09
朝。
昨日に続きジェノスくんの手料理朝御飯を幸せを噛み締めながら頂いていると、ふとサイタマが「あ」とだけ声をあげた。
朝御飯に向けていた全意識の一部をサイタマに向ける。
「お前ジェノスと連絡先交換しとけば?」
なんと。
唐突、と言えばそうなんだけど、多分これはテレビで今まさにやってる番組の影響なのかなとすぐに察せた。
どうやら電話による詐欺の数が減らないとのことで、専門家達があーだこーだ言い合っている。
「怪人に会った時とかに電話で呼べるぞ?」
「相手がジェノスくんってだけで私は携帯の番号どころか好きな食べ物や休日の過ごし方、あとは好みの異性のタイプまで何でも教える姿勢ではあるんだけど、」
チラリとジェノスくんの方を見る。
昨晩サイタマが作っていた味噌汁の残りを飲んでいたジェノスくんは、器から口を離して「俺も構いませんよ」とだけ言うと携帯を取り出した。
「…えっいいの?私だよ?ジェノスくん大好きな私だよ?用もないのに掛けてくるかもとかいう疑いは無いの?しないけどさ」
「先生からのお話なのでヒイロさんは悪用しない人なんだろうとは思いますし」
「ジェノスくんほんとにサイタマ先生好きだよね」
「好きと言いますか…まぁ、はい」
イケメンスマイルだ〜〜〜!!!有難う御座います。
ジェノスくん基本的に表情筋が硬いというか、あんまり笑わない子って認識だから不意打ちにそんな微笑み見せられちゃ正直困る……いや困らない、全然困らない!
不意打ちイケメンスマイルにやられて此方もデレデレしながら携帯を出す。
そのまま流れるように互いに番号メアドと交換してしまった。
こんなイケメンの連絡先を、何の苦労もなくゲットしてしまった…。
これ逆にいざとなったら緊張して連絡出来ないんじゃないかな…登録名ジェノスくんじゃなくてもっと掛けやすい名前にしとこう…何がいいかな…近所のラーメン屋とかの名前にしとこうかな…いやそれはそれで電話しづらいな。
「何かあれば連絡してください、向かえそうなら向かいます」
「ジェノスくんなんか好きなお店とかある?」
「はい?」
おっと。
しかしなんか、アレだね、ジェノスくんの番号ゲットして正直喜んだけど、冷静に考えてみたらこの子S級ヒーローだったね…。S級呼べちゃうとか私何者だよってなっちゃうね…。
「S級デリバリーのシークレットナンバー頂いちゃった…やべぇ…携帯死守しないと…」
昨日ヒーロー名簿見るついでにジェノスくんのファンクラブサイトも見付けちゃったからなんか、ファンの人ごめんね私もこの子のファンだから許してほしい…。
というかファンクラブの人にこの番号出したらいくらで売れるんだ…売らないけど!!
「まージェノスある程度の怪人は倒せるだろうし遠慮せず使ってやれ」
「あんたジェノスくんを一体何だと」
「いえ、悪を排除したいのは本心なので気にしないでください」
ジェノスくんったら!!
でもあんまりぐだぐだ言ってても失礼だし、素直にありがとうとだけ言って携帯をしまった。
後で登録名変えとこう…。
「サイタマ先生の順位が最下位の388位から342位に上がってます」
サイタマが新聞を読んでいると、ジェノスくんがパソコンの画面を眺めながらふと告げてきた。
サイタマでも新聞なんて取るんだなぁと思ったらどうやらジェノスくんが取ってるらしいが、ジェノスくんパソコン持ってるなら大体の情報はそっちからで良さそうなのになぁと思ったのは言わないでおこう。
ちなみに私は今、部屋にある漫画を読ませてもらっている。
「…あれで上がったんだ、ふーん…」
「なになに、何したの?」
「いや、普通に…えーっと、悪い奴を捕まえただけだけど」
「あら、お手柄」
そうか、怪人倒すだけがヒーローの仕事じゃないもんね。
なぁんだサイタマもやっぱりちゃんとヒーローしてるんだなぁ感心感心。
私がそう感心してると、ジェノスくんは何かやったのかと尋ねたサイタマ。
「俺はまだ何も…」と未だにランキングが最下位な事を告げていたけど、大体「※ただしS級」みたいな注釈が入ってるよね…。
「でも一般人による投票で作られる週間人気ランキングだと6位になってます」
「「なんで!?」」
続いたジェノスくんの言葉に、思わずサイタマとハモった。
いや、だって、すごいね!?ジェノスくん何もしてないって言ったばかりなのにね?
顔かな?顔が良いからかな?気持ちはすごく分かるね?加えて良い子だしね?欠点なかなか見付からないしね??
だけどいくら驚いたとはいえ口に含んだお茶を噴き出すのやめてくれないかなサイタマ!!二段構えでビビったわ!!
その後書かれていたらしいコメントをジェノスくん自らが読み上げてくれたが、全て私が書いたんじゃないかというコメントばかりだった。
「19歳の若さでS級デビューした天才、期待できる」 わかる
「顔がカッコイイ」 わかる
「メディアへの露出を一切拒否するクールさが良い」 わかる
「サイボーグ王子」 わかる
「鉄の無表情の中に儚さを感じる」 わかる
「イケメンヒーロー五本指に入る」 わかる
わかるフルコンボ!!高得点クリア!!もう一回遊べるドン!!!
メディアへの露出がってのは詳しくないけど、クールさが良いのは分かる!!
っていうかサイボーグ王子っていいな、携帯の登録名それにしよっと。
「お前自分で言ってて恥ずかしくないのか?」
「こんなものは俺の写真を見た印象にすぎず、俺自身を評価したわけじゃないので何とも思いません」
「つまり見た目だけの評価じゃなかったら少しは嬉しい?」
ジェノスくんの良いところなら色々言えるよー、まずは優しいよね。
もう帰るって言ってる奴なんか「そうかそれじゃ」って放っておけばいいのに、元気が無いってだけで構ってくれるところとか、それから元気出るまで気を遣ってくれるところとか。いきなり押し掛けてきた初対面のよく分からない奴に、ご飯は要るのかと確認取ってくれたのも良い子だなぁって思ったよ。そうそう料理も上手だよね、美味しかった。食事の後も当たり前のように此方の食器を片付けてくれるのもすごいなぁって思ったし、あ、至る面で素直なところも可愛いよね。一応年上だから?あ、尊敬するサイタマの友達だからかな、何にせよ敬語で話してくれるのは礼儀が正しい子なんだろうなと感じたけど、私への対応にちょいちょい素っぽい雑さが出るのがまた可愛い。その雑さが私は好き。可愛いと言えばサイタマの慕いっぷりも可愛い、顔がかっこいいだけに対サイタマにだけは犬の耳と尻尾が見えるそのギャップが良い。あれ、もしかしてサイタマがジェノスくんに首輪とかあげちゃったらジェノスくん付けちゃうんじゃないの?…だよねジェノスくん素直だから付けちゃうよね…ええ…サイタマ…ええ………。
「サイタマの性癖にジェノスくんを付き合わせるのやめてくれる!?」
「ジェノスを褒めちぎってたと思ったら急によく分からねー濡れ衣で俺にキレるのをやめろよ!」
「ジェノスくん首輪渡されても付けちゃ駄目だからね君は人間なんだから!!しかも未成年!!」
真正面からジェノスくんの肩を掴んで力強く顔を見詰める。
当然に目が合ったが、「ああ……はい…」と返事が弱々しいのが気になる。
…まさか既に首輪付けられてる!?
即座にジェノスくんの首を確認したがそれっぽいものは見付からず少し安心した。が、もしかしたら別の所に似た意味を持つものが付けられてるのかもしれない。指か?腕か?もしかして服で隠れてるような所か?
問い質してやろうと再びジェノスくんの顔に視線を戻すと、今度は目が合わなかった。
伏し目がちにそっぽを向いている。
つられるように私もそっちに視線をやったけど壁があるだけで何も……何も?
……え、ジェノスくんには何か見えてたらどうしよ…。
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