
53. 危険な知らせ 銀時side
握りしめた携帯電話が、ミシッとイヤな音を立てた。
「クソッ! 」
「銀ちゃん! 」
神楽の声にも返事をする余裕もなく、勢いよく階段を駆けおりる。こんな時にバイクを修理に出してるなんて、最悪だ。
「どうしたアルか! その電話なまえからデショ? 」
「ワンッ! 」
すぐに後ろから、電話を握りしめて走る新八と、定春に乗った神楽が追いかけてきた。今は説明してる余裕もない。
「吉原に向かうぞ! 」
その言葉で何かを察したのか、2人は顔を見合わせる。新八は俺の隣に寄ってきて、携帯を差し出した。
「銀さん、月詠さんから電話です」
「銀ちゃんの電話が出ないから、新八のとこにかかってきたネ」
「あぁ? 月詠から? 何があったんだよ」
新八から電話を取り上げて、耳に当てる。何度か月詠を呼ぶと、焦ったようなアイツの声が聞こえてきた。それと、かすかに悲鳴のような声も。
『銀時か?! 乱闘じゃ! 町人同士の』
「あぁ?! そんなの、」
俺らが出る幕でもないだろ、と続けようとした。それより、なまえのことを話そうとしたが、落ち着いて聞け、とでも言うかのように月詠の声が一気に低くなる。
『前に話しただろ。神楽と同じ、夜兎の能力を引き出せる薬があると。
コイツら、おそらくアレを飲んでいる。
わっちらだけでは止められん! 早く来い! 』
それだけ告げられると、勢いよく通話が切れた。
「……なにがあったんだ、吉原で」
必死に走っていれば、見飽きた車が並走して来た。窓がゆっくりと下がり、黒い服に覆われた肘が出てくる。
「旦那ァ、そんな走ってどうしたんでさァ。ダイエットですかィ? 」
「沖田さん! 」
俺の代わりに新八がそいつの名前を呼ぶ。挑発するようなニヤニヤとした顔。こんな時に会いたくないヤツだ。
いや、待てよ…走る手間が省けるじゃねェか。
「ちょうどイイ。乗せろ」
「自ら乗ってくるなんて、ようやく罪を認めやしたかい?
なまえちゃんのストーカーである事を」
その言葉に青筋を立てるが、今はそんな事に構ってられない。一緒に乗り込んできた新八が行き先を告げる。
「吉原までお願いします! 」
「吉原? 」
その単語で急に顔つきが変わる。運転手に、行き先の変更を告げた。
「俺も行きやすぜ。ちょうど旦那に見て欲しいのがあるんでね」
そう言うと一枚の写真をヒラリと俺に渡す。
「……なまえ? 」
祭りのときの写真のようだ。子どもの頃のなまえとその隣には彼女によく似た男と女。おそらく両親だろう。
「わぁ〜。なまえさん可愛いですね」
横から新八が覗き込み、分かりきったことを言う。確かに可愛い。
いや、そうじゃねぇ。一緒に写ってるのは……
「聞きたくなりやした? 俺の話」
勝ち誇った顔で総一郎くんはニヤリと笑った。