ナマエは不敵な笑みとともに甲板の端へ寄ると、そこから一気に駆け出す。敵船と思われる船は大きな大砲を打ち込んできた。それに対して、麦わらの一味は面々戦闘態勢に入る。それを制するようにナマエは「任せてくださいっ!」と飛んできた砲弾に手を翳した。
「Steal…」
と呟き、砲弾に一瞬触れるとその砲弾は消え、次の瞬間にはナマエの手元に収まる。ナマエはニヤリと敵船を見据え、その砲弾を相手に投げ返した。投げ返した砲弾は大きな爆発音を上げ、轟音に紛れて敵船まで飛び込んだ。
そこそこ距離があるというのにその跳躍力、戦闘スキルに各々感嘆の気持ちが現れる。
「あいつ…!ジャンプ力スゲーな!!」
「小柄だが身の使い方がうまいな」
「今砲弾投げ返したぞっ!」
「ルフィのじいちゃんみたいなことするな…」
「関心してる場合じゃないでしょ!いくらなんでもあの大きさの船を相手に1人じゃ…!」
「ふふ、そうでもなさそうよ?」
ナミがロビンの言葉に顔を向けると、敵船から「ぎゃああああ!」「なんで盗人が麦わらの一味にいるんだ!」「てめ!おい!おれの返せっ!!」とナマエ以外の声が聞こえる。大の大人に対して、まさかあんな小柄な子が!と思うも、先程見せてもらった手配書の通りの強さのようだ。
「まるで手応えがない…」
一方のナマエはというと、その返り血で濡れた手を汚物を見るような目で見つめるとその辺に転がっている相手の衣服で拭う。これしきの力で新世界に行こうと言うのだから全く呆れてしまう。ふぅと息をついたナマエは隅っこでガタガタ震える男に歩み寄る。
倒れて重なっている相手も麦わらの一味の手前、殺してはいないが、皆意識はない。その割にナマエは傷一つ付けられていない。
「ねぇ、私のこと知ってる?」
歩み寄った男に対し、身を屈めてその顔を覗き込む。
「…っ!ああ!もちろんだ!!'気まぐれの
「なんで?はっ!」
その愚問すぎた質問にナマエは冷めた目で相手を見つめる。
「'海賊'のくせに何言ってんの?
あんた達は海賊旗を掲げる以上、そんなこと言う資格はないんだよ」
ぐっと相手の胸倉を掴み、睨みつける。
あぁ、本当に醜い野郎たちだ。男は更に顔を青ざめさせ、ナマエから視線を逸らす。
「あなただけは何もしないであげます。
とりあえず麦わら達のためにお宝だけは貰っていくね」
「次の私の野宿先だからさっ」と先程の冷酷な顔を収め、いつものように胡散臭い笑みを浮かべたナマエは何も返答のない男を、ポイっと捨てるようにその場に捨て置く。
「そういえば、この付近に――」
「え?」
「あー、いや、なんでもないや。」
ナマエは何かを聞こうとしたが、口を噤む。こんなところにいるわけないか。それ以降何も言うことはなく、ナマエはお宝を持ち出し、麦わらの船へと戻った。
「戻りました〜!!」
ナマエはいい笑顔で麦わらの一味に駆け寄ると、ナミに対してお宝の入った袋を差し出す。
「すみません、身体が小さいのでこれしか持って来れなかったんですけど」
「いやん!!お宝っ!ナマエってば素敵!仲間になって!」
「「「おいっ!」」」
ナミは誰かさんみたいな発言をすると、嬉しさからナマエをムギュっと抱きしめた。ナマエはそのナミの豊満なボディに少し恥ずかしそうに身を捩る。
「ナミさん、ちょっと恥ずかしいです…」
「かわいぃ…!」
「てめぇええ!ナミさんに何触れとるんじゃあ!」
いや、触ってきたのそちらからなんですけど、と言いたそうな目でナマエはサンジをじとっと見つめる。
ロビンはそんなサンジの様子に少し首を傾げる。いつも'女性'に対して媚びを売るような猫撫で声で擦り寄ることもなく、彼は、もしかして、気づいていないのだろうか。確かに中性的だし、遠目からでも分かるあの強さは本物だし、間違うのも無理はないが。ナミより少し身長は低めであり、華奢な身体。筋肉はついているがその丸みのあるボディはまさしく――女性だ。
ふふっと笑うと、気づいていないのなら面白そうなのでロビンは何も言わずに様子を見守る。
「とにかく!これで乗船は許してくれますよね?」
ナマエはナミから離れると、船長のルフィに向かい、その胡散臭い笑みを向ける。周りは信用していない者も数名いるが、自分達の為にお宝を奪ってのけ、それを全て差し出すと言うのだ。魚人島へくらいは乗せてっても良いだろう。更にその敵船を落とした強さに、実力は相当のもので、足を引っ張るということもない。
最後の決断は船長に委ねられた。
「おうっ!宜しくなナマエっ!」
ルフィはニカッと太陽のような笑みでナマエを迎え入れた。