50. 決心



「ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」



 深々と頭を下げれば、上からは軽快な笑い声が聞こえる。この場面に似合わない様子に恐る恐る顔を上げた。



「なまえに何もなきゃ、それだけでいいんだよ。
いつもなまえばっかりに頼ってる女たちも、
これに懲りて、少しは自分でやるようになるだろ? 」



 迷惑をかけたのに、女将さんは私を咎めない。無断欠勤したのに理由も聞かず、むしろ心配してくれる。その後ろから猛スピードで現れたのは、



「なまえのバカ! 心配させないでよ! 」



雅だった。彼女の方が安静にしてなきゃいけないのに、お構いなしに私を精一杯の力で抱きしめる。



「雅も、ごめんね。体は大丈夫? 」
「とっくに動けてるよ! 」



 怒ったように頬を引っ張ってくるけど、顔は涙でいっぱいだ。そんな雅の怒ったり、泣いたり、くるくる変わる表情につい笑みが溢れる。



「明日には退院できるんだろ? しばらくは休みな。店のことは心配しないで」



 そう言ってくれた女将さんの言葉に素直に頷くが、夢でみた二人がふいに頭をよぎる。
 違う、これが現実で、あれは夢。




「なまえ姉‼︎ 」
「なまえ」




 勢いよく晴太くんが病室に飛び込んでくる。鼻水を垂らしながら、私の腰に抱きついた。その後ろからは車椅子に乗った日輪さんと、それを押す月詠さん。



「じゃあね、なまえ」



 気を遣ってくれた女将さんと雅が部屋を出る。小さく振った手をそのまま晴太くんの頭に乗せた。
 聞けば、銀時さんの元へ最初に駆けつけたのは晴太くんだったらしい。こんな小さな子にも迷惑をかけた後ろめたさが相まって、日輪さんが見れない。晴太くんを夜に走り回せたのは私だ。




「日輪さん、月詠さん、晴太くん。本当にすみませんでした」




 何かを言われても仕方ない。受け止めよう。そう覚悟していたのに返ってきたのは、頭にのる優しい手のひら。



「月詠さん……」
「無事ならそれでいい」
「ここに戻ってきてくれたんだから、それだけでいいんだよ」





 どうして、こんなに優しく迎えてくれるんだろう。どうして、こんなにも温かい。




「なまえ‼︎ 」
「なまえさん‼︎ 」
「神楽ちゃん、新八くん……」





 息を切らしながら、銀時さんと共に2人が病室に入ってくる。私の顔を見るなり、新八くんは微笑み、神楽ちゃんはぎゅっと私に抱きついた。それだけで、2人がどんなに私を心配してくれたがわかる。
 ふいに銀時さんと目が合うと、そっと笑いかけてくれた。その微笑みがあまりにも優しくて、ついまた泣きそうになる。




「神楽ちゃん、新八くん……みんな……ありがとうございます」




 ごめんね、じゃない。私を心配してくれた、私を想っててくれた、そんなみんなに今はただ感謝の言葉を。


 後ろで壁に寄りかかっている銀時さんを見つめれば、昨日の言葉が甦る。




"あとはなまえがどうしたいか、だな"






どうしたい?





そう、私……私は……



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