
7. 銀時side
吉原に似つかわしくない奴だった。
「お兄さん、いい男だねぇ」
「ウチの店寄って行かない? 」
「サービスするからさぁ」
男を誘惑し、
生き残る為に嘘でさえ、
甘く囁く女たち。
その生き方が、悪いと思っている訳ではない。
しかし彼女は、
自分の為には嘘をつかないし、
甘い言葉も囁かない。
「銀時さん当たった! 」
「えっ」
そんな過去の記憶をさかのぼりながら、彼女の横顔をボーッと眺めていれば、パッと笑顔を向けられる。
手元をよくみると、なまえに到底似合わない銃(おもちゃだけど)を持っていた。景品台には仰向けに倒れたキャラメルの箱。
「すげぇじゃん」
「たまたまですよ。でもこれにして正解でした。どうぞ」
紙に包まれた小さなキャラメルが、コロリと手のひらに転がり、甘いの好きですよね、となまえは笑った。
「あぁ……さんきゅ」
曖昧な返事。そうした後にもっと上手く返せばよかったと恥ずかしくなる。
ダメなんだ
彼女を前にすると
調子が狂う
「あっ」
なまえが小さく声を上げた。視線をたどると俺、ではなくその後ろを見つめている。つられて俺も振り返ると、まだ幼い兄妹がいた。なまえの手にあるキャラメル箱を凝視している。彼女はフッと優しく微笑むと、同じ目線になるように膝を折る。
「どうぞ」
と言うとなまえは、先ほど懸命に狙い落としたキャラメル箱を丸ごと2人に差し出す。本人は食べてもいないのに。
「いいの?」
兄妹はパッと笑顔になり、彼女に礼を言うと走り去っていった。
「お人好しだな」
一部始終を眺めている俺は一言呟く。なまえは困ったように笑った。
「誰かの為になる事なら、何でもしたいんです」
なまえは、自分よりも他人を優先する奴だった。