38. 隠された影 銀時side



 日輪の一件から2日ほど経った頃。
 ドンドンと建て付けの悪い玄関を、乱暴に叩く音がする。夢の中へ落としかけた意識を取り戻し、頭をガシガシとかく。


 誰か出てくれねェかなと期待を抱いて、ボーッと天井を眺めていれば、急かすようにさらに激しく叩かれる。
 あーそういや、神楽と新八は夕飯を買いに行ってたわ。



時計を見れば針は18時を示していた。
誰だよ、こんな時間に……




「あのー、万事屋は本日営業終了したんですよぉ。
俺ァ時間外労働とかしない主義だから、明日また来」

「銀さん‼ なまえ姉の姿がないんだよ! アパートにもさくら屋にも! 」




 断りの文句を言えば、そんなことお構いなしに腰にしがみついてきたのは晴太だ。勢いが良すぎて、危うく後ろに転びかける。



「は? なまえが何? てか、晴太。お前なんでここに」



 聞き間違いかと思い、しどろもどろになりながら、晴太を凝視する。本人は時間がないと焦った様子。その後ろから姿を現したのは、買い物から帰ってきた神楽と新八だ。




「晴太、何でここにいるネ」
「今、なまえさんがいないって……」




 俺たち3人は瞬時に顔を見合わせた。なまえに何があったんだ?


「いやいや、月詠にでも会ってんじゃねェの? 」


 すぐにあらゆる可能性を提示するが、晴太は首を横に振る。そんなのは、もう確かめたと言いたげだ。



「母ちゃんが怪我した日から俺、なまえ姉に会ってないんだ。あの日はなまえ姉、いつの間にか居なくなっちゃったし」



 そう。あの日。アイツはいつの間にか診療所からいなくなっていた。
 あとからなまえのアパートに行けば、具合が悪くなったから、休みたいと言われたので、それっきり会っていない。



「さっきさくら屋のおばちゃんが、なまえ姉が店に来なくて、連絡もつかないって」




 なまえが無断で仕事を休むなどあるはずない。俺でも分かる。じゃあ、なまえはどこに行っちまったんだ?
 今のアイツを1人にするのは危険すぎる。


 月詠でも日輪のトコでも、アパートでもさくら屋でもねェって事はアイツは間違いなく1人で行動してるだろう。




「絶対、見つけだす。だから、晴太おまえ母ちゃんのそばにいてやれ。俺も行くから」



 晴太を連れて飛び出せば、当たり前のように神楽も新八もついてくる。俺は大きくため息をついた。




「来るなっていう方が無理だよなァ……」

「こんな時に呑気に夕飯食べてられないネ。探し出して、なまえと一緒に食べるアル」

「事件に巻き込まれてないと良いんですけど……」





 降りしきる雨。なまえの姿を隠すかの様に濃くなる霧。
 それが余計に焦燥感を掻き立たせた。



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