02

「ね、ねぇ、緑谷くん」
「なぁに、雪ちゃん」
「いきなりこれはハードル高いっていうか…」
「あぁ。そう?付き合ったら恋人繋ぎくらいするよ」
「そう、なんだ」



行きつけのカフェから出ると早々に緑谷からの提案で手を握ることになった雪達。
握られた手は世でいう恋人繋ぎというものだ。全く異性への免疫がない雪はその繋ぎ方ですらこそばゆくて少し変な気持ちだ。それより緑谷からの思わぬ提案と展開に戸惑いをみせている。




「緑谷くん」
「んー?」
「…これ、好きな子に見られたらまずくない?」
「……」




そんなわけがないと心の中で思う緑谷。また彼も雪に好意を寄せている男性の1人だ。雪の話をいいことに普段踏み切れていない思いをアタックに変えようと始めたばかりのところなのに。まだまだ先は長そうだと緑谷も心の中で項垂れる。




「…大丈夫だよ」
「そうかなぁ」
「……その子少し鈍いから」
「へぇ、緑谷くんも大変だね」
「……かなり鈍いと思う」


寧ろこの状況になっても何も疑いのない雪にとことん異性としての意識がないものだと思い知らされる。
当の本人はなぜ鈍いんだろうと他人事のようにものを言う。
ーーまずは意識してもらうところからが先か。



「!!こっち」



人目がつかないように一方通行の道を選んで歩いていると車が後ろからやってくる。もちろん雪も車の存在には気づいてはいなく気づいた緑谷は雪を引き寄せる。必然的に緑谷の胸に寄せられ距離が近づいた雪は更にパニックになる。





「わっ、あ、ありがとう」
「大丈夫だよ。……雪ちゃん顔真っ赤」
「えっ、そ、そう?」


緑谷から顔を逸らす雪を見ては隠しきれていない赤くなっている耳が見える。それですら自分がさせた顔だと思うと歯止めが聞かなくなりそうになる。



「…照れてるの?雪ちゃん」
「そ、そりゃあ距離が近いとびっくりしちゃうよ!」
「……可愛い」
「……へ」


ぼんっと顔を見上げて思わず驚いた拍子に緑谷に顔を見せてしまう。
ーーその顔はずるいって…。
普段から言われ慣れていない言葉に雪もまた恥ずかしくて仕方ない。




「……行こっか」




思わず手が出そうになる緑谷だったが雪には嫌われたくない。その一心で己の欲望を抑え込む。邪念を振り払うかのように雪の手を引いて再び歩き始めた。