07

『大佐殿が見送りなんてして大丈夫ですか?』
「ほんの少しだけだ。問題ないだろ」
『ありがとうございます』

今日は名前が出発する日だった。勤務は2日後だが荷物の整理もある為、早めにイーストシティへ行く事にした。
セントラル駅まで#name3#が送ってくれた。

『本当に2年間お世話になりました。出会えたのが#name3#さんで本当に良かったです。どうかお元気で』

名前は少し涙ぐみ、笑顔で#name3#にお礼を言うと同時に、握手をしようと手を差し伸べた。

ぐいっとその手を引かれ、名前は#name3#に抱きしめられた。

『ちょっ!?#name3#さん!?』
「絶対に無理するなよ」

#name3#は更に名前を強く抱きしめた。

『わ、分かってますよ!こんな所見られたらマズイですよ!!』
「……そういう時はギュッと抱きしめ返してくれるのが普通だろ?」

名前を引き離し、不満そうな顔をして名前を見た。

『女子力低くてスミマセンネー』
「ロイには色々説明済みだから安心して行ってこい」
『え!?そうだったんですか?いつの間に……変な事言ってませんよね?』
「さぁ?ほら、出発するぞ」
『ちょ!もう!』

頬を膨らませながら名前は列車に乗り込んだ。

「んじゃロイにもよろしくな」
『はい!ではまた!』
「おう」

そして”ニューオプティン発、特急04840便が発車いたします”というアナウンスが流れ、発車した。

『ん……?ニューオプティン発の04840便?あれ?どこかで聞いた事あるような……まさか……ね?』

名前は特に気にしていなかったが、たまたま耳に入ったアナウンスを聞いて眉をひそめた。

『念のため、あの人達がいるか確認するか……』

ハクロ一家とエルリック兄弟が乗っていたらビンゴだな、と名前は付け加えた。






「乗っ取られたのはニューオプティン発、特急04840便。東部過激派「青の団」による犯行です」
「声明は?」
「気合い入ったのが来てますよ。読みますか?」
「いや、いい。どうせ軍部の悪口に決まっている」
「ごもっとも」

ホークアイが冷静に書類を読み上げ、マスタングはそれを聞きながら司令室の扉をバンッと開けた。
中の人達はせっせと情報収集している。

「要求は、現在収監中の彼らの指導者を解放する事」
「ありきたりだな。で、本当に将軍閣下は乗ってるのか?」
「今確認中ですがおそらく」
「困ったな、夕方からデートの約束があったのに」
「たまには俺達と残業デートしましょうやー」
「ここはひとつ、将軍閣下には尊い犠牲になっていただいて、さっさと事件を片付ける方向で……」
「バカ言わないでくださいよ大佐。乗客名簿あがりました」

フュリーから名簿の紙を貰うと、横からハボックが覗いてきた。

「あー本当に家族で乗ってますね、ハクロのおっさん」
「まったく……東部の情勢が不安定なのはしっているだろうに。こんな時にバカンスとは……ああ諸君。今日は思ったより早く帰れそうだ」

マスタングはハクロが乗っているのを確認すると額に手を置き、溜息を吐いた。しかし、その名簿の中にある人物を見つけニヤリと笑った。

「2人の錬金術師が乗っている」





一方列車では、予想通りハクロ一家が乗っている事を確認した。そして次にエルリック兄弟を見つけるため、名前は周りをキョロキョロと見渡した。

『せっかく早めにきたのに……これじゃ荷物整理は間に合わなそうね……』

はぁ……と名前は溜息を吐いた。

『あーいたいた。あれアルの頭よね?分かりやすくて助かるわ』

座席からはみ出た鎧の頭がとても目立っていたので、すぐに分かった。

『初めまして。貴方達はエルリック兄弟よね?』
「え?あ、はい、そうですけど……貴女は?」

兄のエドワードは寝ており、弟のアルフォンスが答えてくれた。

『私は名前 名字。よろしくね。早速なんだけど、これからトレインジャックの人達が現れるから、お手伝いしてもらえる?』
「え?何?一体どういうこと?」
『ゴメン、説明してる暇ないの。とにかく急いで!そこのお豆さん、起きなさい!』

名前はそう言い残してハクロ一家の元へと向かった。

「どぅあああれが豆だぁあああ!!」
「兄さん、この列車ジャックされてるらしい。だから犯人捕まえるために手伝って欲しいって……」

今のお姉さんが、とアルは名前が行った方向を指差して言った。

「は?誰だよアイツ、軍人?」
「軍人とは名乗ってなかったけど……名前 名字って言ってた」
「ったく、わけわかんねー。とりあえずアイツを追うぞ」

そう言って2人は名前を追った。



名前はハクロ一家がいる個室を覗くと、まだ犯人が来ていない事にホッとした。

コンコン

『失礼します』
「誰だ君は!」
『今この列車はジャックされています。もうじき犯人がここへ来るはずです。その前に助けに来ました』
「何の事だ?一体何の真似だ!」

突然の事に、案の定ハクロはお怒りだった。
それを見た名前はニヤリと笑った。

『ただ、一つ条件があります』

普通に助けては面白くないので、条件付きで助けようと考えた。

『今後、マスタング大佐の悪口を言わないという約束をしていただけたら助けてあげます。しかし、約束出来ないと言うならこのまま見捨てます。どうされますか?』
「貴様、誰に向かってその口を……」
『私は約束するかしないかを聞いているのですが。ここで大きな声で貴方がいる事を言っちゃいますよ?』

すぅーっと大きく息を吸い込み叫ぼうとした瞬間、ハクロは慌てて答えた。

「っ!!わ、わかった、約束する!」
『本当ですね?約束破ったら……覚悟して下さいね?』

そんなやり取りをしていると、遠くから犯人と思われる声が聞こえてきた。段々と近付いてくる声にハクロも焦り始めた。

「約束するっ!た、助けてくれ!」
『交 渉 成 立』

ニヤリと名前は笑い、個室から出ようとした所、ハクロの奥さんから声をかけられた。

「あの、貴女は一体……」
『んー……通りすがりの錬金術師です』

ただ名乗るのもなぁと思い、名乗らずにそう言った。
何よりもハクロに知られたら厄介な事になりそうだし、とも思った。

名前は手を合わせ壁を錬成し、ハクロ一家の個室を隠した。

「女がいたぞー!」
「そこをどけー!」

と、犯人が名前を見付けると走って向かってきた。

『初めての実践、腕試しといきますか!』

名前も犯人に向かって走って行った。



そして、名前はあっという間に犯人をやっつけた。それと同時に車内にエドのアナウンスが流れた。

「人質のみなさんは物陰に伏せてくたさいねー」

『え?もう?エド仕事早すぎ』

名前はそのアナウンスを聞いて急いで物陰に隠れた。

暫く待っていると水も無くなり、無事にバルドも捕まえただろう頃にエドの元へと向かった。





『さすがエルリック兄弟。あっという間ね!』
「「あ!」」

探したぞ!と言わんばかりの目でエルリック兄弟は名前を指差した。

『協力してくれてありがとう。助かったわ』
「お前一体誰だ?軍人か?」
『んー……通りすがりの錬金術師ってことで』
「錬金術師……だと?」
『この前なったばかりだけどね。あ、ほら着いたよ』

列車は無事にイーストシティ駅に着き、乗客がゾロゾロと降りて行った。
そして名前達はバルドを憲兵達に渡し、列車を降りた。

「お前も旅してるのか?」
『なわけないじゃん』

名前が大きな荷物を持っていたので、エドはそう思ったらしい。

『今日セントラルから引越して来たの。そしたらこんな事に巻き込まれるし……』

やんなっちゃう、と言いかけようとしたその時だった。

「や、鋼の」
「あれ、大佐こんにちは」

後ろからマスタングに声をかけられ、アルが挨拶をした。そしてエドは心底嫌そうな顔をしていた。

「なんだね、その嫌そうな顔は」
「くあ〜〜〜大佐の管轄なら放っときゃよかった!!」
「相変わらずつれないねぇ……ん?君はもしや……」
『はい、お初にお目にかかります。中央司令部から異動になった、名前 名字です。お会いでき、光栄です』

ビシッと敬礼をしてマスタングに挨拶をした。

「は!?やっぱ軍人だったんじゃねーか!」

それを聞いていたエドが思わず突っ込んだ。

『だって今日はプライベートだから軍人じゃないもの。間違ってないでしょ?』
「くあ〜〜〜!何かムカつく!!」
「兄さん、年上の人に向かって失礼だよ!名前さんすみません……」
『兄がこうだと、弟がしっかりするものなのね』
「なんだとコラ!!」

エドは飛びかかろうとしたが、アル抑えられた。

「君が名字少佐か。オーズリー大佐から話は聞いているよ。私に会いたがっていたようだね」

ハハハと微笑みながらマスタングは言った。

『っ!……違う意味の会いたい、ですけどね』
「おや、そうなのかい?つれないねぇ」

名前はマスタングの微笑みに不覚にもドキッとしてしまった。
思っていたよりもカッコよかったようだ。


「うわぁ!!」
「貴様……ぐあっ!!」

声の方に目を向けると、バルドを連れて行った憲兵2人が切られ、倒れていた。

「うわ、仕込みナイフ……」
「大佐、お下がりくだ……」
「これでいい」

マスタングの隣にいたホークアイが銃を構えようとしたが、マスタングがそれを制した。そして、発火布を装着していた手に力を入れた。

おおおおお!!とバルドはナイフを向けながらこちらへ走ってきた。
マスタングはぐっと指に力を入れた。

パキンと音が鳴ると、バルドに炎が放たれた。

「手加減しておいた。まだ逆らうというなら次はケシ炭にするが?」
「ど畜生め……てめぇ何者だ!!」

待ってました!とばかりに名前は目を輝かせて見ていた。

「ロイ・マスタング、地位は大佐だ。そしてもうひとつ、「焔の錬金術師」だ。覚えておきたまえ」


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16.02.13
お待たせしました!大佐と絡みました!ちょっとだけ……

列車は特急なので直行なんですが、ニューオプティン発セントラル経由イーストシティ着、という設定でお願いします。