04
晩御飯でお腹を満たした後も、さも当然のように後片付けを始めるジェノスくんにはほんと感心しかない。
サイタマを師として尊敬してるようなのはさっきの話でひしひしと感じたけど、それだけでまさかこんな…もうこれお母さんとか奥さんとかそんなのみたいだ。
お皿を下げた後にはわざわざ私のゴミ(オムライスの入ったいた入れ物)まで引き取ってくれて良い子すぎかよ。
「サイタマせんせ、お宅のジェノスくんを私にください」
「おー連れてけ連れてけ」
「まじで!?」
「っていうかお前まで先生呼びやめろ」
先生からの許可が降りてしまったので後でジェノスくんに話そうと思う。
今は後片付けで忙しそうだから邪魔をしないようにその家庭的な姿を目に焼き付けておこう。
「そういえばサイタマ、さっきのジェノスくんの話でサイタマの強さがどうのってのがあったんだけどアンタ今そんな強いの?」
「んー? あー…」
「えー何その微妙な返し…」
「先生はお強いです!!」
お?お?
なんかすごい剣幕でジェノスくんが入ってきたぞ!?
「意味があるのかさえ疑問なヒーロー試験で何の間違いかC級などという位置に置かれてしまっていますが先生の強さは本物でS級をも圧倒的に凌ぐ強さなのは間違いありません!そもそも…」
力説するのはいいけどジェノスくんよ、手元の洗い物を何とかしてからの方がいいんじゃないか!?
まだまだジェノスくんの話の勢いは収まらず、あー、あー…なんか、すごく熱が入ってきたみたいだけどそんな、あー…。
ちょっと見てられなくなって急いでジェノスくんの元へと向かった。
私の急な移動を不思議に思ったのか、喋りを止めて此方を視線で追ってきてるのが分かりやすい。
私はそのまま彼の手元…もとい蛇口を捻ってお喋りに熱が入ってしまい何にも使われずに出しっぱなしだった水を止めた。
「ジェノスくんジェノスくん、私がお邪魔してる身だし洗い物くらいはやらせてよ」
「え? いや、しかし…」
「何か手持ち無沙汰でさー、落ち着かないから」
って設定でいこう。
ジェノスくんは何か悩むように視線を他にやっていたが、暫くすると「では…」とお願いしてくれた。
お願いされちゃった。
19歳の!!超絶イケメンに!!お願いされちゃった!!!
もーーーーーキミは自分がどれだけイケメンなのか自覚してーーー!!!こんなイケメンにお願いされて断れる♀はこの世界に居ないよーーーーーー!!!断る気とか更々無いけどもーーーーー!!!有難う御座います。
「で、今ヒーロー試験たる単語が出てきたけど、サイタマついに協会に入ったんだ?」
洗い物を再開しながらふと気になったことを尋ねた。
就活やめてそれからヒーローになりたいと言い出していたことは知ってるし、実際怪人を退治してる場面にも遭遇した。
趣味でヒーロー、という変わった形で活動していたみたいだけど、ついにプロになったってことなのかな。
「え、なにお前知ってたの?」
「いや今知ったんだけど」
「じゃなくて」
ヒーロー協会のこと。
苦い顔をしながらそう続けたサイタマが何を聞きたいのか理解しかねたが、私が何のことか分かってないのを察したのか「俺そのヒーロー協会ってやつがあるの知らなかったんだよな」と続けてくれたことにより事態を把握した。
つまりだ。
「つまりアンタはプロになる気がなくて趣味を語ってたのではなく、ヒーロー協会の存在を知らない故の趣味でって主張だった、と…?」
………ぷっ。
ぷぷっ、何だそれ、え、何だそれ!!
カッコわる!!!
自分なりのポリシーがあるからプロにならないのかと思ってたらそんな、知らなかったってオチとか、カッコわる!!!
「うるせー!!全部声に出てんぞ!!!」
いっけね!
とは思ったものの面白いものは面白くて笑いが止まらない。
洗い物どころでは無くなってしまったので一旦水を止めた。
「いやだってサイタマ、だってさぁ…!」
「先生の親しいご友人だと思って大人しくしていたがそれ以上先生のことを馬鹿にするのであれば追い出すぞ」
「えっどうしたのジェノスくんごめんね私が悪かったです」
ジェノスくんって会話の入り方が突然だよね、直前までウィンカー出さずに突然こっちに曲がってくる車みたいな突然さだよねびっくりした。
でもそうか、そうかジェノスくんはこんなサイタマでも尊敬してるしきっと大好きなんだろう。
いくら私がサイタマと親しいとはいえ、尊敬してる相手を笑われたら確かに気分は良くないのかもしれない。今後は気を付けよう、イケメンにあからさまに嫌われたらさすがにダメージでかい。
「何にせよC級とはいえプロ入りおめでとうサイタマ。初めは皆そんなもんからだろうしサイタマの強さならきっと上位までいけるって!」
「そらどーも」
「ちなみにサイタマがプロになったってことは、ジェノスくんもプロヒーローだったりするの?」
「ああ…はい、同じ日にヒーロー名簿に登録して先生の弟子にしてもらいました」
「? そっか、じゃあジェノスくんもおめでとうだね!」
ヒーロー名簿に登録して弟子になったという流れは正直よく分からなかったが、どことなく彼が嬉しそうな声を出していたからあまり気にしないでおいた。
「ちなみにヒイロ、ジェノスはS級だぞ」
「へーS級!すごいねジェノスくん!」
「すごいねジェノスくん!?!!?」
普通に流しかけたが同じ日の登録でS級ってとんでもねーぞどうなってんだヒーロー協会!?
「え、いいの?ジェノスくんはいいの?自分S級なのにC級の師匠っていいの?」
「先生が構わなければ俺も気にしません」
「気になる先生の回答は?」
「ヒーローの格付けなんて興味無いからな」
「なるほど」
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