透明な銀櫃




窓の外では雪が積もり始めている。静寂の中をしんしんと落ちていく白い結晶を眺めながら煙草に火をつけた。細い煙が立ち上がり空中でふわりと消える。その流れは突如乱され、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた後で、ふわりふわりとまた一本の煙の筋に戻った。

「ねぇ、私にも一本ちょうだい」

俺の膝の上に座ってこちらを見上げる女は机の上の箱に手を伸ばそうとした。彼女の身動ぎが煙を揺らしたのだ。手を優しく掴んでそれを阻止すれば、彼女は小さなハリセンボンのように頬を膨らませる。体勢を変えたが、向かい合うようなその姿勢では自然と体の柔らかい面が触れ合うようになってしまい、不本意ではあるが心拍が早くなっていくのを感じた。女は俺の胸元に顔を寄せる。
幼なじみの鴇子はよくこんなことをする。俺の気持ちなど一切気にせずに、体を寄せたり薄着になったりする。
中学の頃は、彼女の身体が触れる度に身に纏う薄い布の下を、さらにはその触り心地まで想像したものだ。

「承太郎の煙草の匂い大好き。安心するの」
「やめときな。肺を悪くするぜ」
「もう、自分は吸うのにそんなこと言うのね!」

俺より一回りも二回りも小さな身体で俺を抱きしめて鴇子は大きく息を吸った。右手で煙草を抑え、空いた左腕で彼女を抱き寄せる。そうすれば鈴を鳴らしたようなかわいらしい声で笑って俺に甘える。それがなんだか愛しくて、赤面しそうになるのを彼女を強く抱きしめることで隠した。大丈夫。きっと見られていないはずだ。

「ふふ、苦しいよ」

何度叱っても鴇子は懲りずに俺に甘える。昔と比べて女らしくなった体を俺に寄せて、柔らかい肌で俺に触れながら、猫なで声で俺の名前を呼ぶ。だがその無防備さが堪らない。俺の手で彼女をどうにでもできてしまうという状況に酷く興奮した。だが同じように他人にも接しているのではないかという恐ろしい妄想にも襲われる。愛と共に怒りが込み上げて、鴇子を乱暴に貪ってしまいたいと激情に駆られることもあった。
顔を上げた鴇子はにこにこと文字通りの音が出るのではないかという程に頬を緩めている。その憎たらしいほど愛おしい顔にふうっと煙を吹きかけた。

「そんなにこれが好きなら味わせてやるよ」
「……馬鹿ね」

鴇子は軽く咳をした後で照れるように笑った。俺の恋心に気づいていないフリをしている鴇子。彼女ならきっとこの行為の意味に気づいただろう。
彼女を自分のものにしてしまいたい。喉から手が出るほど欲しくて仕方がない。言葉にならないそんな欲を煙に乗せて吐き捨てた。







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