ファントムアメジスト

―――――ドッパァァァン!!

空から降ってきた大きな船は大きな水飛沫をあげ、衝撃からか真っ二つに割れていた。
戦場はどよめきを隠せない。それはそうだろう、こんな戦争のど真ん中に上から攻めて来る人なんて滅多にいない。ましてやここはマリンフォード。絶対を誇る'正義’の場所だ。
その不思議な船からガヤガヤと声が聞こえる。

「海だ!!!助かった、海に落ちたぞ」

「何でここだけ氷がねぇんだ⁉」

「氷に叩きつけられて死ぬかと思った!!」

水から救出されたのか、船によじ登り、嬉しそうな顔で叫ぶ彼。

「エ〜〜〜〜〜〜〜ス〜〜〜〜〜!!!・・・やっと会えたァ!!!」

何だか懐かしいような顔にナマエは安堵してしまった。ボロボロではあるがとても元気そうだ。最後に見たのはあの'シャボンディ諸島'だったから。だけど、それとは別に―――

「あ、はは・・・すごいメンツ、」

ナマエだけでなく、その場にいた誰もが、ルフィが引き連れて来たメンツを見ると慄いた。

'海峡のジンベエ'
'革命軍幹部イワンコフ'
'道化のバギー'
'元七武海クロコダイル'

その他にも名を馳せた屈強な海賊達がぞろぞろとルフィの後ろに控えているのをみて、静かだった戦場がまた騒がしくなる。ナマエはそんなルフィ達に一瞥するも前を向く。今、あの処刑台に一番近いのは私だ。
ナマエは深呼吸をすると皆がルフィに気を取られているうちに処刑台へと飛び上がった。拳に覇気をまとわせ、狙うはーーーー

「なっ!!あいつは・・・!?」

エースは突然目の前に出てきた人物を驚いたように見つめた。よくジンベエの話に出てきた気まぐれの盗人シーフこと、ナマエ。ナマエはジンベエ'達'の命の恩人だと言っていたが、おれとは何も関わりがない。なのにどうしてこんなところに―――

「おい!お前の出る幕じゃないだろ!?ナマエ!!!」

ナマエの猛攻にエースの近くにいたセンゴクは声を張り上げ、その拳を咄嗟に同じく覇気で受け止める。

「それはッ・・・!私が決めることです、よッ!」

ナマエは反対側の手でセンゴクの身体に触れようと手を伸ばすが、センゴクは意図に気付いたのか後退し、ナマエと距離をとる。相変わらず速い動きをし、厄介な能力のナマエに舌打ちをこぼした。

「おい!!なんでアンタまでここに来たんだ!!!」

エースの苦しそうな声で発せられた言葉にナマエはふぅと息をつき、エースを見ることなく答える。

「そんなこと・・・私の勝手です。あなたも、あなたの'勝手'でこんなことになってしまったのでしょう?お互い様ではないですか。」

疑問符がないその問いかけにエースは奥歯を嚙み締めた。そんなこと、自分がよく分かっている。自分の不甲斐なさや、弱さ、放っておいてくれない'家族'。エースは戸惑いと、切なさと、歯がゆい気持ちが入り交じり、心中穏やかではいられなかった。

「お喋りはそこまでだよォ〜・・・」

―――ピカッと眩い光がナマエをとらえ、光速の攻撃がナマエの腹に直撃した。

「がッ!!!!」

咄嗟に覇気を纏うも自分を上回る速さと攻撃に受け身を取れず、ナマエは遥か後方へと飛ばされた。
喋り方はゆっくりだが、妙な威圧感と、この場にいる誰よりも速いのではないかと思われる―――大将 黄猿。
黄猿は飛ばした相手に一瞬目をやり、シャボンディ諸島での一件を思い出した。少々厄介な能力が、更に脅威を増しているかもしれないのだ。早々にこの場を治め、彼女の'覚醒'についても確認しておかなければいけない。
少し気怠げに目を瞑り、見開いた瞳は白ひげと、あの麦わらの少年を捕らえる。

「相手が誰だか分かってんだろうな!おめェごときじゃ命はねェぞ!!!」

「うるせェ!!!お前がそんなこと決めんな!!!おれは知ってんだぞ、お前海賊王になりてェんだろ!!―――'海賊王'になるのはおれだ!!!!」

「・・・クソ生意気な・・・・・・」

白ひげはナマエの何か意思を決めた瞳や、シャンクス程の男が右腕と共に麦わら帽子を預けたという男に何かを感じた。

「足引っぱりやがったら承知しねェぞハナッタレ!!!」

「おれはおれのやりてェ様にやる!!!エースはおれが助ける!!!」

「・・・ありゃあ全部'死刑'でいいんでしょ?センゴクさん・・・」

「無論だ!!!」


再び戦況が動き始めた。