深夜のシフトが少しだけ苦じゃなくなった。いや、むしろ深夜勤が1番いいかもしれない。というか深夜のバイトは私の今の生きる楽しみになってしまってる、かもしれない。

「これお願いします」
「……」

その理由はそう、専らこの目の前にいるすばるさんのおかげなんだけど、

「なんですかその目は」
「いえ、なんでもないです。いつもありがとうございます」
「いやいや、あかりさんに会えるんやったらいくらでもなんでも買いますよ」
「…そうですね」
「ちょっと恥ずかしいですけどオカズだってここで買いますよ。夜ご飯も…そのあともやんけ、」

なんだろう、この人、なに照れてるんだろう。わざわざわたしのところまで成人向け雑誌持ってきて、何を照れてるんだろう。これ怒っていいのかな。楽しみにしてたのにな。いや楽しみにしてたのか?楽しみにしてたんだよ。すばるさんが来るの。

「あっちょっと待ってや!ほら!ストップ!
っは〜ええわあ〜エロ本もつ美人ってええんやな〜」
「あかり、そいつ殴ってええぞ」


私が言う前に村上店長の鉄拳が飛んだ。うわあ、今日の痛そう。


「もうちょい加減っちゅーもんを覚えてくれ!!」
「あほか!お前が毎回毎回よう飽きもせんとあかりにセクハラするからやろ!」
「セクハラちゃうわ!ちゃうやろあかり!なあ、ほら!あれや、スキンシップや!」
「なんもスキンは触れ合ってへんしどさくさ紛れて呼び捨てすんな!」


「なんやねんあれもあかんこれもあかんて!俺は客やぞ!常連さんやぞ!もうちょい優遇せえっちゅーに!」と店長に噛みつきそうな勢いで叫んだすばるさんが私の手から袋をぶんどった。セクシーな表紙がうっすら透けるビニールがすばるさんの手元で揺れる。
…今夜はあの人でお楽しみになる…んですね。なんか、やだわ。あ、でもそういうの買うってことは彼女とかいないってことなのかな。どうなんだろう。

「もう帰れや…なんで深夜にこない大声出さなあかんねん…」
「店長ため息つくと老けて見えますよ」
「お前…そこは幸せ逃げるとかにしといてくれや…」
「おまえ!あかりをオカズにしてへんだけええやろが!」
「もうその話終わったわ!」

どういうことだ。どういうことだろう。他の人で済まされるのもやだけど、かと言って自分で済ませてくれって言うのは絶対違う。うわなんだこれ複雑…

「ほれ見ろあかり引いてるやんけ」
「ちゃうやろ…これは納得いってへん顔や」
「たしかにお前の言動全て納得いかへんけどな」
「なんで私でヌいてくれへんの?他の女なんかでヌかんで!っちゅーことやん」
「ほんま帰れもうお前」

村上店長の締めの一発で渋谷さんは「言われんでも帰るわゴリラ!」とわざとらしく悪態づいて出て行った。なんだ、その、ろくに挨拶もできなかった。


「…で、そんな真っ赤なんはなんでやねん…なんて聞いたらへんからな」

呆れたように奥に入って行った店長の言葉に、もう穴があったら入りたかった。





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店長やめてください。
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ミガッテ