11
「うわー、やっぱり町中大混乱だねぇ」
隕石が落ちるとの警報が流れてから、車やら何やらの音を遠く聞いていたが、いざ町中に来てみるとその様子は顕著だった。
人々は騒ぎ回り、車はみっちり先行く道を塞いでいる。
その騒音を更に更に駆り立てるのは、先程から流れ続けるヒーロー協会からの警報だった。
「お前喋るのは構わねーけど舌噛んだとか言うなよ」
「噛まないよもー子供じゃないんだかりゃぶっ!!!」
「噛んだな」
…とまぁ、何故こんな噛む噛まないの話になっているかというと、勿論今の私の状態にある。
何かに乗っている、うんうん正解。
何の乗り物かといえば、簡潔に言うならそう、サイタマ。
私は今サイタマにおんぶしてもらっている。
私が連れていってと頼んだら「急ぐから乗れよ」と返されたのだ。
「ええ…いくらサイタマ相手でもちょっとそれは…」「急いでるっつってんだろ、置いていくぞ」「失礼します」「よし」といった感じだった。
「そういえば急いでるとは言ったけど何処に向かうの?」
「何処ってそりゃ…隕石が落ちそうな所だろ」
「落ちてからじゃ遅いよ」
「まぁ隕石ってぐらいだし上さえ見てりゃそれっぽいのが…お?」
上を向いたサイタマに釣られて私も見上げると、そう遠くはない上空で何やら爆発が起きていた。
あれは、なんだろう。
煙幕に覆われて暫くはその正体が分からなかったが、晴れてきてやっと分かった。
あれが、隕石だ。
つまり先程の爆発はその隕石を攻撃していたもの、何者かのヒーローの攻撃だろう。
サイタマも「あれだな」と認識した声をあげた。
もしかしてあの攻撃はジェノスくんかなぁと思った所で、サイタマに抱え直される。
「舌噛むなよ」
OKヒーロー、落とされないよう頑張るよ。
などと意気込んだのはいいが、それからの移動はジェットコースターに乗ってるみたいなものだった。
速いわ揺れるわ安全バーは無いわの3連コンボきつい。
しかも道が人や車で溢れているからか、建物の上を移動しやがるから余計にきつい。
ただ不思議と落とされると感じることはなかった。
でも軽く酔った。
「お、ジェノス居た」
「えっどこどこ?」
「ほら、丁度真正面のあのビルの上」
「…あ、ほんとだジェノスく…うええええええ!?」
ジェノスくんの姿を確認して呼び掛けようと出した声は、ジェノスくんの掲げている腕から放たれた、とんでもない光によって驚きの声となって出た。
え、あれ何? 攻撃?だよね?
「すげええええええ!!かっこいいいいいいい!!」
思わず叫んでしまったが(サイタマが何か文句を言っていたが聞き取れなかった)、素人の私から見てもあれはとんでもない火力のように見えるのだから、実際すんごい攻撃なんだろうな。さすがS級ってことなんだろうか。
しかしその攻撃対象である隕石はスピードを緩めることなく落ちてきている。
…やっぱり、駄目なのかな。
いけないいけない、せっかくジェノスくんが近くに居るのに…というか気付けばジェノスくんが居ると同じビルの上に来ていた。
そして同時に、ジェノスくんがその場に崩れ落ちる。
「ジェ、ジェノスくん!?」
思わずサイタマの背中から慌てて降りた。少しサイタマを蹴ってしまったかもしれないごめん。
何か言われたらその時に謝るとして、そのままばたばたとジェノスくんに駆け寄る。
「ジェノスくん、ジェノスくん大丈夫!?」
「…、…ヒイロ、さん…?」
良かった意識あったー!!
隣に座り、肩を抱いてその体を支える。
顔を俯けていたから覗き込んだが、やはり力ない。
私がわざわざ覗き込んだからか、緩慢な動きで驚きに染まった顔だけこちらに向けてくれた。
「何故、ここに?」
「じいさん、こいつらを任せるぞ」
ジェノスくんの言葉に被せるように、サイタマが言葉を発した。
というかサイタマの声にもう一人その場に誰かが居たことに気付いた。
「だ、誰じゃねキミは?」
「俺はヒーローをやっている者だ、避難してなじいさん」
サイタマがじいさんと呼んだご老人。
この人、この人、シルバーファング、なんじゃないか、?
そうだよ、よく考えてみたら隕石なんてとんでもない物なんだ。ヒーローが複数来たっておかしくは…S級だああああ!!!
いやジェノスくんもS級だけど!そうじゃなくて!!そうなんだけど!!
「先生!?」
シルバーファングに興奮していた私を現実に引き戻したのは、ジェノスくんの声だった。
サイタマはそのままぐっと溜めるような構えを取り、足場を力強く蹴って上空へ跳んだ。
目前にまで迫る、隕石に向かって。
「…サイタマが隕石壊しに行くとか言うから、私も連れてきてもらったんだけど…」
サイタマを見上げながら、放心気味な声が出てしまったかもしれない。
正直なところ、私はもう諦めていた。
災害レベルとかそういう問題じゃない、隕石だ。
怪人のように倒して「はい終わり」にはならない。石なのだから。
謂わば自然災害のようなもの。そんなものにヒーローが、人間が敵うはずもない。
なのにサイタマは、
「俺の町に、落ちてんじゃねえ!!」
その隕石相手に、その拳を振るった。
- 11 -
*前次#
ALICE+