すると前方から巨人族よりも更に大きな、白ひげ傘下'リトルオーズJr.'が勇ましい雄叫びをあげていた。他の巨人族を圧倒するような大きさは敵船を軽々とひっくり返し、湾内への侵入に成功していた。
「流石、というべきかな・・・!」
ナマエは敵を蹴散らしながら更にスピードを上げて、その後へと続く。
「オイダ助げてェんだ!!!一刻も早ぐ!!エース君助げてェんだよォ!!!」
「――わかってらァ・・・!!てめェら!!尻を拭ってやれ!!!オーズを援護しろォ!!!」
リトルオーズの気持ちは白ひげ海賊団一同、同じ想いである。周りもその想いに答えるように海軍を追い詰め、白ひげ海賊団の士気が高まってゆく。だが、これは'戦争'なのだ。
「'
リトルオーズの身体に強い衝撃が走る。それは立っていられなくなるほどで、ガクンと膝が落ちる。意識が遠のきそうになるのを耐え、オーズは目の前にいる七武海を捉えた。こんな強敵を一人でも倒しておかなければならない。せめて、せめて倒れてしまう前に――必死で手を伸ばした。
ナマエはいつの間にか最前線近くまで来ており、その光景を目の当たりにした。こんなに大きな生き物が簡単にやられてしまう戦場、戦争。ドクドクと嫌な音が聞こえる。凄く嫌な気配がした。空気が、変わる。
「フッフッフッフッ・・・面白ェ!!!フッフッフッフッフッ!!!」
世界で一番嫌いな声がナマエの耳を過った。オーズの真上を飛び越え、その後ろにはオーズの大きな脚がボドッと切り落とされていた。ナマエの目の前に、全身派手な桃色の服に身を包んで、不敵に笑う、'あいつ'がいた。
ああ、この時が――この時が来てしまった。ずっと避けてきた男。ずっと会いたくなかった男。ずっと殺したかった男。
そして、ずっと・・・'恩'のある、男。
ナマエはギリギリと奥歯を噛み締めた。
「ドフラミンゴ・・・!!」
「・・・・・・よォ、ナマエ。'家出'はもう終わりかァ?フッフッフッ・・・」
「'家出'なんかじゃない!!私はもう、'自由'に生きる!!!!」
この時がきてしまったのだ。今ここで、こいつを仕留めなければ、また'犠牲者'が出る。
ナマエは手袋を外した両手を解放する。両手には模様が浮かび上がり、それには覇気が纏われていた。そして先手必勝と言わんばかりに素早くドフラミンゴの懐へ潜り込む。
だが伸ばした腕は相手を捕らえることなく、空気を掴んだ。ドフラミンゴもまたナマエの先手を軽々と避けていた。
「おいおい・・・おれに楯突こうってわけじゃねェだろうなァ?ナマエ、」
その瞬間にナマエのみに向けられた'威圧感'。彼もまた、'王の素質'ある者なのだ。ナマエは身体が震え、それに意識が持っていかれそうになるも、唇を噛んで耐えた。
昔の記憶がナマエの身体を竦ませる。
『ナマエ、おめぇは'おれ'から逃げられねェよ』
『お前は'その実'を食べた時点で利用される運命だ。それが嫌なら――』
『やめて!!・・・分かった、分かり、ましたから・・・・・・あなたの'仲間'に、なる、から――』
「あいつを今ここで殺せば・・・ローに、危害が行くことは、ない・・・もう誰も、傷つかない・・・」
ナマエはボソリと自分に言い聞かせるように呟くと、震える身体に鞭を打ち、懐に忍ばせておいたナイフを持つ。だがドフラミンゴはその様子を見るも、ニヤニヤと表情は変えずに、手を翳した。
「'
するとその'見えない糸'は白ひげ海賊団傘下の者達へと及ぶ。
――キンッ、ガシャン
「あああ!すまねぇ!身体が勝手に!!!」
「わああ!!何だ!何で身体が言うこと聞かねぇんだ!!」
「くっ!白ひげの傘下の皆さんっ!操られているんです、あの'王下七武海'のドフラミンゴに!!」
ナマエは迫り来る味方を傷付けないように刀で弾き飛ばす。もっと強固な刀があれば覇気を纏い、糸は切れるかもしれないが――
「数が多いっ!!!私と直接勝負しろ!!ドフラミンゴッ!!!!」
「フッフッフッ・・・'誰が'戦い方を教えてやったんだ?ナマエ。おめェじゃおれに、勝てねぇよ」
「勝てる勝てないじゃないんだ!あんたを倒さなきゃ私は・・・'自由'になれない!!」
迫り来る輩は刀で受け流し、真っ直ぐドフラミンゴの方へと向かう。そのスピードは凄まじく、ナマエは思い切り跳躍するとドフラミンゴの背後へと回った。そして手が背中に触れようとすると、
「Rob――!」
その腕を掴まれた。素早く動いた筈だった。ドフラミンゴの隙をついて後ろに回った筈だった。過去の私より強くなっているはずなのに。私はどうして――
ナマエは地面に組み敷かれるように手首を押さえつけられ、目の前には憎き男の顔。
「うっ!!離せ!!」
「攻撃が単調で、覇気なんぞ使わなくても読みやすい・・・ナマエ、おまえ興奮しすぎだッ」
するとガッと腹に重い打撃を食らう。
「ぐぁ!かはっ!・・・はぁ、・・・おま、え、なんかに・・・・・・」
「ナマエ、教えたはずだぜ?いい加減諦めるんだなァ・・・おめェはおれの為に生きればいいんだよ。おれにしかお前は使いこなせねェ・・・フッフッフッ」
「はぁ・・・・・・は、わたし、は・・・誰の、ものでも、ないっ!」
ナマエはその暗いドロドロとした瞳を鋭くさせるも、涙が溢れる。だが流さないように必死に耐え、ドフラミンゴを睨みつける。どうして私は弱いままなの。どうしてこいつに勝てないの。
言うことを聞かなさそうなそれにドフラミンゴも無表情になる。誰が'育てて'やったと思っているのか、こいつは理解していないらしい。ああ、本当にムカつく。こいつはいつも思い通りに動いてくれない。ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく・・・・・・もう、殺しちまおうか?
「おめェ・・・・・・・・・おれを'呼び捨て'で呼んでんじゃねェよ・・・」
「・・・は、・・・うるさい、'ドフラミンゴ'」
ドフラミンゴはナマエに手を翳した。ナマエの瞳は何故かおれの前だけ酷く歪む。今も昔も。
気持ちの悪ぃ笑顔なんて見たくもねぇが、こいつはおれにしか扱えねぇモンだと思っていたのに。本当にイライラさせてくれる。
脳裏に'昔のナマエ'の姿がチラついた。
『・・・ねぇ、やるなら早くしてよ。もっと私を強くして』
『なんで・・・なんでこんな、こと・・・どうして・・・?』
『・・・'ドフィ'には、感謝もしてる。でも、やっぱり・・・許せないんだ・・・。絶対に』
「・・・・・・・・・クソガキが、」
―――ドッ
鈍い音がした。