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サイタマの拳が隕石に当たり、隕石が見事に破壊された。
すごい、すごいぞサイタマ、S級ヒーローが出来なかったことをさらっとやってのけたぞ。
…ああ、そういえばジェノスくんが何故サイタマを先生と呼んでいたか、理由を聞いていたはずだ。
サイタマ先生の強さをうんたらかんたらだった。

「…は、はは、ジェノスくんの先生、ほんとすごいね」

思わず笑いが渇いてしまっていた。こりゃもう、下手にサイタマ馬鹿にしたら失礼なんじゃないかとも思う。
ジェノスくんの肩を抱いていた手に力が籠ったのを自分でも感じた。
ジェノスくんが此方を向く気配を感じたけれど、この時はサイタマから、砕け散る隕石から目が離せな…。

砕け散る隕石?



「うわあああ何かいっぱい落ちてくる!!!ジェノスくん立てる!?あっ、立てないんだよねおんぶ出来るかなちょっとごめんね…重っ!!!えっなにこれ重い!!!」

「わっ、ヒイロさん」

私はいいとしてジェノスくん、ジェノスくんを何とか避難させないと!
その一心でもがいてみるけどジェノスくん重い!!!
ちょっと待ってぐったりしてる人ってこんな重いものだっけ!!?あ、なるほどサイボーグ!!?
ぐおおおお明日から筋トレするから今だけは火事場の馬鹿力を発揮させてえええええ!!!!!

「二人とも動くな。ジェノス君はまぁ言われなくてももう動けんじゃろうが」

慌てているとおじいちゃ…間違えた、シルバーファングさんが私たちの前に躍り出た。
動けないことを指摘されたジェノスくんが小さく悔しそうな声をあげる。

「え、し、シルバーファングさん!?」

「守っちゃる」

そう言うや否や、まさに此方に落ちてきていた隕石の欠片を技か何かで流したシルバーファングさん。
流された欠片は脇に逸れ、私たちへの直撃を避ける。
一人だけ慌ててたのが何か少しだけ恥ずかしいなぁと、混乱してる頭の中のどこかで、そう冷静に思う自分も居た。

でも私たちに当たらなくても、脇に逸れただけで欠片が落ちてくる事には変わらないわけで。
次々と降り注ぐ隕石の欠片は、無差別に街へ落ちていく。
勿論私たちが居るビルも例外ではなく、ぐらりと傾いた。

「崩れる…!」

ジェノスくんがそう呟いたのを聞いて、やっと事態を把握した。
崩れるということはつまり、私たちも落ちるということ。
休む暇なく起こる展開に混乱しっぱなしな頭で、なけなしの年上としての義務として何とかしなきゃと必死に考えてみるも良い策は無く。

「とりあえず頭?頭守ればいい?」

「ヒイロさん、俺の事はいいので自分を守ってください!」

「バッキャロ子供は大人しく守られてなさい!!」

抱き上げてそこから逃げる、とか出来たらかっこよかったんだけど、先程の件で私にはジェノスくんを持ち上げる術はないと痛感したから守ることだけを考える。
全身サイボーグとのことで確か脳だけが自分のらしいから、最悪頭さえ守れば大丈夫ってことだよね?
ってことを考えてたら、ジェノスくんの言葉に変な言葉を返してしまった気もするが許して欲しい。
ジェノスくんの頭を抱き締めて、守りの体勢に入った。

「お熱いところ失礼」

が、その声と共に体が宙に浮いた。
驚いて状況を確認すると、声の主はシルバーファング。
シルバーファングの腕に抱えられたようだ。
…え?

「ちょ、ええ、ええ!?シルバーファングさんちょっと、ええ!?ご老体!ご老体なんですからそんな、ジェノスくんはともかく私は大丈夫です下ろしてください!!」

「なぁに、心配されるほど老いてもないわい」

「そういう問題じゃ…いやそういう問題だっけ?ってぎゃあああ!」

右にジェノスくん、左に私を抱えて、シルバーファングはひょいとその場を蹴った。
シルバーファングさんあのジェノスを片手で抱えてるよすごい!!S級すごい!!
ジェノスくんはジェノスくんで抱えたことに驚いたのか、小さく「うわ」とか言ったのが聞こえたぞ可愛い!
にしてもシルバーファングさんが割としっかり抱えてくれているからか、何だかもう安心だなと私の平和ボケした頭が認識した。





「落ち着いたようじゃの」

「そ、そうですね」

落ちてきていた隕石の欠片による襲撃と私の精神が。

地上に降りて足場が安定した場所に降ろしてもらうと、再びシルバーファングは私たちを守る体勢に入ってくれた。
超かっこいい。これがS級の貫禄。
ジェノスくんはまだ力が入らないらしく、何も出来ないことに対してかずっと悔しそうな顔をしていた。
というかやっと冷静になれた頭で考えてみたらさっきまで私ジェノスくんとすごくくっついてた。
必死だったのが本当なんだけど、お前それ楽しんでただろと疑われるくらいにはくっついてた。
あれが役得ってやつだろうか、最高だ。

「シルバーファングさん、助けて頂き有難う御座います」

「いいんじゃよ、これもヒーローの務めじゃ」

なんて笑顔で返してくれたシルバーファング。
うううかっこいいなぁ!シルバーファングかっこいい、いっそのこと抱いてほしい。
…っていうのが声に出てしまっていたらしく、「ほほ、わしがもうちょい若かったらのう」なんて冗談も返してくれた。ちょっと恥ずかしい。
なんて会話していたら、隣に座っていたジェノスくんの頭がコツンと私の肩に当たった。

「!? ど、どうしたのジェノスくん?」

努めて優しい声を出したつもりだったが動揺の声になってしまった。

「すみません、先程、俺の全エネルギーを放出したので、このように動くことも、出来ないのですが、エネルギー消耗による、コアへの負担が、どうやら大きかったようで、セーブ機能が働き、…ええと、…要約すると…、」

「いいよ、大丈夫分かった」

説明しようと頑張ってくれた事が嬉しい。
そうだよ、ジェノスくんも頑張ってたんだもん。そりゃ疲れもするよ。
今にも閉じそうなジェノスくんの瞳を見詰めながら、肩に落ちてきた頭を優しく撫でる。

「すごくかっこよかったよ、お疲れさま」

ゆっくり休んで。
私がそう言うのを聞き遂げると、緩やかにジェノスくんの瞼が落ちた。
…………ぐおおおおイケメンの寝顔キタコレ。
携帯、携帯どこにしまったっけ、あった。あったよっしゃ勝利確定。
先程のジェノスくんの言い方だときっとすぐには目を覚まさないだろうから、シャッター音くらいじゃ大丈夫だろう。
気持ち手を合わせながらパシャリ、ジェノスくんの寝顔頂きました。
超かっこいい。かわいい。はー癒し、至福、最高。とりあえずあと数枚。

「…熱いのう」

ハッ、そうだシルバーファングさん居たんだった。
まぁ居たところでシャッター押してないのかと聞かれても否だけど!
とりあえずイケメンS級ヒーローの寝顔というプレミア価値を説明するところから始めようと思う。





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