08
※少し遡る
最近の出来事が頭の中で蘇る。それはやけに鮮明で。組手をすることになり外に出て皆で体操をして準備を整えていた時だ。
「なまえ、術式なしの組手しよ」
「……いいけどまた怪我するよ?」
「今日こそ絶対負かす」
むしむしと暑さが漂う中いつも通りに組手を行う。これでも組手では悟には負けたことは少ない。私の術式は自らの血を操り触れた物に呪力を流し込むものだ。物と言ってもよく流し込ものに使うのは黒刀を使っている。身体向上や治癒には役立つが家系からして小さい頃より体術を仕込まれていた私は体術ならあの最強と言われる五条悟にも勝る実力だ。唯一彼に勝てるものがあるのは私にも誇りだった。
土を踏み込む音を出すとそれを合図に互いに体が前に出て組手をし始める。飛んでくる拳を受け流すが横からは次の一手。また一手と飛んでくる。足元が緩んだ隙をついて足元を崩し体制を崩したところで決め技をきめこむ。
「ふふ、私の勝ち」
「あーー、くそ。どうなってんだよその体」
「次は私とだなまえ」
「え」
「やっちまえ傑」
「…術式なしでならいいよ」
その時気づいたのは傑の体型であった。
「……ね、傑」
「ん?」
「……少し痩せた?」
「それ、俺も思った。大丈夫か?」
「……ただの夏バテさ。大丈夫」
その時そう言った傑の顔はやけに元気がなくて。もしかしたらその頃には既に彼には何か別の考えが生まれていたのだろうか。その後にする組手もどこか上の空な傑は私にも組み敷かれてしまう。
「うわ、えぐ」
「……硝子もする?」
「いや、私はパス〜」
「ちぇ。傑大丈夫?」
「あ、あぁ」
そう言い傑の手を取り起き上がらせる。起き上がらせた傑の体は心做しか少し軽く感じた。考え込んで私は暫く繋いだ手を話すことが出来なかった。
「…いつまで握ってるんだ?」
「ダメだったか?」
「…五条何言ってるの?別にいいじゃないこれくらい。ほら」
「っ、なまえ」
ふざけて傑の手を絡ませると五条はなんとも面白い顔をする。
「オマエなぁ……!!!傑もその気になってんじゃねぇよ!!」
「??変な五条」
「……こりゃ苦労するわ」
「…何か言った硝子?」
「いや、なんでも〜」
「傑、次俺ともしろ」
「……まぁ、別にいいが」
「頑張れ〜!」
この時の私はまだその変化に気づいていなかった。ただ、ふざけてやって互いを高め合う。そんな関係がいつまでも続くと思っていた。そんなことは叶わず傑が高専から居なくなるのはその数週間後だった。
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