そして午後、名前は中央へ向かった。
中央に着くと、駅にはヒューズが迎えに来ていた。
『ヒューズさん、ありがとうございます。助かります』
「いやいや、俺の為に来てくれたんだからこれくらいしないとな」
『って、なんで私服なんですか?』
「午後から非番なんだよ。んでこの後エドの様子を見に行こうと思っててな。名前も行くだろう?」
『あー……入院してるんでしたっけ。分かりました』
ヒューズと名前は車に乗り込み、エドのいる病院へ向かった。
「ようエド!病室に女連れ込んで色ボケしてるって?」
ヒューズはバーンと勢いよく病室のドアを開けて入って行った。
「ただの機械鎧整備師だって!!」
「そうか整備師をたらしこんだか、やるな豆!!」
『なんだ、元気そうね』
名前は初めて会うブロッシュ少尉とロス少尉に挨拶をし終えると、エドに声をかけた。
「名前!?なんで中央に?」
『んー、まぁ色々あってね』
「ふーん。あ、ウィンリィこのおっさんはヒューズ中佐、そしてこの人が名字少佐」
「ウィンリィ・ロックベルです」
「マース・ヒューズだ、よろしくな」
『名前 名字です、よろしくね』
ウィンリィはヒューズ、名前と握手を交わした。
『噂通り、可愛いね。エドには勿体無いわー』
「なんでそうなるんだよ!てか、ヒューズ中佐は仕事抜け出して来ていいのかよ」
「へっへっへ、今日は午後から非番だ!」
「へー!軍法会議所は最近、多忙極めて休み取れないって言ってなかったっけ?」
「心配御無用!!シェスカに残業置いて来た!」
「あんた鬼か……」
『ヒューズさん、それはパワハラでは……』
「非番ついでにおまえさんの様子を見に来たってのもあるが、もうひとつ。傷の男の件も情報が入ってな。もうじき警戒が解除されそうだ」
「本当に!?やっとうっとーしい護衛から解放されるよ!」
「護衛って……あんたどんな危ない目にあってるのよ!」
「う!!いやまぁなんだ!気にするな!たいした事じゃねーよ!」
「……そうね、どうせあんたら兄弟は訊いたって言わないもんね。じゃあ、また明日ね。あたしは今日の宿を探しに行くわ」
上着を着て帰る準備をするウィンリィにヒューズは声をかけた。
「そうだ!なんならうちに泊まってけよ!」
「でも初対面の人に迷惑かける訳には……」
「気にすんなって!うちの家族も喜ぶしよ!名前も泊まりに来るし心配ないぜ!」
「え?あの……ちょっと〜〜」
そしてウィンリィはヒューズにズルズルと強引に連れて行かれた。
『んじゃまたね、エド。あ、女には優しくしないと嫌われちゃうわよ』
「うっせーー!!」
ニヤッと名前はエドに伝えると、エドは顔を真っ赤にしながら怒っていた。
それを見た名前は“わっかりやすー”と笑ってヒューズ達を追った。
「ヒューズさん……これはいったい……」
『もしかして』
「よくぞ訊いてくれました!!今日は俺の娘の3歳の誕生日だ!」
両手いっぱいのプレゼントを持っていたヒューズは上機嫌だった。
勿論、ウィンリィと名前も持たされていた。
「パパおかえりー!あ、お姉ちゃん!」
「名前ちゃんいらっしゃい。あら可愛いお客さん」
「妻のグレイシアと娘のエリシアだ」
「『お世話になります』」
「ウィンリィちゃん初めまして。ゆっくりしていってね」
そして沢山の人達が集まり、エリシアの誕生日会が始まった。
「名前!」
『あれ!?#name3#さんも呼ばれてたんですか?居たの気づかなかったです』
「酷ぇなー。名前はロイの事しか見てないもんなー」
『ちょ!なんですかそれ!』
「言っておくけど、バレバレだからな?」
『なんの事ですか!!』
名前は顔を真っ赤にしながら否定するも、#name3#はその反応を見て楽しんでいた。
「そうだぞー?バレバレだぞ?」
『なっ!ヒューズさんまで!!』
話を盗み聞きしていたヒューズもニヤニヤしながら話に混ざってきた。
「だろ?マースにもバレバレって事は、ロイにもバレバレだろうな」
『ちょーーー!やめて下さいよ!!』
「で?進展はあったのか?」
『だからなんでそうなるんです!私と大佐は上司と部下!それ以上の事はありません!!』
「この前の電話で、名前を嫁さんにしろよって言っておいたからな」
『ちょ!ヒューズさん何て事を!!』
#name3#とヒューズは名前の反応が面白くて仕方がなかった。
「はー!ホント名前は面白いなー。ところで、何で名前が中央に?来る時連絡しろって言っただろ」
さっきまで笑っていた#name3#の顔が、一気に真剣な顔に変わり、その表情を見て名前は思わずビクッと肩を震わせた。
『えっと、ヒューズさんの手伝いを』
「今忙しくて人手不足なんで、無理言って名前に来てもらったんですよ」
名前は突然訊かれ、しどろもどろに返してしまったが、ヒューズがフォローしてくれたのでホッと安堵した。
「また1人で何かやろうとしてないよな?」
『その時は相談するって言ったじゃないですか、大丈夫ですよ』
#name3#も頭の切れる人だ。名前のちょっとした反応も見逃さなかった。
名前は悟られないよう、いつもの笑顔で返した。
「ならいいけど。マース、お前も名前をコキ使うなよ」
「あははは、すみません」
“ロイに文句言われるぞ〜”と付け加えると、#name3#はトイレに行くのかその場を離れた。
『ヒューズさん、ナイスフォローでした』
「オーズリー大佐には気を付けろよ、あの人もロイ並みに勘のいい男だ」
『でもやっぱり、相談した方が良かったのかな……』
「いや、俺以外犠牲を出したくないからな。この件が終わるまで誰にも喋るなよ」
『絶対護りますからね……』
「頼むぞ」
どこか不安そうな表情をする名前の頭を、ヒューズはグシャグシャと撫でた。
そして、エリシアの誕生日会は終わり、夜も静かに更けていった。
翌日、再びエドの様子を見に病院へ向かった。病室に入ろうとすると、アルの怒鳴り声が聞こえてきた。
「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない!!」
「あ……悪かったよ……そうだよな、こうなったのもオレのせいだもんな……だから1日でも早くアルを元に戻してやりたいよ」
「本当に元の身体に戻れるって保証は?」
『あるわよ』
「「!!」」
視線が一斉に名前へと向けられた。名前は気にする事なく、エルリック兄弟に話し続けた。
『私がここに存在している以上、貴方が元に戻れる保証をする』
「この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ……!!」
『私だってそうよ。私は死んだはず。でもこの世界で生きている。身体もここにある。でも向こうの私がどうなってるか分からない。もし向こうで生きていたとしたら、ここにいる私、この記憶は本物なのか誰も証明してくれる人はいない。でもアルは違うでしょう?ウィンリィやエドが証明してくれる。だから今まで支えて合ってきた2人を信じなさいよ!!』
「ウィンリィやばっちゃんも皆でボクをだましてるって事もあり得るじゃないか!!」
『あんたねぇ……』
ガンッ!!
やり取りを黙って訊いていたエドはテーブルに乗っていたトレーをガンッと叩いた音が病室に響いた。
「それをずっと溜め込んでいたのか?言いたい事はそれで全部か」
「…………」
「そうか」
「エドっ……!」
エドは静かに病室を出て行った。その姿を見てウィンリィは声をかけるが、エドは振り向きもせず歩いて行ってしまった。
「バカーーーっつ!!!」
「いっ……いきなりなんだよ!!」
ウィンリィはスパナで思いっきりアルの頭を叩いた。そしてボロボロと涙を溢していた。
「アルのバカちん!!エドの気持ちも知らないで!!エドが怖くて言えなかった事ってのはね……アルがエドを恨んでるんじゃないかって事よ!!」
ウィンリィはガンガンとスパナでアルを殴り続けた。
「自分の命を捨てる覚悟で偽物の弟を作るバカがどこの世界にいるってのよ!!あんた達たった2人の兄弟じゃないの」
「…………」
「追っかけなさい!!駆け足!!」
「はいっ!!」
ウィンリィは病室の入り口をビシッと指差し、エドの所へ行くよう指示した。
『頑張ったね』
名前はウィンリィの頭をポンポンと撫でた。
「名前さん……さっき死んだって……どういう……」
『私の事はいいから。ウィンリィも追っかけなさい』
名前はニコッと笑い、ウィンリィの背中をポンッと叩いた。
ウィンリィは気にしながらもアルの後を追った。
「大丈夫、お前はちゃんとここにいるよ」
『ヒューズさん……』
「名前が誰であろうが、名前は名前だよ。皆そう思ってる。だから心配するな」
ヒューズは名前の頭をポンポンと撫でた。
名前は涙ぐみながら“ありがとうございます”と微笑えみ返した。
大丈夫。
私はちゃんとここにいる。
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16.06.05
この後も大佐、出ません。。
そして#name3#再び。今後もちょいちょい出る予定です。