穏やかな隠しごと
「ねぇスコール、聞いてるの?」
「あ、ああ」
最近のスコールは明らかにおかしい。移動の電車の中で向かいに座る彼は、ぼうっと窓の外を見つめたり、机のコップを覗いたり、何を聞いても上の空だった。普段から口数が少ないが、ここまで挙動不審なのは見たことがない。
「あのねスコール、なにか悩み事があるなら言ってもいいのよ?むしろそうして欲しいわ」
「いや…なんでもない。気にするな」
何を聞いてもこの調子である。席から立って向かいにいる彼の隣に座ったその瞬間、彼はそっぽを向いてしまった。私が座ったのが嫌だったのか知らないけれど、なんだか放っておけない。
「私にできることなら何でもするわ。だからお願い……聞かせてくれる?」
「…わかった」
話を聞くと、どうやら戦闘でミスをして皆を怪我させてしまったのが原因らしい。スコールがちょっと暗い性格をしているのは知っているけれど、こんなことを気にするとは思っていなかった。
「皆も気にしていないと思うわ。そんなに気にする必要ないのに」
「あの時、あんた怪我しただろう」
「……私?」
数日前、左腕に傷を負ってしまった時のことを思い出した。確かにスコールのミスのせいかもしれないけれど、あれはスコールの苦手な遠距離攻撃系のモンスターのせいだから仕方の無いことだ。でもそれで何故私が出てくるのだろう。
そんなことを考えているとスコールが包帯が巻いてある私の腕に優しく触れた。
「痛くないか?」
「ええ。元からそんなに出血してなかったから」
「……」
スコールの表情が柔らかくなったように見えた。
好かれてるのかな。
そこまで心配されると、ドキッとしてしまう。
「な、なにか?」
いつまでも私の腕を優しく撫でる彼。私の心臓が煩く鳴っている。
「好きだ」
「…スコール?」
ようやく目が合った。私はスコールの言葉が信じられず、ポカンとしていた。
「イリアが好きだ。だから…嫌われたんじゃないかって心配だった」
「っふふ、スコールったら…!ふふっ、それぐらいで嫌いになるわけないじゃない!」
そのまま彼に抱きついた。スコールの心音も煩い。でもなんだかそれが心地よくて、愛されていると感じて、幸福感で溢れた。結局私達が離れたのは、電車が駅に到着してからのことだった。