一條くんの本性 04
頭の中で俺の中の“蒼生”が崩れ去っていく。
愛らしくて、純粋で…ピュアで天使の蒼生。
しかし、目の前の蒼生はそんな様子は欠片もなく、挑発的な目でじっとこちらを見ている。

「その驚いた顔最高だよ、圭太くん。」

恍惚とした表情で見つめる蒼生はさほど力を入れていないというのに、俺は何故か動けないでいた。ただ固まって蒼生を見つめることしかできない。

「圭太くんみたいな人、本当にタイプなんだ。表情がコロコロ変わって分かりやすい。」

ふふ、と笑う蒼生はもはや別人の域だ。
いつもの愛らしい表情は何処へやら、意地の悪い笑みを浮かべている。そのまま空いていた片方の手を俺の頬に添えて顔を近付ける。
反射的に後退ろうとするが、添えられている手に捕らえられてしまったかのように動くことができない。目の前の現実に頭の中の処理が追いつかないのだ。

「…僕のこと、嫌い?」

上目遣いで尋ねる蒼生。 
しかし、その目は“嫌いとは言われない”という自信に満ちているように見える。

「…嫌いじゃない。」
「よかった。…だって、圭太くんは僕のこと大好きなんだもんね?」

うん、と頷かないといけない雰囲気に飲まれ、コクリと首を縦に振った。
それをみて満足そうに微笑む蒼生。

「あ。そうそう、まだ趣味のこと言ってなかったね…」
 
思い出した、という様に呟くと、蒼生は掴んでいた俺の腕をグッと引いて壁に押し付けた。身長差や体格差では俺の方が有利なはずなのに、一瞬の出来事で上手く反応できず背中を壁に強打する。

「うっ…」

思わずうめき声を漏らすが、蒼生は心配することもなく、笑みを深めるだけだった。
そして、逃げられないように俺の脚の間に自身の膝を割り込ませると、じわじわとその膝を上へ上げていく。

「あ、おい…?」

このままだと確実にまずい場所に直撃してしまう。やばい、と直感で悟った俺は身をよじった。

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