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「ヒイロー、いい加減に起きろー」

「…んー…?」

何か起こされてるような。
目覚まし時計かな、えーとどこ置いたっけ、あー分かった分かった起きるからちょっと、あれ時計どこ置いたっけ…。

「なぁどさくさに紛れて俺の足撫でるのやめてくんね?」

んあ?
今度ははっきり聞き取れて重い瞼を上げた。
ら、見慣れない天井だったし、目覚まし時計を探してさ迷わせていた右腕は誰かの足を撫でていた。
あ、サイタマだ。
えーと、あれ、んー? んー…と……、ああ、はいはい思い出した、サイタマの家に泊まったんだ。
くだらない話で盛り上がってそのまま寝落ちたんだ、思い出した思い出した。
私が現状把握の為に起き上がらずに未だごろごろしてるのを、サイタマがめんどくさそうな目で見てくる。
分かった、分かった起きるよ起きる…。

「お前の好きなジェノスが朝ごはん作って待ってるぞ」

「おはようサイタマ今日も良い天気だね!」




「んん…おいしいよ…イケメンの手料理最高…ジェノスくんいい嫁になるね…おいしい…昨日の私に自慢したい…」

念願のジェノスくんの手料理朝ごはんにありつけて感動しかない。もう今日私死ぬかもしれない。でもジェノスくんかっこいいから生きる。

「お前ほんと幸せそうに食うのな」

「だってジェノスくんの手料理ってだけでどこぞの三ツ星レストランなんかじゃ歯が立たないレベルのおいしさだよ幸せに決まってるじゃん」

「まじか、三ツ星レストランよりすごかったのかジェノスの飯」

「先生、ヒイロさんの言葉を鵜呑みにしないでください」

そんな会話を繰り広げながら各々食べ続ける。
あ、この玉子焼き美味しいな。いやいや全部美味しいけど。ジェノスくんがやったってだけでこの白米も堪らなく美味しいけど。
というか白米だけでも目の前にジェノスくんが居るだけで何杯もいけるわ。
今日のオカズはジェノスくん〜って今のはアウトすぎだろちょっと申し訳ないわごめんジェノスくん。

「先生、本日のご予定は?」

そんな私の心の内も知らずにジェノスくんがサイタマに話し掛ける。
サイタマは「どうすっかなー」とか何とかぼやきながらお箸を進めていた。
んー、そういえば私もどうしよう。今日から三連休だ。
一先ず家に帰って、もう一泊くらいさせてもらえるかなぁ。

「そういやそろそろ買い出し行かないといけなかったっけかな」

「分かりました、では俺が」

「嫁かッ!!!」

しまったつい!!
いや今のは私悪くない、ジェノスくんの嫁力が悪い!
あっでも大声で叫んでしまったのは私が悪い!

「ごめんつい!!」

「いや気にしてねーけど…」

「俺は男ですよ」

「知ってるよもー!!!」

くそー!!サイタマが色々ずれてるのは知ってるけどジェノスくんもずれてたかー!!
うっうっ…可愛いなジェノスくん…イケメンな上真面目、だけどちょっとズレてて家事まで出来る…欠点を探せゲームかよ…私の負けでいいよ…。
そんなこんなで私が苦しんでいる間にジェノスくんは食べ終わったようで食器を重ねていた。
やっべ私も早く食べきろう。勿体無いけど。

「そういえばヒイロはどうすんだ? すぐ帰るか?」

「あ、そのことなんだけど一度帰ってからまた来ていい? 次の日もお休みだしどうせ暇だからもう一泊くらいぐだぐだしたい」

「おういいぞー、と言っても何もねーけどな」

「ジェノスくんが居るじゃん!」

「俺ですか?」と突然名前を挙げられたことに驚いたのか少し意外そうな声を出された。
いやいやジェノスくん、自分で自分のイケメン指数測るのは確かに難しいかもしれないけどキミ相当高いし私みたいなアラサーに向かいつつある女から見たら本当に目の保養でしかないんだよ〜!!許して〜同じ空間に居るってだけで疲れもぶっ飛ぶ癒し効果なんだよ〜!!
みたいなことを言ったら「はあ…」とよく分かってないような反応が返ってきた。それがまたなかなか可愛いよジェノスくん…。
だがそこでさすがサイタマ、此方に呆れた視線を投げてきている。とりあえず謝っておこう。

「そういえばお前の家ってどの辺なんだ? むなげやに居るくらいだからこの辺?」

「ちょっと外れるけどちゃんと居住区だよ、あのスーパー居たのは気まぐれな寄り道だから方向ちょっと違うかな」

「へー、まぁ一度帰ってまたここ来るってことはそこまで離れてもないんだな?」

「うん。あ、でも色々してくるからまた来るの夕方頃でいい?」

「じゃ、晩飯だけ用意するってことでいいんだな」

「助かりますー」

トントン拍子で今日の行動が決まった。
とりあえずアレだ、家に帰ってシャワー浴びたい。
そういえば買うだけ買ってまだ手に着けてないお菓子があった気がする、すぐに見付けられる場所にあったら持ってこよう。

「という事でご馳走さま!おいしかったよジェノスくん!」

「お口に合ったようなら良かったです」

仮に合わなかったとしても合わせるから何の問題もないんだけどね!
洗ってから出ようと思ったけど、すごく自然な流れで食器を受け取ってくれたからもうお任せすることにした。
さーてそれじゃあ善は急げだ、サクッと帰ってサクッと戻ってこよう。




バタン、と音を立ててヒイロが出ていった。
夕方頃にまた戻ってくるってことはそれまでフリーだし何するかなー…ああそうだ買い出し行こうと…思ったけどジェノスが行ってくれるんだっけ。
…となると本当に暇になっちまうんだよなぁ…。
とか考えていたら、台所で洗い物をしているジェノスから控えめな「先生」と呼び掛けてくる声が聞こえた。

「なに?」

「お昼は何食べましょうか」

「今朝飯食ったとこじゃん、もう昼の話かよ育ち盛りか!」





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