鋼の世界に行けたら、私は皆を助けたい。
1人では限界があるが、出来る範囲で皆の幸せを守りたい、と漫画を読みながら考えた事がある。
私が誰かを助けたら物語が変わってしまうかもしれない。
私が来た事で既に変わってるかもしれない。
でも……
それでも助けたい……
だけど今の私は何も出来ない。何も取り柄のないただの人間。
早くマスタング大佐達に会いたい。
力になりたい。
守りたい。
物語が始まってしまう前に……
その為には何が必要?
(あれ?そもそも私真理を見たんだから錬金術使えるんじゃない?)
ふと、両手を見た時に思い出したのだ。
なんでこんな肝心な事忘れていたのだろうか……
もう今日はダメかもしれない。ハミルトンさんの言うの通り今日は早く休もう……と反省した。
でも寝る前に試してみたい…という好奇心が強かった。
『お風呂、ありがとうございました』
「おう」
『ハミルトンさん、いらない紙ってありますか?なんでもいいので』
「どうした急に。ほら、これでいいか?」
仕事をしていたハミルトンは、いらない書類の紙を1枚渡した。
『ありがとうございます。私、もしかしたら錬金術使えるかもしれません』
「は?」
『ちょっと試しに、この紙を違う物に変えてみていいですか?』
「マジ……?」
名前は深呼吸をして、勢いよく両手を合わせ、紙に手を置いた。
「『!!!!!』」
青い光が現れバリバリと音が鳴りながら、紙は形を変え折り鶴が出来上がった。
見事に成功した。
『で……出来ちゃった……』
「嘘だろ……」
『私も信じられません……』
出来上がった折り鶴を見て、2人は固まっていた。
『私……錬金術師になって軍に入りたいです』
「バカな事言うな。軍人で錬金術師となったら人間兵器として駆り出されるリスクがあるんだぞ」
『分かっています。それを承知の上で言っています。連れて来られたからには、皆の役に立ちたいです。皆の幸せを守りたいって思いました。軍人になれば嫌でも体力付きますし、錬金術の勉強も普通の図書館よりも資料はあると思います。私が必要としている物を手に入れるには、軍人になる他ないんです』
名前は覚悟を決めた真剣な目でハミルトンを見た。
「……んじゃお前の幸せはどうするんだ。皆を幸せにして、誰がお前を幸せにするんだ?」
『それは……皆の幸せが私の幸せ、ではダメですか?』
「……本当にお前はそれでいいのか」
『はい』
ハミルトンは大きな溜息を吐いた。
「わかったよ、危ない真似だけはするなよ。何かあれば必ず俺に相談しろ」
『はい!ありがとうございます!あ、あともう1つお願いが……』
「まだあるのかよー……」
ハミルトンはうげぇ…という顔をして名前を見た。
『私が錬金術師の資格を取ったら、マスタング中佐の所へ異動させて下さい。ハミルトンさんには感謝してもしきれないほど助けていただいたので、こんな事お願いするのは失礼極まりないのですが……』
「……そんなにロイの事が大切なのか?」
『大切というより、マスタング中佐達というか……ってあれ?ロイ……?』
「ロイは俺の後輩。俺より一つ下だ。俺の方が年上なのに俺と同じ地位……許せん……」
ハミルトンは拳をフルフルとさせていた。なんか聞いてはいけなかったのかも……と少し後悔してしまった。
『ハミルトンさんの後輩なら尚更、何があってもマスタング中佐を必ずお守りしますね』
「なんかロイばっかりずりーわ」
『勿論、異動するまではハミルトンさんに尽力いたします』
「当たり前だ」
ハミルトンは少し嬉しそうにワシャワシャと名前の頭を撫でた。
「そういや、錬金術師の資格取るのって相当難しいらしいぞ?精神鑑定と実技は問題ないが、筆記大丈夫か?」
『……ガンバリマース』
大丈夫かよ、とハミルトンは呆れたように溜息を吐いた。
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16.02.07
ちなみにハミルトンは錬金術師ではありません。普通の軍人です。
前話で「いただきます」の時の手合わせで発動しなかったのは、錬成しようとする意志がなかったから、という事でお願いします。
22.03.22 加筆修正