
51. 調査 沖田side
「ここか……」
江戸も中心部から外れれば、どこにでもあるような田舎の風景になる。同じような家が並ぶその中に、目的の人物はいた。
「ちょいと、すいやせん」
声をかけると、男はゆっくりと振り向く。若くもないが、かといって年老いているわけでもない。いわゆる、お父さん世代と呼ばるような。
「何か? 」
「あんた、10年前の一夜で滅びた北の村の出身だろィ?
この娘に見覚えはありやすか? 」
男は畑を耕す手を止めて、疑うような警戒するような瞳で俺と写真を交互に見る。もちろん、旦那の撮ったストーカー風の写真ではなく、なまえちゃんの顔がハッキリと写ったもの。しばらく凝視した後、思い出したように小さく呟いた。
「なまえちゃん……? 」
同時に懐かしいものに触れたような表情と声色になる。
「この子がなにか? 」
突然尋ねてきた男が、知り合いの写真を持ってるのは不気味だし、疑問しかないだろう。隠す必要もない。自分の身分を明かし、あの一夜に何があったのか聞きたいと告げれば、複雑な表情になった。
「あれは、私たちにもよく分からないんだ。村人が何かに取り憑かれたように、隣人を襲い出して……
かと思ったら、今度は黒い服の男たちが一斉に村を制圧し始めたんだ。
悪夢のような日だったよ……」
聞けば、この男と彼女の両親は友人関係だったらしい。
その男の家の玄関に移し、出されたお茶をすする。思い出したくないことを、聞くのは悪いと思うが、こっちもなりふり構っていられない。
「この娘が誰かに恨まれる……なんてことありやすか? 」
「なまえちゃんが? 村の人に?
ないない。ここにいた時はまだ7つだよ? みんなに可愛がられてたよ」
だろうな。また空振りか。
にしても、一夜にして滅びた村。そんな大きな戦の記録が、ほとんど残っていないのはいささか疑問ではある。
何か大きな力が働いているのか?
「ほら、そこにある写真。なまえちゃんも写ってるだろ? 」
靴箱の上にある写真を男は指差す。
「数枚の写真しか残ってないけど、故郷を忘れたくないからね。飾ってるんだ」
祭りの時の写真だろうか。幼い浴衣姿の彼女はわたあめを持ち、両親と寄り添うように写っている。他に数名の村人の姿も確認できた。
「おい、コイツは」
俺は村人の1人を指差す。男は写真を覗き込み、少し考えたあと思い出したように手を叩いた。
「その子も村の出身だよ。
なまえちゃんの面倒をよく見てくれる子でね。右隣はその子の母親だ。
あの夜を堺に姿を消してしまったんだ。
……きっとあの戦に巻き込まれてしまったんだね」
その人物のあらゆる情報を隣に座る男に聞いた後、写真を手に取る。
「この写真借りてもいいですかィ? 」
早く旦那に知らせないと、とんでもない事が起こりそうな気がする。
珍しく俺は、早足で旦那の元へ向かうことにした。