「悪ぃ。待たせた」
突然のお誘いからあっという間に時が過ぎ轟さんとのお出かけの日になった。
前日になってから事務所に顔を出すから少し遅れるとメールが入り待ち合わせを駅前にして待っていたところだ。
「大丈夫ですよ。私もさっき来たばかりですから」
本当はどきどきしながらも早く来ていたとは轟さんには言えない。
服装もいつもより気合が入ってるだなんて思われないように清楚に着こなしてきた。…こんなのまるで男女が行うデートだ。デートと言うワードに悩んだ私はお出かけをするんだと自分に言い聞かせて来たのだ。
「……」
「轟さん?」
じーっと轟さんから視線を感じて首を傾げると照れくさそうに視線を逸らす轟さん。
「…似合ってる」
聞こえた一言に不覚にもときめいてしまう。そういう轟さんこそバレないようにと眼鏡と帽子を被っているがまた普段かけていない眼鏡にもかっこいいと思えてしまう。
そんな考え事をしていると轟さんの手が私を掴んだのがわかり固まってしまう。
「…だめだったか?」
「い、いえ!そんな」
「そうか。じゃあ行くか」
ぎゅっと繋がれた手にまたしてもどきどきが止まらない。静まれと自分に言い聞かせる。バレないように少し深呼吸をして轟さんと一緒にショッピングモールの中へと向かった。
*
「轟さん!これ被ってみてください」
「……?これでいいか」
そう嫌がらずに被ったのはうさみみの帽子。また素直に受け入れてしまう轟さんに笑みが出てしまう。
笑っているとむすっとした轟さんが私の頭に帽子を被せてくる。…ねこみみの。
「っふ、なまえも似合ってるぞ」
「わ、私はいいんです!」
つい顔が赤くなってしまう。やられたと思いつつすぐに帽子をとって赤くなった顔を帽子で隠す。
「?どうした。顔が見えねェ」
腕を掴まれたと思いきや隠してた帽子を剥がされぐいっと顔を近づける轟さん。
「っ、ち、近いです!」
顔を逸らせばまたもや轟さんが顔を近づけ私を逃がさない。
「なんで逃げんだ」
わざとじゃないのに轟さんにとっては嫌なことだったらしい。ムスッとした表情で私に詰め寄る。それでも近い。最近の轟さんは距離感がとても近い気がする。
「轟さん、ここ外なのであまり近いと目立ちます…」
「?外じゃなければいいのか」
きょとんとする轟さんに天然なんだなと私の中で轟さんが天然認定される。
そういうことじゃない…!と内心ツッコミをいれてしまうがそんな反論もできるわけでもなく…とりあえず今はこの場を離れよう。
「轟さんあっち行きましょ」
「っ、あぁ」
私から手を繋げば顔を赤くさせる轟さん。
不思議と嫌な気持ちではなく普段から見せる轟さんの表情とは違う表情が今日はたくさん見れていることにドキドキしてしまう。
「あ、轟くん!」
呼ばれた方向に私轟さんがぴたっと止まり振り返る。テレビで見た事がある。あれはウラビティさん…?
「麗日。今日は1人か?」
「いやー、デクくんとはぐれちゃって」
「…うまくいくといいな」
「っな!もー、そんなんじゃないってー!!」
仲のいい友達なのか咄嗟に轟さんの手を離して1人でもやもやしてしまう。
なんだろうこの気持ち。手を離した私に気づいた轟さんはまた私の手を繋いで話を続けている。気にかけてくれているんだと気づいた時には私のもやもやなんてなくなっていってしまった。
「…もしかしてなまえさん?」
「へ」
「やっぱり!轟くんから話聞いてて…高校からの同級生の麗日お茶子です。めっちゃ可愛い子やん!轟くん!」
にこっと笑う麗日さんについ可愛いと思ってしまう。
「……」
「よかったらお友達になってくれへん?」
「わっ、私でよければ!」
「じゃあ、連絡先交換しよ!」
「……そうだな。なまえは可愛い」
携帯を取りだし麗日さんと連絡先交換をしようとした横で轟さんからワンテンポ遅れた会話が聞こえすぐに赤面する私。本当に心臓に悪い。
「っふ、なまえちゃん愛されてるね」
「なっ!」
「??どうしたなまえ」
「っ、なんでもないです!」
「(轟くんの天然がすごい…)
あ、今送ったのが私の連絡先!よろしくね。あと敬語使わんくて大丈夫だから!」
「う、うん。よろしくね麗日さん」
「お茶子でいいよ、なまえちゃん」
「ふふ、わかった。お茶子ちゃん」
笑みを零すとがばっと抱きつくお茶子ちゃん。その隣にいる轟さんは断じて手を離そうとしない。
「本当に可愛いなあ!!」
「ふふ、お茶子ちゃんのが可愛いよ」
「もー!!」
「……麗日」
「あ、ごめんね。デートの邪魔して…あ、デクくんから連絡入った。私もう行くね!」
「またね、お茶子ちゃん」
「またね、なまえちゃん!轟くん!」
ごゆっくりと申し訳なさそうに行くお茶子を見送ったと思いきや早速携帯のバイブ音がなり見ると『楽しんでね。また今度ゆっくりお話したい!』とお茶子ちゃんからメールが入る。思わず笑みが出ていると。
「……名前」
「??」
「……俺のことは名前で呼んでくれねぇのか」
少し寂しげに言う轟さん。
「っ、どうしたんです、急に」
「…麗日には名前で敬語じゃなかった。俺にはそうしてくれないのか」
何を言うかと思いきや轟さんにはその違いが不満だったらしい。だが、出会った時からずっと敬語と轟さんで定着してきているためいきなりは早々無理だと頭の中で葛藤する。
「だ、だって轟さんは轟さんですよ」
「……俺も焦凍がいい」
「っ、い、いきなりは無理です」
「……呼んでくれねぇのか?」
まるで捨てられた子犬みたいにしょんぼりする轟さんに心が痛む。
「………さん」
「??」
「しょ、焦凍さん!」
今の私の顔は絶対真っ赤だと思うくらいに顔が熱を帯びている。
黙り込んでいる轟さんを見ると今すぐこの場から逃げ出したくなる。
「……やべーな」
顔を赤くして目をそらす轟さん。そんな仕草ですらなぜか胸が高鳴る。
その瞬間あぁ私もう轟さんのことが…と恋に落ちていることに気づく。繋がれてる手がぎゅっと轟さんに握られて私達2人は暫くお互い赤面していた。
《特別な感情》