雪さえ溶かす温度






「アカギくん、こっちにいらっしゃい」

寝室で横になる彼を呼んだ。 十一月とはいえ、立冬の頃にもなると外もかなり冷え込む。それなのにアカギくんの服装は見てるだけで寒い。ついこの間まで半袖だった制服のシャツをやっと長袖にしただけで、コートはもちろんカーディガンのようなものですら羽織らないのだ。喧嘩や麻雀で稼いだお金があるんだからそれで買えばいいのに。

「なに?」

ストーブを付けている室内と、気温十度程度の屋外で、全く同じ服装をしているというのは如何なものか。

「うーん、ちょっと長すぎるかしらね?もうちょっと巻いてみてくれる?」

私の傍に座った彼の首元に紺色のマフラーを巻いてやる。不思議そうにそれを見下ろすアカギくんは、なんだか年相応で可愛らしい。

「あったかい」
「いつも上着を羽織らないから。もう寒くなってきたんだから、風邪ひいちゃうわよ?」
「……これ、紗雪さんが作ってくれたの」

幼少期から家事を叩き込まれたおかげで、マフラーも店で売り物になるくらいの完成度になっていた。工夫を凝らして若干青みの強い色の糸を混ぜたので、綺麗にグラデーションになっている。といっても年頃の男の子でも恥ずかしくないような、あまり目立たないものであるが。

「そうよ。本当はカーディガンを編もうと思ったんだけど、今からだと完成するのは結構先になっちゃうから」

口元までマフラーに埋めて私を見上げる。彼の少し伸びた白髪を耳にかけてやれば、今度は恥ずかしそうにフリンジの先っぽを指で弄んだ。

「これ外につけてってもいい?」
「外って……変な子ね。マフラーなんだから外につけていくに決まってるでしょう?」
「……ふふ」

よっぽど嬉しかったのだろう。化粧台の鏡にかけられた布取って、その向こうの自分を見つめる彼。彼らしくない、年相応の子供の笑顔だった。







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