02


電車に揺られ母校でもある東京呪術高専高等学校に着く。今日からまたここで補助監督生としてだが携われると思うと期待で胸が膨らむ。その一方で当時は苦い思い出で終わってしまった高専での出来事を思い出してしまう。
……傑の時みたいな事が起きないよう、1人でも多くの呪術師を育てていく。その目標を上に私は1級から特級呪術師になり補助監督生としてここまでやってきたのだ。確かに苦い思い出はあるが決して本業を忘れてはいけない。

突然の話で大きい荷物はなんとか纏めて取りに来た業者が先に行ってくれたが肝心の用意してくれた住まいの場所が把握出来ておらず挨拶も兼ねて事務室で聞いてみようと事務室に向かう。懐かしく慣れ親しんだ校舎が心地いい。
事務室につきガラッと扉を開けた先で見た人物に私は唖然としてしまう。







「失礼しま、す」









「やあ、なまえ。お疲れサマンサ〜!」





「へ、」
「どうしたの?」
「っ、なんでここに」
「そろそろ来ると思って」







そこには五条悟が居て当時を思い出してしまう。久々に見た顔はサングラスなんかやめてて目隠しをして目を覆ってた。悟から背を向け逃げ出そうとするがそんなこと無意味ですぐに腕を掴まれて逃げるのは阻止されてしまう。










「…離してください」









「そんな他人行儀にしなくていいでしょ。
僕となまえの仲だろ?」







「……そんな関係もう知りません」







「…それに、なまえに受け持ってもらうクラスって僕のクラスだから」
「え」







「だからそう逃げないでよ」







そう言うと彼はにっこり笑う。
あの学長。相変わらず大事なところは私には伝えないんだから…!
そもそも五条悟がこの学校にいることすら私は知らなかったのだ。周りがもし言ってたとしても人員不足で毎日忙しかった私にはそれを聞く余地がなかったかもしれない。










「…そうあからさまに嫌がられると悲しいんだけど」









黙って考えると余程嫌だと思わさせてしまったらしい。それより未だ掴まれている腕を彼は離してくれない。卒業式のあの日、私は掴まれた腕を振りほどいて話を聞かなかったのに今度は振りほどこうとしても決して彼の腕は振り解けなかった。










「はぁ……それより私こっちで用意してくれたって言う部屋の場所聞きに来たの。それと挨拶も兼ねて」








「あ、荷物ね。それなら僕の部屋に運んでもらってるから」







「はい?」








「家賃も生活費も僕持ち。1人増えるくらい僕にはどうってこともない」






「え、いや、待って…?」








「はい。どうかした?なまえチャン」










「……それなら私、貴方と一緒に住むってこと?」

「ご名答」












にっこり笑う五条悟に私は顔が引き攣る。そんなことってあるの?それに1度関係が終わってる私達が一緒とか有り得ない。











「待って…やっぱり今からでも探しに…」







「は?諦めなよ。明日からこっちで勤務なんだから。
たった一日でどうこうできる話じゃないだろ」
「……それはそうだけど」







ぐうの音も出ない現実に何も言えなくなる。まるで何かを待っていたように懐から紙をガサガサと出す悟。








「んじゃ、これ行先の地図と鍵ね。
挨拶行くなら学長室に今皆集まってるから行ってくるといいよ。
後何かあったら連絡して…連絡先消したかもだけど一応裏に書いてあるから」









紙を渡されると彼は心做しか上機嫌で私の頭を撫でてからその場を立ち去る。暫く私も状況が飲み込めずぽかーんとしてしまう。










「……学長室行ってこよ」








とりあえず今はできることから。そう思い私は挨拶も兼ねて向かう。彼の部屋に行かなきゃいけないのか他にどうにかならないかと考えるが今は目の前の事をしようと結論に至り私は考えるのをやめた。












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