沖田さんはわざとらしく耳に指を突っ込んで、うるさいとポーズをする。冷静さを取り戻した銀時さんは、
「ほら」
と携帯を私の耳に当ててくれた。慌てて受け取り小さく呼吸をして呟く。
「神楽ちゃん、新八くん。
あの、本当にごめんなさい……」
電話越しでも2人が突然、私が出た事に戸惑っているのが分かる。
こんなに心配をかけて、迷惑をかけて。謝っても謝りきれない。でも、2人は、
『なまえ無事ならそれでいいアル! 』
『それだけで、僕らは嬉しいです』
安堵したような声色が、耳から伝わってくる。その優しさに、止めていた涙がまた溢れてくる。
すると、銀時さんが携帯電話を優しく私の指先からさらう。空いてる方の手で私の頭を慰めるように、ポンポンと撫でた。
「なまえタイムは終了でーす。
万事屋の社長にもそれくらい優しくしてくれるといいんだけど、お前ら。おーい、聞こえてんだろ。
テメーらナチュラルに無視すんなァァァ! 」
バチンと音がするほど激しく、銀時さんが自分の携帯電話を切る。と同時に、新井先生が姿を表した。
「おや、なんだか賑やかですね」
ニコニコしながら椅子に腰を掛けた。
新井先生に治療してくれたお礼を告げれば、困ったように微笑む。
「それは万事屋さんに言ってください。
夜遅くになまえさんを抱えてここまで来たんですから。血相変えてね」
「銀時さんがここまで……」
じゃあ、神社から連れ出してくれたのは神威さんだろうか。
…そうだ、あの後、瀕死状態で倒れていた天人に私は突然蹴られた。
そのまま倒れ、意識を失ったらしい。そして今に至る。
「なまえさんはモテモテですね。万事屋さんに真選組の方に」
いいなぁ、青春ですね。とわざとらしく先生が言うから、恐る恐る2人を見上げる。
色気も何もない私なんぞに、そんなことを言われて申し訳ない。
銀時さんはフッと顔を逸らして、沖田さんは口角を上げて悪い顔をしてた。
「躾して欲しいなら、いつでも俺に言いなせェ。相手にしてやらァ」
「えっ、躾って」
「おい、ドSは喋るな。なまえ忘れなさい。今すぐに」
この場にいるのはマズイと思ったらしい銀時さんは、沖田さんの肩を掴み、早口で私に別れを告げて病室を後にした。
呆気にとられた私に、先生は優しく問いかける。
「気分はどうですか?
私は身体を治療することが専門なので詳しくは聞きませんが、何があったんです? 」
まだ整理ができてない。どこからどこまでを話して良いかも分からない。
「突然、誰かに襲われて……でも助けてくれた人がいたので大丈夫だったんですけど、途中で気を失って……」
気づいたらベットの上だった。
そう話し、体に特に異常はないことを伝える。
「そうですか…怖かったでしょう。無事でなによりです。
明日はとりあえず、一通り検査しましょう。
明後日には退院できますからね。
でもなまえさん、もう1人で行動してはダメですよ。
夜の神社なんて誰が潜んでるか分かりませんからね」
普段怒ったりしない先生が、念を押すように私に言う。萎縮したら、いつもの穏やかな顔に戻り、
「ならさら、あなたは女の子なんですからね」
そう言い残して部屋を出ていった。
先生にまで心配をかけて、私はなにをしてるんだろう。
自分の不甲斐なさを感じながら、静かに私は目を閉じた。