルコがしていた。流石白ひげ海賊団といったところだろうか。海軍の主戦力を相手に戦える仲間がいるということ、そしてその力は全て'白ひげ'という旗のため。ナマエはズキッ胸が痛んだ。

「よそ見はダメでしょっ!!」

青雉はナマエに近づくと頭部を狙い素早く蹴り上げる。ナマエはギリギリのところで上体を反らし避けると、バック転する形で後ろへと下がる。少しでも触れられたら凍ってしまうそれに、ナマエは舌打ちを打つ。接近戦は得意だし、上手く能力を奪えればいいが、相手は大将だ。そう簡単に行く筈もない。
もし、捕まってしまったら・・・・・・'ALIVE'とされている手配書に身震いした。

「あなたは・・・この戦争には反対だと思いました」

「・・・おれもお仕事なんでね。やらないわけにはいかないし・・・・・・ナマエチャンが'そっち側'にいる方が疑問だよ」

「・・・私は、」

パキパキと音を立てた空気を感じ取ると、言いかけた言葉を引っ込め上へと飛び上がる。自分がいた場所は更に凍っており、油断ならない人だとナマエはぐっと拳を握り締めた。そしてその拳は黒く光る。

「はぁっ!!」

拳は青雉の顔面へと繰り出される。こちらへと落ちてくる速さと、ナマエの本来のスピードが合わさった拳は更に重い攻撃になる。食らったら結構なダメージだ。青雉とナマエの攻防戦は徐々に冷たい空気に包まれていた。

このままじゃ埒が明かないと思った時、異変に気付いたのは、ナマエだった。

息がしづらくなってきたのだ。周りは氷に囲まれており、そこからは冷気が発生する。まさか・・・身体が小刻みに震えてきた。――低体温症か。ナマエはすぐ様理解すると何とかここから抜け出そうと青雉と距離を取ろうとする。だがそう簡単には逃してはくれない。

「気付くのが少し遅かったんじゃない?」

青雉の瞳はとても冷たい瞳をしていた。ナマエはそれに奥歯を噛み締めた。こんなところで、負けるなんて、できない。

「低体温症を狙って、徐々に氷で囲んでいたなんて・・・やり方が陰湿ですね」

「勝負に卑怯も贔屓もないよ」

ナマエの膝がガクッと崩れると青雉はゆっくりと近づく。本当は'あんな男'に渡したくはない。この子は保護されるべき対象の筈なのに、そうならないのは、ナマエが受け継いだ'血のせい'なのだ。ずっと疑問に思っていた。あの'オハラ'の生き残りの時もそうだった。
これが'正義'なのか・・・?

青雉はナマエの肩に触れた。ナマエは震える手でそれに手を添えると青雉を見つめる。

「もう・・・・・・戻りたくない」

切なそうに揺れた瞳に一瞬言葉を詰まらせた。ギリッと噛んだ唇からは血の味がしたが、無情にならなければ、いけない。それが'正義'だから。一気に凍らせてしまおうと力を込めた。
パキっとした音が響いた時――

「Reject」

凛とした声が再び鼓膜を揺らした。
ナマエを侵食しようとした氷は自分を侵食していた。すぐ様氷を解くも目の前にナマエの姿はなかった。だが追いかけようとも思わなかった。

青雉は全然悔しくない気持ちに口角を上げた。昔と変わらず、中々捕まらない蝶々のような人物に。




『海軍の大将なんて凄いですね!!技とか見せてくださいよ〜!!』

『どうしよっかなー・・・でもこーんなかわい子ちゃんに言われたらやるしかないなー』

『え!!嬉しい〜!!見たいみたい〜!出来れば大技がいいなぁ〜!』

『少しだけだよ?・・・・・・氷河時代アイスエイジ

『・・・Rob』

『え・・・?』

突然使えなくなった能力に青雉はその可愛らしい'女の子'を見た。その人物は青雉にニコッと微笑みかけると、擦り寄っていた腕から離れ距離を取ると、変装を解いた。その姿は最近よく手配書で出回る顔で、センゴクからも要注意人物だと注意喚起されていた。

『大将の技、頂きましたっ』

語尾にハートがつきそうないい笑顔で言い放った人物に青雉は、放心状態からすぐに立ち直り捕まえようとするも――

氷河時代アイスエイジ

パキパキと音を立て、建物ごと凍らせてしまった能力は、正しく自分の技だった。氷から抜け出した後にはその姿を見ることはなかった。




「またやられたなー」


頭をポリポリとかきながら、立ち向かってくる海賊達を蹴散らす。技を奪われてしまった後、センゴクに報告しに行った時だ。ナマエの過去を聞いたのは。

「もう、戻りたくない・・・か。」


正義とはなんなのだろうか。