そして翌朝、タッカーの死体について再度検証する為、マスタングとホークアイは現場に向かう事になった。
マスタング達が不在になる為、名前は司令室に残る事になった。
ホークアイが現場へ向かおうと司令室を出た後に「エドワード君」という声が聞こえた。
名前は司令室から顔を出すと、ホークアイとエドが話しているのが見えた。
タッカーが何者かに殺された事を告げられると、現場に行きたいと申し出たが断られたようだ。そしてエドが帰ろうとしたところを名前は呼び止めた。
『エド』
「……名前」
『額に傷のある男には気を付けて。国家錬金術師を狙ってるの。だから今日も真っ直ぐ帰りなさい』
「……それは忠告か?」
『そうよ』
「ふーん」
エドは無愛想な返事をすると、トボトボと帰って行った。
名前はエドが見えなくなるのを確認すると司令室に入った。
皆が現場に向かってどのくらい経っただろうか。
名前は書類整理をしていて一息つこうと、ふと時計の針を見ると9時を回っていた。
『エド、ちゃんと帰ったかな』
物語では傷の男に見つかり、エドの腕、アルの身体がボロボロにされてしまう。名前の忠告通りにしていれば、そんな事にはならないはず。
でも最後に見た様子だと、帰っていないんだろうなぁと、名前は心の中で思っていた。
そしてしばらくすると、皆が帰って来た。皆の様子を見ると、どうやら物語通りになってしまったようだ。エドの機械鎧は無くなっており、アルの身体もボロボロになっていた。
もしもの時の為に、人数分のタオルと暖かいお茶を用意していたのを1人1人に配った。
「ありがとう。すまないね1人にさせて」
『いえ、おかげで書類整理がはかどりましたよ』
名前はマスタングにもタオルとお茶を渡した。マスタングは申し訳なさそうな顔をすると、名前はニコッと笑って答えた。
「むむ、これは名前殿。見ない間に更にたくましくなられましたな」
「よ!名前」
『あ!アームストロング少佐にヒューズ中佐、お久しぶりです!タオルとお茶どうぞ』
「む?2人とは知り合いか?」
名前が順番にタオルとお茶を配っていると、アームストロングとヒューズに声をかけられ、名前は思わず笑顔になった。
やり取りを見ていたマスタングは名前が2人と仲良かった事までは知らなかった。
『はい。以前は中央勤務でしたので、よくしていただいていました』
「大佐、そういやさっきの傷の男って?」
「ああ、そうだったな」
エドは名前とアームストロング、ヒューズが会話しているのを横目に、傷の男の話を切り出した。
そしてマスタングはイシュバール内乱のきっかけにより今に至る事を話した。
「私もその1人だ。だからイシュヴァールの生き残りであるあの男の復讐には正当性がある」
「くだらねぇ。関係ない人間も巻き込む復讐に正当性もくそもあるかよ。醜い復讐心を“神の代行人”ってオブラートに包んで崇高ぶってるだけだ」
「だがな、錬金術を忌み嫌う者がその錬金術をもって復讐しようってんだ。なりふりかまわん人間てのは1番やっかいで怖ぇぞ」
「なりふりかまってられないのはこっちも同じだ。我々もまた死ぬ訳にはいかないからな。次に会った時は問答無用で潰す」
「さて!辛気臭ぇ話はこれで終わりだ。あ、そうだ名前、オーズリー大佐から伝言だ。“連絡くらいしろ”だってよ」
『ええ、また?そこそこ連絡してると思うんだけどなぁ。過保護というか……てかいつまでも子供扱いしないで、って言っておいて下さい』
オーズリーから伝言を頼まれていたヒューズが名前に伝えると、名前は少し頬を膨らませながら言った。
「え?名前って何歳なんだ?」
子供扱いという単語に反応したハボックは何気なく聞いた。
『25歳ですけど』
「「「「「えええええ」」」」」
マスタングは勿論、アームストロング、ヒューズは知っていた。それ以外の人は皆ビックリしていた。
「マジかよ、オレより上かよ!!」
『は!?嘘でしょ!?ハボック少尉が年下!?』
「あら、名前ちゃん、同い年だわ」
『ええええ!でもリザさんはお姉さん的存在なので、今まで通りリザさんと呼ばせて下さい!』
名前の年齢で盛り上がっている中、ヒューズがエドに顔を向けた。
「で?エルリック兄弟はこれからどうする?」
「うん……アルの鎧を直してやりたいんだけど、オレこの腕じゃ術使えないしなぁ……」
「我輩が直してやろうか?」
「遠慮します」
「アルの鎧と魂の定着方法知ってんのはオレだけだから……まずはオレの腕を元に戻さないと」
「そうよねぇ……錬金術の使えないエドワード君なんて……」
「ただの口の悪いガキっすね」
「くそ生意気な豆だ」
「無能だな無能!」
「ごめん兄さん、フォローできないよ」
ホークアイに続き、ハボック、ヒューズ、マスタング、アルが言った。名前はみんなの話を聞いてウンウンと頷いていた。
「いじめだー!!!
しょーがない……うちの整備師の所に行ってくるか」
「聞いたぞ、エドワード・エルリック!!母親を生き返らせようとしたその無垢な愛!さらに己の命を捨てる覚悟で弟の魂を錬成したすさまじき愛!我輩感動!!」
故郷に戻る際、いつ傷の男が現れるか分からないうえに、身体がボロボロで戦えない状況のエドとアルにはアームストロング少佐の護衛が決定した。
「だったら別に少佐じゃなくても!」
エドは文句を言っていたが、傷の男が襲って来た時に対応できる人は他には見当たらず。
「俺ぁ仕事が山積みだからすぐ中央に帰らなきゃならん」
「私が東方司令部を離れる訳にはいかないだろう」
「大佐のお守りが大変なのよ。すぐサボるから」
「あんなやばいのから守りきれる自信ないし」
「「以下同文」」
「決まりだな!」
「勝手に決めんなよ!んじゃ名前はダメなのかよ!」
『ルイルイ本当に強いんだよ?』
「「「「「「「ルイルイ!?」」」」」」」
名前の口から予想外な言葉が出てきたので、全員が目を丸くしていた。
『はい。アームストロング少佐は私の体術を教えて下さった恩師でもあるんですよ』
「どうりで強ぇわけだ……」
エドは自分が簡単に投げ飛ばされた理由が分かり納得した。
そして全員は未だに“ルイルイ”に違和感を感じていた。
「名前がどうしても我輩に教えてもらいたいと聞かなくて」
『だって強いと言えばルイルイしか思い付かなくて』
「名前は我輩の筋肉に惚れたのだな!」
そう言うとまた脱ぎ始め、筋肉をムキムキにさせポーズをとっていた。それを見た名前は「そうは言ってない。早く服着て」とシラけた顔で答えていた。
「名前はそんなに強い女性にならなくとも、私が守ってあげるぞ?」
『なっ!何を突然!』
てか名前で呼ばれたし!と名前はマスタングの不意打ちにボッと顔が赤くなった。
「え?名字少佐、まさか大佐と?」
「今、名前で呼んでましたしね……」
そのやり取りを見たハボックをはじめ、フュリー、ブレタ、ファルマンはショックを受けた顔をしていた。
どうやら皆、名前に気があったようだ。
「皆名前で呼んでるのに、私だけファミリーネームというのもおかしいだろ」
マスタングは皆が名前と呼んでいた事に気に食わなかったようだ。
『分かりました!もう皆さん名前でも何でも好きに呼んで下さい』
名前は呆れたように言った。
「まぁそう怒るな。皆名前を受け入れてくれてる証拠だろ」
『……確かにそうですね。むしろ嬉しい事ですよね』
ヒューズは名前の肩にポンと手を置き、名前は眉を八の字にし、嬉しそうに笑った。
皆もその笑顔を見て、自然と笑みが溢れた。
**************
16.03.23
一部の情報によると、ハボは22〜23歳くらい、ホークアイは24〜25歳だそうです。
ホークアイはお姉さん的存にしたかったのですが、ヒロインと同じ年齢になってしまいました。致命的なミス!←
そしてどうしても「リザさん」と呼ばせたかったのですが……(白目)