2. 傷



「おかえり、なまえ」
「なまえ姉、ありがとう! 」



 ひのやに帰るなり、出迎えてくれたのは日輪さんと晴太くん。



「遅くなってすみません」



 銀時さんに会ったことを伝えると、どうやら日輪さんが銀時さんたちを吉原ここに呼んだらしい。



「言っておきたい事があってね。あの人たちは吉原の救世主だからさ」



 そう呟いた日輪さんは、買い物袋から食材をだしている晴太くんを愛おしそうに見つめた。




 あの日のことを思い返す。私の働いてるお店に月詠さんがやって来て、突然 "着物を貸してほしい" と切羽詰まった様子だった。
 その月詠さんの背後にいたのが、銀時さんと神楽ちゃん、新八くん。


 姉のように慕っている月詠さんが、私を信頼して来てくれた事が嬉しかった。どうにか彼女の力になりたかったが、私は月詠さん率いる百華のようには戦えない。
 遊女やお客さんをあの戦いから避難させ、怪我人の救護をすることしか出来なかったのだ。


 
 その時だ。あの鉛色の空が、激しい音を立てて開かれたのは。この瞬間を誰もが夢見ていた。
 もちろん、私も。





「こりゃ、驚いたな」


 あの日、路地裏に倒れていた男性。ひとりごとのように呟き、自嘲的に笑う。今まで手当てした中で一番酷い傷だった。


 淡い光が私たちにも差し込んでくる。男性は手当が終わると、



「悪いな、お嬢ちゃん」
「いえ……お気をつけて」



 そう言って暗い路地裏にまた迷い込んでいった。




"吉原の炎上"
"吉原の変"




 この騒動は数ヶ月だった今も、人々の間ではそう囁かれている



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