それは突然で




ブーブーッ











携帯のバイブ音が鳴る。私はすかさず携帯を確認すると相手は轟さん。
ここ最近毎日のやり取りでお昼の休憩になると『今日の夜行ってもいいか』とメールがくる。
メールが来てから仕事終わりには私の部屋で一緒に夕飯を食べているのが日課になりつつある。今となってはこのやり取りも楽しみの一つだ。












「なまえちゃん最近いいことあった?」
「そ、そう見えます?」









休憩室で休んでいると上司でもある先輩がにやにやとしている姿が見える。









「いやぁ、若いっていいね。青春の香りがする」
「あはは、そんなんじゃないですよ」










誤魔化し笑いをする。それに私と轟さんはただのご飯仲間(?)なのだから。











「あ、そうそう。ここ最近女の子を狙った犯行が多いらしくてね。相手は刃物を持って女の子切りつけて快楽を得てる変態みたいだけど……なまえちゃんも夜道には気をつけて帰ってね」
「…物騒ですね」









不審者とはまた轟さんも忙しくなってるのかな。
そんな心配をしながらも今日は真っ直ぐ家に帰ろうと決心をした。

後に被害にもあろうとも知らず。


























「さて、と」










勤務が終わりすぐに家に帰るために外へ。
あんな話を聞いたら誰だって警戒をしてしまう。少し早歩きでアパートへと向かう。
今日は肉じゃがにするかぶり大根にしようかなぁ…。


そう考えている最中だった。
いきなり誰かに口元を抑えられ路地裏に引きずり込まれる。










「あ〜大人しくしてね、興奮すると刺しちゃうから」








後ろからは男の人の声がする。私は恐怖からなのか振り向けない。
ただわかるのは顔の横に刃物がすぐ近くにあるということだけだ。少し動けば容赦なくやると言うふうに見受けられる。
話には聞いていたがこの人が例の快楽犯だろうか。












「あぁ…いいね、その顔。もっと見せてくれよ」










男は楽しむかのように私の喉元に刃物を近づける。
……あぁ、終わったな。
せめて最後に轟さんに会いたかった。

私は覚悟をして目を固く瞑った時だった。









「……なまえ」
「な、いつの間に?!」










私を呼ぶ声がする。この声は確かに。

















「と、轟さん…」










ついさっき彼に会いたいと思っていたのにその人が私の目の前にいる。
目を見開き私を確認した轟さんの表情は険しくなる。














「っ…待ってろすぐに助ける」









轟さんの登場により犯人の足場は身動きが取れないようになり突然のことに驚いたのか怯んだ所で私は咄嗟に犯人の腕から抜け出す。
なるべく轟さんの邪魔にならないように遠くへ。

それを見た轟さんはたちまち犯人の身動きを氷結させ刃物を取り上げる。
そんな当の本人である犯人を見てみると…気を失っている。



「なまえ!!」









轟さんは事を終えたことを確認しすぐに私の元へと駆け寄って轟さんの腕の中に抱きしめられる。
驚いてしまうが今はそれがとても心地良い。



















「と、轟さ、ん」
「怪我はないか?!」

「だ、大丈夫です。轟さんが来てくれたから…あ、あれ、おかしいな。なんで私泣いて、」







なんでこんなところに轟さんが。轟さんは怪我をしてないだろうか。私生きてるんだ…色んな感情が込み上げてくる。そんなぐちゃぐちゃな感情で涙がこぼれる。









初めて轟さんの前で泣いてしまった。轟さんはどこか痛いところはないかと心配をしてくれる。
だめだ、これでは困らせてしまう。
色んな思いが渦巻いているけども私は彼に笑顔で言わなきゃいけないことがある。














「轟さん」

「??あぁ」







「ありがとうございます」











轟さんは優しくあぁと返事をしてくれると私を抱きしめる力が少し強くなる。
プロヒーローのすごさを改めて感じた。














《それは突然で》



「時期に事務所の奴らもくるだろ。今日はこのまま送る」
「だ、大丈夫で「大丈夫じゃねーだろ」……はい」