お誘い



「お疲れ様です」
「本当に1人で大丈夫?」
「はい!それにアパートこの近くですし知り合いが送ってってくれるみたいで…今日はありがとうございます」








飲み会もお開きになりぺこりと先輩に挨拶をする。先日の事件もあり私を1人で帰すのが心残りらしい。本当にいい人だ。
轟さんが一緒に帰ってくれるそうでお互いに落ち合う約束をしている。
先輩にもなんとか納得していただいて解散をする。さて、轟さんのところに行こうと思い携帯を取り出し連絡しようとすると。









「……」
「お、お疲れ様です」








私の目の前にはエンデヴァーさんがいる。
とりあえず挨拶をと思い今日はありがとうございましたとまたよろしくお願い致しますと挨拶を残し去ろうとする。






「…待て」








声をかけられる。思わずビクッと肩が揺れて恐る恐るエンデヴァーさんの方へと振り返る。








「……ショートを見なかったか」
「ま、まだ見ていません」








嘘はついていない。
エンデヴァーさんと目が合う。ふと腕組みをされている手を見ると何かにあったのか手首が腫れていた。







「……エンデヴァーさんそれ」
「?あぁ。飲み会に来る前にちょっとな」









屁でもないとエンデヴァーさんは言うが見てしまったからには放っておけない。
あまり自分の個性を使うのは安易にはしないが腫れているその手首は痛々しい。









「……少し貸してくださいね」










眉を顰めるエンデヴァーさん。
痛めた手首に触ると少しずつ治癒されてゆく。
私の個性はリカバリーガール程ではないが体の体内を活性化させる増幅系だ。
運動力も活性化させれば通常より何百倍にもなるし自己治癒力も活性化させればすぐに回復させてしまう。
しかし使えば後々活性化させた量や程度に対して自分に反動で倍の疲れや眠気が来てしまう。
幼い頃からヒーローには憧れはあったがデメリットが大きすぎて普通の人生を選んできたのが今の私だ。
今回みたいな怪我であれば少し眠気がくるくらいだろう。









「……ほう。なんの個性だ」
「うーん、体内を活性化させる個性、ですかね」
「ふん。面白い」







詳しく聞かれ個性の詳細を話すとエンデヴァーさんの目が鋭くなる。
話をしているうちに治った腕を見て礼を言うとエンデヴァーさんが言う。こちらこそ普段から平和を守ってくれてありがとうございますと言いたいくらいだ。













「……さっきショートと知り合いの素振りだったな」
「え、ええ…そう見えました?」










やはりプロヒーローは頭の回転も違うのかと嘆いた。










「……まぁいい。活性化、な。ショートが自立したら雇われに来い」
「え」
「ショートのサポート役も必要だろう」
「そ、そんな、私はただの一般人です…それに個性使ったあとのデメリットが酷くて…」



「……俺の誘いを断るのか」

「わ、わかりましたよ!考えさせてください!」













この展開に驚きぐらつきそうになる。
本当に私はただの一般人だというのに。
そ、そうだ時間。
そう思い携帯を見ると轟さんからの着信メールが増えていることに気づき青くなる。











「も、申し訳ないですが先を急いでいますので…」
「?あぁ。さっきの話考えておいてくれ」
「は、はい」






ぺこりとお辞儀をすると前を見ないで歩いたせいだろう。誰かに当たってしまった。










「す、すみません!前を見ていなくて…」
「……なまえ?」









そ、その声はとはっとして確認すると声の主は轟さんだ。
私がエンデヴァーさんと一緒にいる状況を理解すると機嫌を損ねてしまったのかエンデヴァーさんを睨みつける。









「……親父」
「!!ショート!!」
「…また連絡する。行くぞなまえ」









まるで嫌なものから逃げるかのように私を引いてエンデヴァーさんから遠ざかってゆく。
いきなりのことにエンデヴァーさんも後ろからショートぉぉお!!と叫んでいるが轟さんは反応もせず走り去る。
轟さんに繋がれている手が熱い。暫く走りエンデヴァーさんから離れたのを確認すると立ち止まり私に問いかける。













「…親父と何か話してたか」
「と、特には…」
「……本当か?」









ピクっと反応した轟さんは私と目線を合わせる。
真っ直ぐ見つめられるその瞳から目を逸らせれない。









「ええと、仕事の勧誘、ですかね」
「??仕事か」
「…まだ具体的には言えないですが」








苦笑するとこれ以上聞くのをやめようと轟さんも察してくれたようだ。
帰宅途中なのに気づき再び轟さんに手を繋がれ引かれる。










「と、轟さん。手…」
「?だめか」
「まだ皆さん近くにいると思いますし誰かに見られたら…」











きっと誤解が生まれてただでは済まされないのではと嫌な想像をしてしまう。








「誰かに見られたらどうなるんだ」
「か、勘違いされてしまうのでは…」
「勘違いか?」







今日の飲み会で再認識をした。轟さんはプロヒーローで世間が注目をしている存在だ。そんな人が私と一緒にいて評判をさげていいわけがないんだ。リスクは避けた方がいい。







「ま、マスコミの目とかあるかもだし…」
「…俺はなまえとなら騒動になっても構わないと思っている」









その声は真剣だった。歩いていて表情が見えないけど轟さんには私は嫌な存在じゃないことだけは伝わった。








「…なまえ」
「は、い」
「次の休みいつだ」
「次…明後日の土曜日ですかね」
「一緒か…その日予定を空けておいてくれ」
「??」

「……一緒に出掛けよう」











轟さんからの言葉に間抜けな声が出てしまう。
今なんと言ったんだろう?お出かけ?







「…前に言ってただろ。この辺ショッピングモールとかあるって」









確かに轟さんと出会った当初言ってはいたがまさか2人で行けることになるとは。
これはデートということになってしまうのだろうか。










「…嫌か」
「!!そんなことないです。私も轟さんと行ってみたかったんです」
「…そうか」








よかったと聞こえる声に轟さんがほっとしたのがわかる。
どきどきと私達はお互いのアパートに着くまで私達は手を握っていた。

















《お誘い》








「また連絡する」
「はい」
「…不安なら当日 変装して行くから安心しろ」
「へ、変装?」
「…帽子とか眼鏡とかで顔隠す」
「(轟さんの眼鏡姿見てみたいかも)」