蓋をする
爆豪くんにからかわれた一件から爆豪くんのツンデレ度が増している気がする。
危ないからと手を引くと「うっせぇ!!触んなクソ女!!」と怒られ お風呂上がりに髪を乾かさないでいると「また風邪引きてェのか髪乾かせ!!」と怒られつつも髪を乾かしてくれたり…思うところは所々ある。
そんな考察をしながら目の前で朝食を食べている彼の姿をじーっと見る。
それに気づくと既に顔でなんだと嫌な顔で訴えてるのがわかる。
「爆豪くんさぁ…」
「あ?」
「……なんでもない」
っだと?!とまたもや怒り始める爆豪くん。
ふと思っていたことを口に出そうとしてしまったがその言葉をぐっと飲み込む。
爆豪くんのこの反応にもだいぶ慣れてきて はいはいそうだねと宥めるようになってきた。それが気に入らないみたいでまた爆豪くんを怒らせちゃうけど。
「ね、爆豪くん」
「なんだよ…」
「今日休みだからお姉さんとデートしよっか」
「な…っ」
わなわなする爆豪くんをよそに準備してねと告げ空いたお皿を片付ける。後で私が洗うことを伝えて自分も着替えようと部屋に向う。
今日は久々の休みだし少しおめかししよう。
*
「…そんで、どこいくんだよ」
「爆豪くんと私の服選び!と、日用品とかの補充かな。
ボーナスも出たし久々に買い物満喫したくて。付き合ってくれる?」
「……ッチ、行くぞ」
少々口は悪いが付き合ってくれる爆豪くんは優しいと思う。
近くにあるショッピングモールに来て広い店内を先に行く爆豪くんの後を追いかけて見て回る。早速気になる服屋さんを見つけるとあっちに行こうと誘い中へと寄って見ていく。
「あ、この服可愛い。白と黒どっちがいいかな爆豪くん」
「………黒だろ」
「じゃあこれにしよう」
嫌な顔をしつつも隣にいてくれる爆豪くんがなんだか可愛く思えてしまう。
久々に好みの服が見つかり選んでもらった服を会計に向かい支払い終えると爆豪くんの元に駆け寄る。
「ふふ」
「っ…いきなり笑うな。気持ち悪ぃ」
「女の子にそんなこと言わないの!」
そうだったなと言った爆豪くんの口角が上がってるのがわかった。よかった、笑ってくれた。まだ1ヶ月も経っていない状況下ではあるがそれでも家に帰れてない彼には不安も苛立ちもあったはずだ。ほんの少し。少しずつだけど爆豪くんの楽しそうな表情が増えてきてほっとしている。
「ね、次あっち行こ」
「あんまはしゃぐと迷子になんぞ」
と、はしゃぐ私に差し出される掌。
…これは手を繋いでもいいってこと?
「あ、あぁ!荷物持ってくれるの?」
「っ!アホか!手ぇ貸せって言ってんだ!」
ぽかーんとしていると爆豪くんに手を引かれる。爆豪くんのいきなりの行動に不意打ちを食らう…ってだめだめ、相手は未成年だよしっかりしなきゃ。
「…爆豪くん照れてる?」
「……気のせいだろ」
私を引く爆豪くんの後ろ姿は少し赤くなっている気がした。ふと思わず笑みが出てしまう。
それを指摘すると言うなと言わんばかりに足を早めてしまう彼。
歩きながら見て回っているとメンズ物の服屋を見つけ爆豪くんを連れ中に入る。
今度は爆豪くんの服選びだ。爆豪くんの服と言ってもまだ数枚しかなく 少し不自由にさせてしまってるのではないかと感じてきていた。
今日来たのもボーナスをきっかけに爆豪くんの衣類を買い足そうと決心したのだ。
「…爆豪くんこうゆー服はどう?」
「あー…いいなそれ」
「じゃあこれにしよっか」
「この服今人気なんですよ。そちらに居る彼氏さんへのプレゼントですか?」
服選びをしていると店員さんに声をかけられはっとする。
あ、爆豪くんの眉間に皺が寄った。
「あ?」
「こら、爆豪くん!すみません…っ親戚の子で…弟みたいなものです」
苦し紛れの言い訳をすると失礼しましたと店員さんは謝る。他にも御座いますのでごゆっくりご覧下さいと驚きながら慌ててカウンターへと戻って行った。
びっくりしますよね…でも爆豪くん いい子なんですすみませんと心の中で届くわけがないのに謝ってしまう。
「あはは、びっくりしたね爆豪くん」
「……」
「あ、あれ?爆豪くん?」
「ッチ、なんでもねーよ」
明らかに機嫌が悪い爆豪くんに驚いていると繋がれてた手もいきなり無くなる。何かしたのかと考えるがわからず聞いてみるもうるせェと怒られてしまう。
その後もめげずに爆豪くんの服選びをしてこれはどう?あれは?と彼にも意見を聞いて選んでゆく 返事はしてくれるものの爆豪くんが私と目を合わせてくれないのが少し気になる。
待っててねと会計を済ませに行き再び爆豪くんの元に戻る。
「お待たせ」
「……貸せ」
乱暴ではあるが私の手荷物を爆豪くんが持ってくれる。
その優しさにほっとするが爆豪くんの不機嫌なのは変わらない。
「…爆豪くん拗ねてる?」
「あ?」
「や、気のせいならいいよ」
「……」
「??爆豪くん」
「……俺はてめーの弟じゃねぇ」
ボソッと聞こえる爆豪くんの声に驚く。
…まさか弟と言われたのがショックだったのかと言うか。
確かに風邪を引いた時に誰が弟だと怒られはしたがその言葉はタブーだったらしい。
「…ごめんね、爆豪くん」
「……うっせ」
「…友達って普通に言えばよかったね」
すると私の一言に爆豪くんの歩きはいきなり止まる。
その追いかける背中がいきなり止まるものだから私は爆豪くんの背中にぶつける。
そして私に向き合い片手を上げろと言うが…
位置的にハイタッチでもするのだろうか?と思っていると。
「…友達はこんなことすんのかよ」
「っ…」
爆豪くんの手が私の手と絡まる。
……これは世で言う恋人繋ぎだ。
ぼっと顔に熱が集まるのが自分でも分かる。その反応を見てなのかまた爆豪くんは笑う。
「っ、くく」
「お、大人をからかわないで!」
必死に反抗をするが逆に爆豪くんを喜ばせているみたいだ。
耐えられなくなり爆豪くんから手を離そうとするが恋人繋ぎだけあってがっちりと握られている。
「ね、ねぇ、爆豪くんそろそろ手を」
「あ?何しようが俺の勝手だろ。それに手ぐらいいつも握ってるだろーが」
それは正論だけど今日のは繋ぎ方が初めてだ。うるさい自分の心臓がどきどきと言っている。落ち着かないと。からかわれているんだきっと。
「はる」
「っ、な、なに」
油断していると普段呼ばれない名前に更に不意打ちが。さっきからどうしたの。自分だけがどきどきしていて爆豪くんは平然としているのが悔しく感じる。
「……今日化粧してんのか」
何か違うと変化に今気づいてくれたのかじーっと見つめられる。
そうだよと答えると悪くねェと返される。少しの変化でも気づく爆豪くんに嬉しいと思ってしまう。何なんだこの甘酸っぱい感じは。恥ずかしくなり爆豪くんをあちこちと連れ回す。それに気づいているのか爆豪くんは後ろで笑っている。
「ば、爆豪くんあそこ行こーよ」
「……なぁ」
「うん?」
「………大丈夫なのかよ」
あ、もしかして。
「お金なら大丈夫だよ。大人だし稼いでるからね」
「…」
「不満?」
「…借りをつくるのは癪だ」
「ふふ、言うと思った。
だったら爆豪くん。
私が困ってたら助けにきてよ、ヒーローになるんでしょ」
その時には爆豪くんが隣に居るか分からない。それでも爆豪くんが言っていた目指しているヒーローが実現するように。ずるい約束を取り付けてしまう。
ちくりとする自分の心を隠すように爆豪くんに笑いかける。
「…いいかな?」
眉間に皺を寄せ私からの返答にびっくりしたのか時間が経つとその表情は柔らかくなった。
まったくと言いたげな彼は口角を上げる。
「………助けてやるよ。俺はNo.1ヒーローになる男だからな」
いつかは帰ってしまうことに今更気づく私との寂しさと裏腹に爆豪くんの目は活気に満ち溢れていた。
きっと爆豪くんならいいヒーローに。No.1ヒーローになってしまうんだろうな。
寂しいという気持ちに蓋をして私は今ある時間を楽しく過ごそう。そして彼が帰れる方法を一緒に探そうと。そう思った。
《蓋をする》
「爆豪くんクレープ食べよ」
「太んぞ」
「う、直球!!でも食べる。爆豪くんは?」
「……んなクッソ甘いの誰が食うか」
「辛いの本当にすきだなぁ」