一條くんの本性 03
「広いとは言えないけど、ゆっくりしてくれると嬉しいな。」

どうぞと案内されて蒼生の部屋の中に入るとそこは至って普通の部屋だった。
部屋の真ん中にテーブルと椅子が置かれ、その近くにテレビ。壁際にはベットが置かれている。
俺の部屋とほぼ同じようなものがあることに安心し、ほっと息をつく。

「あ、飲み物取ってくるから適当に座ってて」

蒼生はそう言い残し、リビングへと消えていった。
蒼生が部屋を出たことを確認すると俺はベットへと向かう。

ベタかもしれないけれど、エロ本探しだ。
あの蒼生がエロ本を読むのかは気になる。
みんなから愛され、エロとは真逆とも言える存在の蒼生。やっぱり純粋なんだろうか…
ベットの下はなし、か…
だとしたら本棚の隙間?

「何してるの?気になる本でもあった?」

ジュースとお菓子をトレーにのせて持ってきた蒼生は、本棚の本に手をのばしかけたところで固まる俺を不思議そうに見つめる。

「あ、その…この本家に無い本だったから」
「この本?読み終わってるから貸してあげようか?」
「えっ、あ、いや大丈夫。」
「ふふ、圭太くん慌てすぎ。
どうせエロ本どこかなーって探してたんでしょ?」

ほんとにみんなそういうの好きだよね、と困ったように笑う蒼生。

「ちなみに僕はケータイで見る派だから本はないよ」
「えっ!?蒼生もそういうの見んの?」

てっきり、そういうものには興味がなく、知識も浅いと思っていた。

「そりゃあ僕も男の子だからね。
それに、こうして圭太くんと付き合うってことはそういう事をシたいってことでしょ?」
 
トレーをテーブルの上に置き、未だ固まる俺の手首を掴んでぐっと自分の方に引き寄せる蒼生は、普段の愛らしい笑みではなく艷やかで挑発するような笑みを浮かべている。

「圭太くん、まさか自分が上だなんて思ってないよね?…僕、バリタチだから」

耳元で低く囁く蒼生。
それはもう、俺の知っている蒼生ではなかった。

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