あの後すぐに轟さんの事務所の方達が駆けつけ犯人は無事に捕まった。
そして私は警察に軽く事情聴取をされその間にも轟さんは近くにいてくれて私の終わりを待っていてくれた。
「……行くぞ」
そう言われ歩こうと思って後をついて行こうとしたらなぜか轟さんに手を握られて歩いている。
「と、轟さん…?」
「なんだ」
「あ、あの、手…」
「……今日は我慢してくれ」
そう言われるが私の心臓がうるさくなる。手からどきどきが伝わってしまうんじゃないのか。ふと轟さんを見てみるが轟さんは特に動じた様子はない。
きっと先程の起きた事があったから、なのではないのか。それでも意識してしまう自分が情けない。
というか、まさか轟さん怒っている…?心做しか表情が険しい。
そして一言も喋ってはくれない彼に対してお互いが帰る場所であるアパートへの道のりが近づく度に沈黙に耐えれなくなる。
「…轟さん」
「……」
やっぱり返事はしてくれない。それがひどく私の心に刺さる。
そんな気持ちなどお構いなしにすぐにアパートへと着き各々の部屋の前に着く。
が、轟さんは一向に私の手を離さない。
「と、轟さん」
「……」
「…少し話しませんか」
「……あぁ」
私の部屋で。と思っていたのに手を引かれた先はまさかの轟さんの部屋。
ええ?!ま、待って。
予想外なことに私は轟さんの部屋に手を引かれる。
そして入ると同時に轟さんは玄関先で私を力強く抱きしめる。
「と、轟さん、くるしい」
「……んで」
「??轟さ」
「なんで助けを呼ばなかった」
「……」
「あの時なまえを見つけた時腹が煮えくり返りそうになった。相手にもそれを阻止できなかった自分にも。俺はヒーローなのに」
あぁ、そっか私心配かけさせちゃったんだ。
轟さんは私を抱きしめる力が強くなる。ひしひしと轟さんの思いが伝わってくる。
「もしあの時俺が間に合わなかったらって考えると怖くてたまらなかった…俺はお前を失いたくなかった」
轟さんが震えてる。私はそんな轟さんに応えるように抱きしめ返す。
「……ごめんなさい」
「…電話も連絡とったけどでなかった」
「え、ええ?!うそ」
「おかしいと思ってすぐにアパート沿いに行ってみたら人影がひかれる姿をみた」
そ、そこまで見てたんだ…そりゃびっくりするよね、心が痛い。
「轟さん心配させてごめんなさい」
「……」
「それに私も同じこと考えてました。
もしこのまま轟さんに会えなくなったらと思ったら怖かったです。そしたら轟さんが助けにきてくれて…轟さんは私にとってヒーローです。
だから、轟さん。ありがとうございます」
私も轟さんに応えるように抱きしめる。
轟さんの顔は未だ見えないその状態からどれくらい経ったのだろうか。暫く私達は抱きしめ合っていた。
「轟さんまだ怒っています…?」
「…いや、もういい」
じゃあ。と思って彼から離れようとするとなぜか離してくれない轟さん。
「轟さん?」
「悪ィ。離したくない」
彼はそう言うと身動きする私を離す気配はない。
ふと轟さんの胸元に耳をあててしまうと轟さんの鼓動が聞こえる。
「…轟さんの心臓の音早いですね」
そう言ってみると轟さんの鼓動はもっと早くなる。
不思議と私には心地良い音だ。
聞いてる私に気づくとようやく轟さんは私に顔を見せてくれる。気のせいか彼の顔色が少し赤い気がする。
「…なまえ」
「っ、と、轟さ」
ほんの少し近づく轟さんの顔が。
これは何かがおかしい、待ってと言わないばかりに轟さんから顔を逸らしてしまう。
「そ、そうだ。お腹すきません?」
「…」
「今日はもう遅いし昨日の残りになっちゃいますけどタッパーに入れてきますね」
恥ずかしいくらいに赤くなった顔を轟さんから離れて部屋から出る。轟さんも我に返ったのか私を部屋から出してくれた。やけに心臓の音も顔に集まったこの熱も私はどうしたらいいのかわからず深呼吸をした。
《制御不能》
「(どうしてこんなになまえを愛しいと感じるんだ)
自分が自分じゃねーみたいだ。
抑えれなかった…俺は何を」