「プリンは、お好きですか」

突然の問いかけに驚いて顔を上げるとついこの間出会ったばかりの整った顔と目があった。

「あ、こんばんは」
「こんばんは。今日も可愛いですね。プリンはお好きですか」
「あ、はあ、」

なんだろう。すばるさんはプリンがお好きなんだろうか。彼の持ってきた商品の中には確かにプリンが一つ含まれていて。しかもちょっと高めの、おいしいやつだ。

「僕あまいものだめなんですよ」

あ、そうなんですか。じゃあ彼女さんへのお土産かなにかですか?一つずつバーコードを通しながら「そうなんですかあ」と軽めに相槌を打った。

「だから、これ、あげます」
「え、あ、はい?」
「せやから、あげます。あかりさんに、これ」

そっと手にプリンを握らされた。そのまま私の手を包み込んですばるさんははにかむ。

「あかりさんもきっと、このプリンみたいに甘いんやろなあ」
「…え?」
「あ、食べたらって話ですよ」
「たべ…」
「でもあかりさんならなんぼ甘くてもおいしく食べられる自信あります」
「ちょっとおっしゃってる意味がわからないんですけど…」
「どうですか今夜僕とプリンより甘い夜を…」

「お客さんうちの口説かんといてください」

突然裏から出てきた店長が私の手を包むすばるさんの手を掴んだ。三人揃って両手を包み合っている。なんだこの状況。

「おーヒナ!ちょうどよかった!あしたメシ行こうや!」

待ってましたと言わんばかりにすばるさんがパアッと笑顔になって私の手を離した。私の手には生暖かくなりはじめたプリンが残される。これ、どうしよう。私はそれをそっとすばるさんの買ったものが入った袋に入れ込んだ。スプーンは一本でいいかな。

「あかりさんもどうですか?」
「な、何がですか?」
「あした、夜あいてませんか?」
「あー…明日はちょっと用事が…」
「そ、そうか…それは残念やなあ。ほなまた次の機会に」

そう言ってすばるさんは袋をとった。「9時な」と店長に確認をしながらプリンとスプーンを取り出してレジに置き、最後にくしゃっとした笑顔を私に向けてから出て行った。
残されたプリンと見つめ合いながら呆気にとられる。
明日の夜に予定を入れた自分を心底恨んだ。





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もっと仲良くなりたいんだよ。
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ミガッテ