|
忠義の話は、彼女と別れたという話だった。今回は長く続いた方かな。忠義はわりと速いペースで彼女が変わる。 「で、あかりの方はどうなん?」 なんて聞かれればまたこの間のことを思い出して苦笑いした。 わたしは、特に何もないよ。 「ふーん」 「この間、おったやろ?」と言う唐突な忠義の言葉に思わず戸惑った。 なんだ、わかってたの。 「あれやん、eightやん」とニヤつく忠義に「知ってるの?」と聞けば「俺好きやもん」となぜか自慢げな顔をした。 「まあ、がんばってや」なんて言って「俺も好きな人ほしいわ〜!」と大きな体で大きな声で大袈裟に嘆くから笑った。 # 忠義が夕方からバイトだから今日は早めにお開きにした。忠義と別れてから少し街を歩いて、だけどなんだか何にも気分が紛れなくて結局家に帰ってきた。 この後のバイトのことが気になってしょうがないのだ。 電気をつけてすぐにテレビのスイッチを入れた。料理でも作れば気が紛れるんだろうか。バッグを置いて、液晶に映し出された映像に思わず二度見した。『それでは歌っていただきましょう』なんて女性アナウンサーの声とともに映し出されたのが、まさに今私の頭を占領している彼だったからだ。…どうにも、わたしの意識を逃がしてはくれないらしい。無意識の内にソファーに座り込んでいたわたしは夢中でその演奏に見入っていた。 電波の向こうで豊かに歌うその人はわたしの焦がれる彼とは別人のようで、それでいて同じように胸を締め付けるから思わず眉間に皺が寄った。 この番組が生放送じゃなくてよかった。理由はわからないけどただそう思った。 短い演奏が終わって彼が力を抜く。画面が切り替わってわたしも肩をおろして、彼のその歌声に途中から息をするのを忘れていたことに気がついた。 外はまだ明るくて、こんな気持ちをあとどれだけ燻らせればいいのかと目を閉じた。 上着も脱がずにソファーの上で膝を抱える自分が、なんだか無性におかしかった。 苦しいのは、呼吸のせいだけじゃないって、わかっていた。 |