宴もそこそこにナマエは一味の中心に立ち、その手袋を外した。そこにはサラリとした白い肌に覆われている華奢な手。少しばかり傷が目立つも、指先などは細長いため妙に色っぽい。
「能力を発動する際は相手に触れなきゃいけません。実際に見た方が早いと思うので、ルフィさん、試してみます?」
ワクワクといった顔でこちらを見ていたルフィに声をかけると、大きく頷いた彼はナマエに近づく。そんな彼にくすりと笑い、頭に触れた。
「Pilfer」
発音よく呟くと、ナマエの手はある模様を映し出し、ルフィの頭からメモリーカードのようなものを抜く。ルフィは力が抜けたように少し身体が傾いたが、ナマエはそれをもう片方の手で支えてやる。
「おい!ルフィ!!」
船長の様子に一味は騒然とするも、ナマエは指を口元に持っていき、しーっというポーズをとった。そう言われてもうちの船長が倒れそうになったのに黙っていられない、という者もいるが、次の瞬間にはルフィはいつも通りの様子に戻っていた。
「んぁ?あれ…おめぇ誰だ?」
ルフィはいつも通りに戻ったと思ったが、何やら様子がおかしい。目の前にいるナマエをまるで'知らない人'だと言うような質問だ。これはもしかして――
「ふふ、'初めまして'麦わらの一味の船長さん。」
ナマエは慣れっ子だと言うように一つ笑みをこぼし、それをルフィにも向ける。相変わらず彼は首を傾げ、「なんでおれの船に??」と分からない様子だった。
「ナマエ!もしかして、記憶…を?」
「正解です!ウソップさん」
不安そうに問いかける彼にナマエはいい笑顔で答える。いやいや、そんな満面の笑み浮かべられたら逆に怖いだろ。ぶるっと冷や汗がウソップの背中を伝った。本当に記憶を'盗んだ'のだと。
これ以上このままだと船長に何を言われるか分からないので、ナマエは早々に彼に近づくとそのメモリーカードのようなものを手に持ち、ルフィに触れた。するとそれはフワリと溶け込むようにルフィの中へと消えていったのだ。
「あ、あれ。おれ、なんでナマエのこと分からなかったんだ?」
「記憶を盗む際は'盗まれた'という記憶も同時になくなるので、状況によって相手は混乱してしまうんです。今ルフィさんから盗んだのは私と会ってからの記憶を盗んでみました!」
これまたいい笑顔で説明をしたナマエにルフィはムムっと渋い顔をした。
「おれが盗まれただけでナマエの能力わからなかったぞ!!」
それは仕方ないだろうと一味全員が思うも、ナマエは胡散臭さ割り増しで微笑むと、
「では、次は誰かの技でも盗みましょうか?能力者問わずなんですけど…」
「…おれでもいけんのか?」
「え、あ!はい!大丈夫ですよ」
ナマエが呟くと、ゾロが一歩前に出てきた。それに皆驚いた顔をする。こういうことにはあまり興味を示さないと感じていたが、人一倍努力家で、勝負ごとには敏感であることには変わりはないし、麦わらの一味の主戦力でもある彼は、ナマエの'4億'という大きな数字に興味を持ったのだ。悪魔の実の能力は確かに強いが、その実を使いこなすのにはどうしても本人次第であることに変わりはない。
ゾロはそのナマエの力を試してみたかったのだ。
「…手加減はしねぇ」
周りは二人に対して些か距離を取り見守る中、ゾロはナマエに近付き身を屈めて、低く唸るような声色で耳打ちをし、ギラついた目で睨みつけた。ナマエはそれに冷や汗を流す。この人、本気だ。なぜ自分に対してこんなに闘争心剥き出しなのかは分からないが、こちらも油断していたら切られると感じた。
「……二刀流 '
「っ!」
「ちょ!ゾロッ!!」
ゾロの瞳と同じようにギラついた刃は、鋭くナマエへと刻まれた。
と思ったが刃が弾かれる音が船に響き渡り、見るとナマエの腕は手首から拳にかけて黒く光っていた。その華奢な手で刀を弾いたというのか!少しの動揺の隙に、素早く懐へ潜り込まれ、その手は刀に触れた。速い!
「Rob」
黒く光っていた腕は瞬く間にある模様を映し出し、刀から巻物のようなものがナマエの手の中に収まる。
ゾロは素早くナマエと距離をとるも、ドクンと心臓が大きく音立てるのが分かった。ああ、これは――
誰かか固唾を飲んだ音が聞こえる気がするくらい、二人の間に静寂が流れる。先に口を開いたのは、
「…てめぇ、」
ゾロが低く唸ったそれにニヤリと不敵な笑みが返された。
「ふふふ、頂きました」
ナマエは手の中に収まる巻物に口付けをする。
「…え、え!?どういうこと??」
「恐らく、'技'が盗まれたんじゃないかしら?」
「その通りです!もう先程の技は使えないはずですよ、ゾロさん?」
「…ちっ、わぁってるよ、んなこと。感覚で分かる。」
そう、使えないのだ。使おうとしてもどうやってやっていたのか、感覚的にぽっかりと抜け落ちたようで、自分の身体じゃないみたいで酷く苛つく。
ナマエはナマエで、咄嗟に'覇気'で弾いたはいいがあまりの威力に手が震えている。なんという力だろうか。彼はまだ'武装色'を会得出来ていないみたいだが、これを会得してしまったらと思うと末恐ろしい男だと思った。
「すげぇなナマエ!!やっぱり仲間になれ!」
そう言ってなんだか気まずい空気を払拭するかのように笑ってのけたのは、ルフィであった。ナマエも含め、皆その笑顔にホッと息をついた。仲間にはならないが。
緊張していたのだろうか。明らかに自分よりも'格上'の相手だったと思う。
自分の懸賞金は実力もそれなりにあるかもしれないが、'この実'の危険度こそが4億という大層な金額を背負っているのだと理解していた。いざ本気で戦うとなったらゾロにも負けてしまうだろう。
ナマエはグッと拳に力を込めた。まだまだ、強くならなきゃいけない。目的を果たすために。
「さ、ナマエのお披露目会はこのくらいにして、そろそろ着くわよ?」
ナミはそう言って船の先頭へと目をやると、そこには'
※ヒロインの記憶を盗む能力ですが、プリンちゃんの'メモメモの実'と被るなぁと今更気づき、補足を!
ヒロインの能力はあくまで'盗むこと'です。なのでプリンちゃんのように編集したり、記憶を改竄することはできません。なのでプリンちゃんよりある意味不親切な下位互換な能力と言えます。
プリンちゃんは抜き取る際、フィルムのようなメモリーだったので、ヒロインのものはメモリーカード、あくまで保存や、記憶の抜き差しができるという表現を取らせて頂きました。
不明な点がありましたら、お気軽に聞いてくださいませ!