06



「勝己くん……それだけでいいの?」


デパートに着いたと思えば小一時間程で買い物が終わった爆豪。そして量もそんなにはなく女子からしたら少なく思える量だ。


「必要最低限でいい」
「歯磨き粉は?耳かきは?換えの服とか下着は?それに筆記用具とかその辺は…」
「ある」
「そうなの?なんか私心配だよ勝己くん…」



お母さんのようにしつこく聞いてくる彼女に少しずつイライラが募っていったのか徐々に眉間に皺が寄り始める。これはまずいと思った時にはほのかに彼の名を遠くから呼ばれている気がして振り向く。



「爆豪ー!!元気にしてたか?…って、あれ?そこにいる女の人って」
「ウェッ!?爆豪の彼女!?」
「ッチ!!行くぞなまえ」
「っわ、待って勝己くん」

「……なまえちゃん?」
「え、嘘、出久くん!?」


誰かと思えば幼稚園から一緒に居た緑谷の姿だ。嬉しくなり小さい頃よくしていた抱きつき癖を発動してしまう。勢いよく抱きかれて緑谷は倒れそうになる。



「え、ちょ、なまえちゃん!」
「あ!ごめん。つい昔の癖が」

「……爆豪いいんかアレ」
「ッるせぇ!!!」
「わぁ、荒れてんな。三角関係って奴か?」

「お姉さん爆豪達とどんな関係なんスか?」
「??ただの幼なじみだよ。というか、皆とタメだよ私」
「ええ!?全然見えねぇ!いや、いい意味で!俺上鳴電気です」
「俺は切島鋭児郎っス。爆豪に幼なじみ居たって知らなかった…」
「って言っても小学校あがってから引っ越しになっちゃったから会うのは9年振りくらい。今夏休み中で戻ってきてるんだ。あ、私はみょうじなまえ。みんなの事テレビで見たことあるよ」
「もしかして体育祭!?他校からも見られてるのか俺達…!!」


賑わう会話に爆豪に友達が居ることに一安心するなまえ。当の本人は面白くなさそうに機嫌が悪そうだ。


「よかったなまえちゃん。かっちゃんと会えたんだね」
「…うん。色々ありがとね出久くん」
「えっ、そ、そんな…!」
「あ、私携帯持ったんだよ!連絡先交換しよ」
「あ、うん!」
「え、なになに?俺らとも交換しよーよなまえちゃん」
「あァ!!?」
「っひ、てかなんで爆豪怒ってんだよ!?」



その最中にもあっという間に緑谷と携帯の連絡先を交換して満足したなまえ。それを見て我慢の限界に達した爆豪はなまえの手をとられて離れるように引っ張っていかれる。

「っわ、ご、ごめんね!これからも勝己くんのことよろしくね!」
「任せろ!!」
「なまえちゃんもう行くの!?俺にも連絡先教えて!?」
「死ね!!アホ面!!!」
「ひどっ」
「出久くん後で連絡するね!」
「う、うん!」



みるみるうちに皆から離れて機嫌の悪い爆豪は無言のままなまえの手を握ったままだ。



「勝己くん?」
「……」
「なんで怒ってるの」


人気がない所までくるとようやく足がとまった。暫くするとくるっとなまえに向き合う爆豪。


「誰構わず尻尾振ってんじゃねェよ」
「……寂しかったの?」
「……は?」
「ごめんごめん」
「俺が居んだろ」
「え?」
「俺が」
「ど、どういうこと…?」
「相手。居ないんだろ」
「あ、うん。居ないけど…待って。話飛びすぎててわからない」
「あァ!?分かれよ!!」
「ええ……」



なんの事だと頭を悩ませると一つだけ心当たりが出てくる。それは小さい頃の記憶だ。






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