サファイアの愛と心臓





無事に旅も終わり日本に帰ってきた後すぐ、承太郎は留学に行ってしまった。私は特に将来の夢も決まっていなかった為東京の四年制大学に進学した。とくに理由もなく文学部。チェスサークルにも入ってそれなりに充実した大学生活を送っているつもりだった。冬休み、ホリィさんに誘われて地元に戻った時、彼は何故かそこに現れた。

「なんで全然連絡してくれなかったのよ!どれだけ寂しかったと思ってるの!バカ!ほんと大っ嫌い!」
「……やれやれだぜ」

居間でテレビを見ていた彼は抱きついてきた私の頭を撫でながらそう言った。お昼を食べている時もおやつのみかんを食べながらテレビを見ている時も、夜ご飯の時だってずっとこたつで承太郎の横に引っ付いていた。疲れているだろうからお風呂は一人で入らせてあげたけれど、不貞腐れたように膝を抱えていればホリィさんが毛布を持ってきてくれた。どうして彼は彼女の世話焼きで明るい性格を受け継がなかったのだろうか。
彼の布団に潜り込むと懐かしい煙草の匂いに包まれる。一年ぶりのそれは高校生の時とちっとも変わっていない。

「こっち来て。…………もっとこっち。……もっと!」
「……せまい」
「貴方がいない間ずっと我慢してたんだから、もっと構いなさいよ!」

バタバタと暴れれば布団が動いて寒い空気に襲われる。我儘だとは分かっているが一年以上放ったらかしにされていた仕返しがしたい。どれだけ私が寂しかったのか彼は全然分かっていないのだ。

「これでいいか」

思い切り引き寄せられる。腕の中に閉じ込められた。久しぶりに感じる温もりがそこにある。胸に頬を寄せて耳をすませば、とく、とくと心地よい心音で満たされる。彼が生きている証だ。腕が背中に回り、お互いが溶けて混ざり合ってしまうのではないかと言うほど体を近づける。ここが自分の居場所だと、あるべき場所だと理解させられたような気分だった。

「キスもして。……だめ?」
「……やれやれ」

迎えられて唇が触れ合った。お風呂上がりにつけた化粧水のせいかいつもより柔らかい接吻のように感じられた。角度を変えながら繰り返し触れていれば、いつの間にかそれは深いものへと変わっていった。私たちの欲そのものを表現したような荒々しいキス。息を整える間もなく体勢が変わり承太郎に見下ろされるような形になった。彼のサファイアの瞳に見つめられれば少女漫画を読んだウブな中学生のように胸の高鳴りが抑えられなくなる。
その後は嵐のようだった。乗り気では無かったかのように思えた承太郎が獣のように激しく求めてくるので、私の体力はもう燃えカスすら残っていないほどになってしまった。少し動けば腰に響いて辛い。明日の雪掻きの手伝いは辞退せざるを得ないかもしれない。
極端なのは昔から変わっていない。無口かと思えば夜には饒舌だし、表情をあまり顔に出さないかと思えば帽子の下で楽しそうに微笑んでいるし。もう少し自分の感情に素直になってくれれば、私も困らないのだけれど。







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