エルリック兄弟は故郷に帰る為、アームストロングと一緒に駅へ向かった。
そして、ヒューズも中央に戻るため名前はヒューズを駅まで送ることにした。
「あ、エドにロイの伝言伝えてこないと」
『んじゃ、私もエド見送りしたいので一緒行きます』
そして2人はエドが乗る列車を探した。ヒューズが見つけると窓をコンコンと叩き、その音に気付いたエドは窓を開けた。
「ヒューズ中佐に名前!」
「司令部の奴らやっぱり忙しくて来れないってよ。代わりに俺らが見送りだ。俺も中央に戻るついでにな。あと、ロイから伝言をあずかって来たぞ」
「大佐から?」
「“事後処理が面倒だから私の管轄内で死ぬ事は許さん”以上」
「“了解、絶対てめーより先に死にませんクソ大佐”って伝えといて」
「あっはっは!憎まれっ子世にはばかるってな!おめーもロイの野郎も長生きすんぜ!」
「あ、名前」
『ん?』
「今度会った時はぜってー負けねーからな」
エドはムスッとした顔をして名前を指差した。
どうやら投げ飛ばされた時の事をまだ根に持っているらしい。
『あの時は本当にゴメンね。ま、次も私が勝つけどね』
フフン、と名前は鼻を鳴らしながら言うとムキーっ!とエドは怒っていた。
「んじゃ道中気をつけてな。中央に寄る事あったら声かけろや」
『ルイルイも気をつけてね。エドをよろしく』
「うむ、承知した」
そして4人は敬礼をし合い、別れを告げた。
「所でさっきのエドの話はなんなんだ?何か勝負したのか?」
『大した事じゃないですよ?ちょっとこの前、エドを投げ飛ばしただけです』
「はあ!?」
まさかあのエドが簡単にやられるのか?と想像したヒューズは驚き、改めてサラッと言う名前が凄い奴だと再確認した。
「そんなんじゃモテねーぞ」
『五月蝿いです……』
「はっはっは!素直じゃないともっとモテないぞ!んじゃ名前も中央に来た時は声かけろよ」
『あ、待って下さい!』
ヒューズが“じゃあな”と言って手をヒラヒラと振って行くのを見て、名前はヒューズを呼び止めた。
「ん?どうした?」
『……いいですかヒューズさん。これからは余計な情報収集はやめて下さい。大佐の為であってもです。そして万が一、何かに気付いても何もせず気付かないフリをして下さい』
「どういう事だ?まぁ、気をつけるよ」
『本当に本当ですよ?』
「なんだよそんな必死に。俺死ぬとか?」
あはは、とヒューズは冗談交じりで笑ったが、名前の真剣な顔を見て表情を曇らせた。
「は……?嘘だろ……?」
『私が……絶対に死なせません』
「おいおいおい……冗談じゃねーぞ……」
『明後日から私も中央に行きます。ヒューズさんのサポートという事で見張ります』
「信じらんねぇ……俺が死んだら一生恨むからなー」
ヒューズはこの重い雰囲気に耐えられず、冗談を言って明るい素振りをした。
『この私を誰だと思ってるんですか?』
「……確かにな。お前以上に凄い奴いないもんな、本当に頼むぞ」
そしてヒューズが乗る列車が到着し、中央へ帰って行った。
『……必ず、助ける……』
「ダメだ!!」
マスタングの執務室から大きな声が響き、隣の司令室にいた人達はビックリしていた。
ヒューズの見送りから帰って来て早々、名前は真っ直ぐマスタングのいる執務室へ向かい、明後日から中央へ行く話をしたが、案の定断られた。
「今この状況だぞ、1人で行かせるわけにはいかん!」
『私なら大丈夫です。傷の男は私を知りません』
「そうだとしてもダメだ」
『……どうしてもダメですか?』
「ダメだ」
『どうしても大事な用事が出来たんです』
「なんだ、言ってみろ」
『……言えません』
「上官命令だ」
『こんな時ばかり地位を使うなんて最低ですね』
「何とでも言いたまえ。それで、大事な用事とは何だね」
『だから言えません』
「君はさっきから私と会話をする気はあるのかね」
屁理屈で返してくる名前に、マスタングは苛立ちを覚えた。
『大佐が二言返事をしてくださるだけで済むんです』
「いい加減にしたまえ!」
淡々と述べる名前にマスタングはついに頭に血が上り、怒りを表すかのように机をバンッと叩いた。
「もういい!勝手にどこへでも好きな所へ行きたまえ!」
『分かりました』
マスタングは怒鳴るも、名前は表情を崩さなかった。そしてそのまま執務室を出て行った。
表情を崩さない名前を見てマスタングは“チッ”と舌打ちをした。
「名前は一体何を考えているかわからん」
そして執務室から平然と出てきた名前を見て、司令室にいた人達は目を驚かせていた。
名前は誰の顔も見ずに、スタスタとそのまま司令室を出て行った。
「なんかいつもの名字少佐と違うっすね……」
「そうね……何かあったのかしら」
その様子を見ていたハボックとホークアイは、名前が怒られていたのにもかかわらず無表情だった事、いつもと違う表情に違和感を感じていた。
そしてマスタングは仕事を終え、帰ろうとした時だった。
リリリリーン
「ヒューズ中佐から一般回線で通信です」
「タイミングが悪いな……つなげ」
「おお、ロイ、まだいてよかった!」
「私はもう帰る所だ。娘の自慢なら聞かんぞ」
「エリシアの自慢もしたい所だが、今回は名前の件だ」
「どうかしたのか?」
「実は明後日から名前を貸して欲しいんだよ。傷の男の件で忙しいのは分かってるんだが、こっちも急ぎの仕事入ってて人手不足なんだわ」
「それならもう行く事になっている。大事な用事ってこの事か?ならなんで言わんのだ……」
「すぐに断られると思ったんじゃねーの?」
「聞いても“言えない”の一点張りで会話が成り立たない程だったんだぞ。頭にきて勝手にしろと言ってしまったよ」
そりゃ俺が死ぬかもしれない、なんて言えないわな、とヒューズは苦笑いをした。
「部下には優しくしないと嫌われちまうぞ?名前を泣かせたら許さんからな〜」
「名前は何を考えているのかわからんよ」
「……なぁ、ロイ」
「なんだ」
「名前は何でも1人で抱え込もうとする。多分いつか壊れちまう。そうならないように側にいてやってくれ」
「……どうしたヒューズ、何かあったのか?」
「いや、何にもない。ただ、もしもの時は本当に頼むぞ」
「縁起でもない事言うな」
「あははは!また近いうち飲み行こうな、んじゃ」
そう言ってヒューズは電話を切った。
マスタングは違和感を覚えながら暫く受話器を見つめ、ガチャンと置いた。
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16.04.25
もはや軍部夢ですな、、、