03

「緑谷くん時間本当に大丈夫?」
「大丈夫。それに女の子一人で帰せれないよ」
「ふふ、そんな扱いしてくれるの緑谷くんくらいだよ」




真っ直ぐ帰路に向かうはずだったが途中迷子の子供がいたり重い荷物を持ったご老人がいたりとそれを見て気づいては見過ごせるわけでもなく次々と解決してゆく2人。夕方には解散の予定だったが日も落ちてきて夜空が出てきてしまったところだ。




「相変わらずだね、私たち」
「あはは、そうだね。でも見過ごせなくて……ごめんね時間延びちゃって…」
「ううん、困っている人を助けてこそのヒーローだよ!」
「…うん。そうだよね、ありがとう」



当たり前だと言う言葉に申し訳ない気持ちが晴れてゆく。雄英の頃もよく雪には助けられては助けることは当たり前だと言い張る彼女にはいつも助けられた。
ーーだから僕は君のそういうところが好きなんだ。



「あ!緑谷くん」
「ん?」
「そういえばこの前借りてた本読み終わったんだよ」
「ほ、本当に?あれ、結構分厚かったよ?」
「なんか面白くて読み終わっちゃった。緑谷くんのお勧めだったしね」
「そうかな?気に入ってもらえてよかった」




本と言えば以前オールマイトが出版した本を雪に貸していた本の事だ。オールマイト好きにはマニアックな話だけあって本当に分厚い。それを読んでしまったとはオールマイトのファンの1人としては嬉しいことだ。
感動をしているとぴたりと雪の足が止まる。感傷に浸り少し意識が逸れていた緑谷はようやく雪の会話が聞こえてくる。



「……それでさ、よかったら渡すついでに中に入ってかない?疲れたと思うしお茶入れるよ」


「……え」




ここに来て緑谷へのひとつの試練が始まりそうだ。