金色のシュガー・スパイス







一月一日、元旦、一年が始まる日。それを僕達は海外で過ごすことになった。今頃両親は何週間も帰ってこない息子のことで大騒ぎしていると思うが、肉の芽を植え付けられていた時のことを思い出すと顔を合わせ辛い。単純にDIOのいいなりになるだけではなく、性格の悪の要素が引き出されてしまうのだから恐ろしい能力である。
話を戻そう。新年を迎えたその日、エジプト近くのホテルで僕らはちょっとしたパーティを開いていた。パーティと言っても仲間だけの飲み会のようなもので、酒を飲める歳ではない僕や鴇子さんも承太郎につられて数本の缶ビールを楽しんだ。そこまでは良かったのだが、慣れない酒を飲んだ鴇子さんがべろべろに酔っ払ってしまい、部屋まで運んだは良いもののなかなか寝てくれないのだ。

「じょーたろ〜!すきすきっ!」
「……うっとおしいッ!」

そう言って振り払われても懲りずに承太郎に擦り寄る鴇子さんは、顔を真っ赤にしながらでれでれと気の緩んだ表情をしている。いつも上品で凛としている彼女がこんな顔をするなんて初めてのことだ。承太郎ももう諦めて抵抗しなくなってしまった。鴇子さんはベッドの上で承太郎の足の間に座り込み、首に手を回して抱きついたり頬にキスしたりしている。さすがの承太郎も酔っ払いの女の子相手に手は出せないのだろう。

「鴇子さん、承太郎が嫌がっているだろう?」
「ん〜ん?典明くんが構ってくれるの〜?」

そう言って今度は僕の方に寄ってきた。いつもの爽やかな石鹸の香りに混じってお酒と汗の匂いがする。普段よりも何倍も大人に見える彼女の姿に鼓動が少しずつ早くなっていくのを感じた。

「ふふ、典明くんったらかわいいのね……かわいいかわいい」

意味不明なことを呟きながら僕の頭を撫でる。承太郎が呆れたようにこちらを見ていたので、助けを求めるように視線を向けたが、なんと鼻で笑われてしまった。
僕がベッドの上で座り、彼女が膝立ちしながら僕を抱きしめているので必然的にアレが当たる姿勢となってしまう。
高級ホテルの枕なんかとは比べ物にならないほどのその柔らかさに思わず手を伸ばしそうになるが自制する。鴇子さんは僕の理性と欲求の葛藤なんか知りもしないで僕に甘えている。

「承太郎!笑ってないで助けてくれ!」
「フッ……かわいいって……すまねえ、フフッ」

ついに普通に笑い始めた。帽子をかぶっていないので頬の緩んだ珍しい表情が丸見えだ。一発ぶん殴ってやりたいくらいにイラついたが、鴇子さんのせいでそれは叶わない。
こんな風に誰かに甘えられることはほとんど無い経験かもしれない。両親に撫でられたり可愛がられるような年ではないし、僕に寄ってくる女の子はいたが誰かと付き合ったこともなかった。だが、鴇子さんの普段から人を甘やかす性格は男だらけの旅で得られる唯一の癒しではあるけれど、こんなにされてはたまったもんじゃあない。もしも彼女が一人でバーにでも行ってこんな風に酔ったら……と考えるとゾッとする。一人でお酒を飲むのは禁止だな。

「何言ってるの!承太郎だってかわいいのに!」
「……馬鹿なこと言ってねえでさっさと寝ろ」
「アハハ、承太郎もかわいいって!良かったな承太郎〜!」

さっきの笑顔はどこへやら。鴇子さんと二人で承太郎を揶揄えば、眉をひそめて呆れたようにため息をついた。本音を言えば、この中で一番かわいいのは鴇子さんだ。だがそんなことを言えるはずもなく、気の抜けた表情でへらへら笑っている彼女を眺めることしかできなかった。うん、やはり彼女はかわいい。






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