※轟視点
「轟くん最近何かいい事でもあった?」
「あー!!それ私も思ってたんよ!なんか雰囲気違くなったっていうか…」
事務所で働いているとは言えこうやって時間が合えば高校からの付き合いの緑谷と麗日と一緒に昼飯を食べる時が多い。
…雰囲気が違う、か。
「いいこと……あったな」
「ええ?!」
「や、やっぱり…!!」
「それって恋の話?!」
「鯉…?」
「「違う」」
それじゃあ何のこいだ。俺にはよくわからない話だった。
「それって女の子…?」
「そうなん?そうなん??」
「…そうだ」
「きゃーっ!!」
「う、麗日さん落ち着いて…!」
「と、轟くんはその子とはどうゆー関係なん?!」
「どんな…俺の隣の部屋にいる奴だ。最近夜ご飯作ってもらってる」
「なんそれ、もうカレカノやん…」
「かれ…?」
「も、もういいから!麗日さん…!!」
「っは!!つい……」
ごめんね轟くん。と緑谷と麗日は言う。
正直なんの話をしてたかわからねぇから何に謝ってるのかわからないのが心情だ。
「あ、そうそう。最近この辺り、女性を狙った犯行が多いみたいなんだ。轟くんが住んでるアパート付近も目撃情報入ってるみたい」
「なんだか物騒だよね。そのお隣さんも事件に巻き込まれないように注意を呼びかけなきゃだね、轟くん」
「……あぁ」
確かに俺の事務所にも情報が回ってきている。嫌がる女性を切りつけ快楽を得ているという変な輩の話だ。
俺も今日その話を聞いたばかりだった。
「今日は早めに仕事切り上げてなまえに呼びかける」
「……(なまえさんって言うんだ)」
「うん。その方がいいかもね。僕達も見回り強化していくよ」
「あぁ」
「私も。同じ女として許せないよ!
轟くんも融通きくうちにそのお隣さんの所に行ってあげなきゃ」
「……そうだな」
そう会話をしていると緑谷が俺を観察しているのか視線を感じる。
「轟くんよっぽどその子のこと気に入ってるんだね」
俺がなまえを…?
「いいわぁ。轟くんにもついに春がきたんやねぇ…」
「?そうなのか」
「まぁ少しずつわかってくと思うよ」
緑谷はそう言うがなまえを気に入ってるといえば答えはいえすになるのだろうか。難しいな。
「さーて!そろそろ戻って午後の勤務せんと!」
麗日の声を機に昼飯を食べ終わった俺達は各々解散をし午後の勤務へと戻る。
女性を狙った犯行か…嫌な予感を拭いきれないまま俺は仕事を終わらせに向った。
*
「…終わった」
ようやく勤務が終わる。時間としてはそれでも20時近くだ。
とりあえずなまえに連絡をと思い電話をかけてみるが繋がらない。
先程からの不安が頭をよぎる。俺はいてもいられずその場から去る。
その間にも携帯を片手に電話を鳴らすがなまえはでない。
なんでこんなに自分が焦ってるのかもわからねぇ。それでも今はあいつの姿を見つけて安心したかった。
暫くすると人影が見える。自分が住むアパートへと向かっている。
…なまえか?
ほっとした瞬間その影はいきなり消える。
どうしたと思い俺はすぐに緑谷達と話していた会話を思い出した「女性を狙った犯行が多い」と。例の快楽犯だろうか。
相手を刺激させないように少しずつ近づく。
“あ〜大人しくしてね、興奮すると刺しちゃうから”
ほんの少しだけ聞こえた会話だ。なまえなのかもわからない。だが本当にあの快楽犯であれば俺は見過ごす訳にはいかない。俺は片手にあった携帯で事務所へと連絡を送りすぐに左の氷結を用意し相手の背後へと移動させる。ーー…隙なんてつくらせねぇ。
すぐ様相手の足元凍らせ相手の自由を奪う。
それに気づいた女は俺に気づき振り向く。その姿はやはり。
「なまえ」
「な、いつの間に?!」
「と、轟さん…」
震えた声で俺を呼ぶなまえ。
それを見て腹が煮えくり返る思いだ。
「っ…待ってろすぐに助ける」
なまえは犯人が怯んだことに気がついたのかその腕から抜け出す。
……これで巻き込まなくて済む。
俺はその隙を逃さず畳み掛け近づき相手が持っていた刃物をとりあげた。
犯行に及んだ奴は突然のことに驚いたのか気を失っている。
時期にここにも事務所の奴らもくるだろう。そう確信を得てなまえの元へとすぐ様向かう。普段中々取り乱さないのになまえのことで頭はいっぱいだ。
なまえの姿を見つけては咄嗟になまえを抱きしめた。
「と、轟さ、ん」
「怪我はないか?!」
「だ、大丈夫です。轟さんが来てくれたから…あ、あれ、おかしいな。なんで私泣いて、」
緊張の糸が切れたのか泣き始めるなまえ。
それと同時に怖がらせてしまった自分への不甲斐なさで胸がいっぱいになる。
「どうした、どこか痛むか?」
「轟さん」
「??あぁ」
「ありがとうございます」
俺の予想など違くてなまえは笑顔で俺に礼を言った。
怖くて仕方がないはずなのに。
こんな状況でも俺は何か特別な感情に囚われ胸が締め付けられる。
こんなのは初めてだ。今はただ泣いているなまえを抱きしめた。
《不思議な感情》
なまえを守れるくらいに今よりもっと強くなろうと思った。