ぐつぐつ


「爆豪くんただいまー!」








仕事を終えて家に帰る。ガチャっと音を立てて中へと入ってゆくが
いつものようにソファにいるはずの爆豪くんの姿が見えない。やけに静かだと不審に思い近づいてみるが。








「……爆豪くん?」








爆豪くんがいない。
帰ってきて爆豪くんが居ないだなんて初めてだ。
ここ最近ランニングをしているのも目撃したこともあるし今日もそのランニングならもう少ししたら帰ってくるはず。
……まさかもう居なくなっただなんてないよね。と不安にもなるが信じて待つことにした。
部屋で着替えてからふと爆豪くんが普段寝ているソファに目がいく。








「……」








今なら居ないし少しぐらいならいいかな。
吸い込まれるようにソファに横になる。







「んん、やっぱりこのソファ買ってよかった」







ふかふかな感触が癖になる。
顔を埋めると自分の匂いとは違う爆豪くんの匂いがする。
嫌な匂いじゃないこの匂いにふと爆豪くんを思い出す。







「……爆豪くん大丈夫かな」








やっぱり携帯持たせた方がいいのかな。
連絡がないとどうしたのかもわからないし探しに行こうにも入れ違いになったらまた連絡うまくとれなくなったりしたらと思うと結局のところもう少しだけ待ってみるのが1番なのかな。
どうしようもない気持ちを沈めるように爆豪くんの枕に頭を置く。なんだか安心する。こんなところ爆豪くんに見られたら怒られるだろうな。









「……なにしてんだ、クソ女」
「ひっ」









フラグ回収早すぎです。見られた現場に恥ずかしさを覚える。
後ろめたい気持ちのが勝って爆豪くんに声をかけられたと同時に枕に顔を埋めたそのままの状態から爆豪くんの方に振り向けないでいる。











「……もう一度きくぞ。なにやってんだ」
「なんでもないです」

「この状態が何も無いだ?俺の枕に顔埋めてナニしてたんだ、はるチャンは」
「ちがーう!!そんなのじゃない!」

「じゃあ、なんだよ」

「……疲れて横になっていた?」
「…自分のベッドで休んでりゃいいだろ」

「だって久々にこのソファのふかふか堪能したくて」






ぶつぶつ言う私の後ろを背に爆豪くんが笑っている声が聞こえる。私は本当のことを言っているというのに。







「……んで、ソファに寝てたのはいいが俺の匂いがして長い間横になってたんか」
「や、やだなぁ。人聞きの悪い」
「……嘘つくならもっと隠せ」

「っ、だって爆豪くん帰ってきたら居ないんだもん」
「買い物行ってた」
「そう、なの?」




「……寂しかったんか」






ぎくりと固まる。寂しかった?寂しいだなんて思うのは久々で自分の気持ちに戸惑う。







「……少しね」






楽しんでいる爆豪くんにたまには素直になってやろうとぽろりと口をこぼす。






「っ、く」
「またそうやって笑う!」
「やっと顔見せたな。赤すぎてタコみてぇ」
「お、大人をからかわないで!」





がばっと怒った勢いで爆豪くんの方へと顔を見せる。
我ながら恥ずかしいことを言ったあとにこうも笑われるとさらに恥ずかしくなる。
もういいと一先ず部屋に行こうとすると爆豪くんに引き止められる。







「あんま怒ってっと更にブスになるぞ」
「もう。それ以上言わないで、部屋行く」
「ったく、怒んな」
「……怒ってない」







これ以上ここには居れないと居た堪れないなくなりソファから立ち上がる。








「おい」
「…なんですか」
「飯、作んぞ」
「え」
「…前教えろって言ってただろ。やりたきゃお前が俺に合わせろ」
「ま、待って!今行く!」





いきなりのことにさっきの事など直ぐに忘れて台所に一緒に向かう。
覚えていてくれてるとは思わなかった。嬉しい気持ちでいっぱいになる。








「爆豪さん!今日は何を作るんですか!」



「…味噌汁に肉じゃがにサラダあと1品適当に作る」
「!!爆豪くんの味噌汁教えてもらえる!」
「本っ当に好きだな」
「ふふ、うん。爆豪くんのすき」





ふと横を見るとほんのり顔を赤くした爆豪くんと目が合う。
咄嗟に爆豪くんが私から視線を逸らして手を洗い始める。爆豪くんは本当に料理上手なのだ。私も続いて手を洗う。






「皮むけ」
「はーい」
「…むいたらこっちよこせ」






じゃがいもの皮をむき終わったのを横でまな板と包丁を持って待っている爆豪くんに渡す。







「…爆豪くん手際いいね」
「あ?これくらい誰でも出来ンだろ」
「……本当いいお嫁さんになるよ」






黙々と爆豪くんにむいた野菜を手渡してゆくと手馴れた包丁さばきで野菜を切ってゆく。







「爆豪くん私も切りたい」
「は?てめぇなんかに任せたら不格好になるだけだろ」
「っう、そこまで酷くない」

「…指でも切ったらどうすんだ」

「へ、爆豪くんもしかして心配して」
「っ、てめーが危なっかしいのがいけねぇんだろ!!!後、醤油取れ!!」
「ええ?!は、はい」







理不尽な事を言われながらも醤油を爆豪くんに渡す。
ぷんすかしている爆豪くんをみてまた笑いそうになってしまう。






「…煮込んでる間味噌汁作ンぞ」
「やったあ!」
「っるせぇ!!」
「爆豪くんそんなに怒ってると疲れちゃうよ」
「あァ!?」
「あ、じゃあ、鍋に水入れておくね」
「っ、クソ女!無視してるんじゃねぇ!!」






…なんだかようやくいつも通りのやり取りが出来てきた気がする。
最近の爆豪くんとは何やらふわふわしたやり取りが続いていてくすぐったい。
まさか好意がだなんて思い違いをしてしまうがそんなことがあれば私は彼との線引きをしなければならない。私は大人でもあるのだから。
今はこんなやり取りができるだけでも楽しく感じる。






「爆豪くん」
「あ?」
「…ありがとうね」








ボソッと呟くとまた隣で笑い始める爆豪くん。
手ぇ動かせと言われて私達は夕飯の準備をする。
爆豪くんが言ってくれたように私も爆豪くんと一緒にいれるこの時間を少しでも居たいと思った。この後に起きることさえも考えずに。












《ぐつぐつ》






「味噌はこんくらいだ」
「ふむふむ」
「……」
「…爆豪くんすごいね」
「あ?」
「えらい」
「っ、調子乗んなクソ女!!勝手に頭撫でんなや!!」
「えー?ごめんごめん」