アンリミテッドチャイルド






包帯だらけの自分の体を擦りながら、ぼうっと天井を見つめる。身体中が痛むので外を出歩くのは厳しい。そして長期休暇中の紗雪さんが俺を家から出してくれない。俺とはほぼ初対面のはずなのに、彼女は異様に心配性だ。
とにかく。そんな理由があって俺は暇を持て余していた。天井の染みを数えて、寝返りを打って、今度は畳の網目を数える。そうすると段々眠くなれるのだ。

「アカギくん、そろそろ腕の包帯変えるわね」

うとうとしていたところで寝室の襖が開かれた。水の入った桶や消毒液、軟膏。普段酷い怪我をした時でもこんな大仰な処置はしたことは無い。人間は案外丈夫だから、ほっといても治るのだ。

「んな大袈裟な」
「ちゃんとやらないと、傷口からバイ菌が入って病気になっちゃうわよ?意外と侮れないんだから」

シャツを脱いで背中を晒す。背中は軽い傷だけだったのでもうほとんど治っていたらしい。彼女はその傷跡を撫でた。ひんやりと冷たい手が心地よい。

「こんなにたくさん怪我をして…痛かったでしょう?」
「別に。このくらいなんともないよ」
「……あんまり、無茶しちゃだめよ」

こんな風に誰かに心配されたのはいつぶりだろうか。いや、初めてのことかもしれなかった。生まれつき親兄弟もおらず、頼れるような大人も、友人だっていなかった。いつも一人で生きてきた。まるで掃き溜めのようなバラック街で、人の優しさなんて知ることなく過ごしてきたのだ。

「しみるわよ。痛かったら言ってね」

それをこの人は、まるで俺を自分の弟か何かと勘違いしているのかと思うほどだ。出会って数時間の俺なんかを看病しても何も得は無いのに。

「お昼、お粥かおうどんにしようかなと思って。どっちがいい?」
「……うどんがいい。卵が乗ってるやつ」
「はーい」

紗雪さんは救急箱や桶を片付けると寝室の襖に手をかけた。その後ろ姿が、なんだか恋しくて。俺は気がつくと口を開いていた。

「紗雪さん」
「……?なあに?」
「まだお腹すいてないから、その……もう少しここにいて」

別に寂しいとか、そういうんじゃない。ただ暇だから話し相手が欲しいだけだ。何を勘違いしたのか。紗雪さんは俺の布団の傍に座ると突然俺の頭を撫で始めた。

「もっといっぱいわがまま言っていいのよ。まだ子供なんだから」

あんたもまだ高校生なんだから、ガキだろ。
だけど満更でもなかった。撫でられているうちに、だんだんと眠くなってきて………………。この人はいつも俺を子供扱いしてくる。見てろよ、そのうち、あんたを本気で惚れさせてみせる。






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